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初めて見た付け上げ
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本日のお題:初めて見た付け上げ
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■初めて見た付け上げ
本日のお題は「初めて見た付け上げ」です。おそらくこのメルマガを読んでおられるような着物ファンでも「付け上げ」をご存じの方はほとんどおられないと思いますが、その世にも珍しい「付け上げ」を先日初めて見かけた、そんなお話です。
その前に、付け下げというものについてお話しさせていただきます。付け下げについては様々な定義があるようですので、あくまでも私が典型的な「付け下げ」と考えているものについて解説させていただきます(いや、ほんとにいろんな「付下」がありまして、ざっくりいうと訪問着よりも少し格の落ちるセミフォーマルの着物全て付下になってしまいそうな…)。
付け下げとは、訪問着よりも少し柄が少ないけれど絵羽模様になっているもの、とだけいうとシンプルすぎますでしょうか。私自身服飾文化について深く勉強しいたわけではございませんので年代まで詳しくお話しすることはできませんが、付下の歴史は訪問着と比べてまだ浅く、昭和の時代に訪問着から派生したものと考えて間違いないでしょう。その頃、訪問着は競うように華美になっていき、柄部分は多くなり、それに伴って仕立てにおける柄合わせにも緻密な技術が必要になったため、染め、仕立てどちらの段階でも非常にコストがかかるようになってしまいました。
そこで付け下げの登場です。訪問着のように細かい柄の染めがないこと、裾模様と袖に飛び柄のように柄を配置していて緻密な柄合わせが必要ないこと、また縫い目をまたいでの柄合わせも必要ないような柄付けにすることによって従来の訪問着からの大幅なコストダウンが実現し、大ヒットしました。某ナショナルチェーンでは社長が「うちの会社は付け下げで大きくさせてもらった」というぐらい売れたようです。
余談ではありますが、どんどん華美になっていた訪問着はその後、時代の流れか値崩れによるコストダウンの要求によるものか、次第に柄が少なくなって付け下げ化していき、現代では訪問着と付け下げの区別はほとんどなくなっているように思います。
さて、そして今回の「付け上げ」です。
以前に一度噂では聞いたことがあったんですよ。訪問着や留袖など絵羽ものは裾模様と左前袖、右後袖に柄がつけられるのがセオリーですが、現代は結婚式や披露宴などはテーブル席が多くなったため、柄の一番メインの裾模様部分がテーブルの下に隠れてしまいます。そのため、上半身に柄のメインを持ってきた「付け上げ」というものが作り出されました。
裾がほぼ無地で上半身に柄がある…?通常、訪問着や留袖など、絵羽物の柄の一番のメインは上前衽から身頃にかけての部分です。一体どんな感じ?
確かにテーブルの下に隠れるところにいくら技術の粋を凝らしても見えないから、じゃあ見えるところにメインを持っていこうという考え方はよくわかります。お座敷も正座をしていると裾模様はほとんど見えませんが、テーブル席は完全に隠れてしまいますからね。ただ、理解はできますが全体的な柄のバランスを考えた場合、私がセオリー通りの柄付けを見慣れているため、上半身に柄のメインがあるのを想像するとかなり違和感があるのは否めませんでした。
その違和感は多くの方も感じたのかわかりませんが、残念ながらその「付け上げ」は定着することなく、私の目にも触れることなく消えてい…ったかに思えたんですが、先日の仕入れの会で出てきたんですよ。その「付け上げ」が!
その着物を見た時、裾模様はぼかしのみ、上半身に辻が花模様で、明らかに従来の訪問着や付け下げの柄付けのセオリーとは違うものですごく違和感があったのですが「はっ!これが噂に聞く付け上げか!」とわかりました。裾部分は全くの無地で上半身だけに柄があるものと思っていたのですがそうではなく裾には斜めにぼかしのみ、シンプルに入っておりました。
ぼかしのみでも上前に入っていれば、全くの無地よりも柄のバランスとしての違和感が少し和らぐかもしれませんね。もちろんぼかしは無地よりも染める手間が少々手間がかかりますが、仕立ての際の柄合わせはそれほど難易度は高くありません。違和感さえなければなかなかのアイデア商品であったことは確かです。しかしそのパッと見た時の印象が大切で、違和感があるのはかなりのネックだったりもするのですが・・・。
一瞬、ネタとして仕入れてみようかと思いましたが、同じくネタとして購入してくださるお客様限定になってしまいますので断念。普通に購入しようとする方には「セオリー通りの染めじゃなくて今ではほぼ作られなくなった付け上げというちょっと変わった柄の描き方をしてるからそれを理解した上で購入してください」なんて言ったら売れませんよね笑。
この業界も新しい商品を出そうといろいろがんばっているんですが、残念ながら定着せずに消えて行ってるものも多いんです笑。
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