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保管中の着物の天敵は虫ではなく湿気、そしてカビ
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本日のお題:保管中の着物の天敵は虫ではなく湿気、そしてカビ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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■保管中の着物の天敵は虫ではなく湿気、そしてカビ
今日のお題は「保管中の着物の天敵は虫ではなく湿気、そしてカビ」です。弊店の古物商の免許の都合上、インターネット経由では着物の買取は行っておりませんが、実店舗ではよく着物が持ち込まれて買取をすることもあります。お祖母様やお母様が昔に着ていたものが持ち込まれることが多く、当然のことながら比較的古いものや状態の悪いものも多く買い取れないことが多々あります。
一番多いのはカビからくるシミです。最近の住宅はサッシなどが発達して密閉性が高いため、冬場などはどうしても家の中に湿気がこもりがちです。特にこれからの寒い季節に朝起きたらサッシの下の方が結露でグッチョリと濡れていたという経験は誰もがあると思いますが、これがサッシが濡れているだけならいいのですが、その湿気は部屋中に充満してタンスの中にも入り込んでいるということにも注意しなければなりません。
昔は春と秋など比較的湿気の少ない季節に着物を広げて1日虫干しをしたものですが、現代人は仕事だなんだと忙しく、1日虫干しをのんびりとやっている時間がありません。しかしながら虫干しをサボって湿度が高い状態で保管すると結果的に湿気がカビを呼び、そのカビが着物の生地の糸の内部にまで入り込んで通常の方法では取れない黄変シミになってしまいます。ですので呉服屋としてはできるだけ虫干しをして欲しいのですが、時間的に余裕がないというのであればタンスの引き出しを開けてタンスの中にこもった湿気を外に出す、もう少し頑張れそうなら着物をタンスから出して(広げずに)床に並べて乾燥させる(ヤケるので直射日光には当てないでください)、などをするだけで随分違います。
もちろんもっと余裕があれば着物を広げて干せば一番いいのですが、一度着物を広げてしまうとまた畳むのに手間がかかるので、無理に頑張って次回が億劫になるよりも、ご自身にあった「ここまでならできる」という方法でゆるーく定期的に実施していただけると大切な着物をうまく保管できると思います。もう私はそんなの無理!という方はタンス用の湿気取りを入れておくだけでもいいですよ。タンスの中に入れっぱなしにするのではなく、頻繁に着て出かけるのが1番の虫干しなんですけどね。
また、保管する場所も重要です。一般的にカジュアルな着物はできるだけタンスの下段側、フォーマルになるに従って上段の方に入れるのがいいとされています。着物民の方々はカジュアルな着物は着る機会が多いため引き出しを開け閉めすることが比較的多くなり、逆にフォーマルな着物はどうしても着る機会が限られてしまうため、引き出しを開けることは数年に1度ということも。
湿気は空気よりも重く、下に溜まる性質がありますので下の方にあるカジュアルな着物を引き出しから取り出すときにタンスの中の湿気が一緒に外に排出されるので、わずかなことではありますが自然の対流を利用して少しでもタンスの中の湿気を少なくすることができます。逆にフォーマルものを下の方にいれると滅多に開けない下段あたりは湿気がたまり、カビの温床となってしまいます。とは言っても上段と下段の湿気の差はごくわずかだと思いますので気休めに近い感もありますが、そうして着物の保管方法一つにしても考えながら着物と付き合っていくのは私にとっては意外と楽しい時間ではないでしょうか。
次に防虫剤について。
多くの方が誤解しておられるようですが、絹の着物の保管には防虫剤はほとんど必要ありません。弊店でも1万点近い商品在庫がございますが正絹の着物の保管場所には一切防虫剤入れておりません。逆に変な防虫剤を入れてしまうと着物のトラブルの元となることがあり、特にパラジクロロベンゼン系の防虫剤は金箔を変色させることで知られています。金は非常に安定した物質ですので滅多なことでは変色することはないですが、着物を大切にするあまり用量や注意書きを守らず「多けりゃ大丈夫でしょ」とばかりに大量に使用することでいわば防虫剤漬けにした結果、金箔が黒く変色することがあるのでご注意ください。
また、ほとんどの防虫剤には「他の防虫剤と混ぜないでください」と注意書きが記載されていると思います。防虫剤には大きく分けてピレスロイド系、樟脳系、パラジクロロベンゼン系、ナフタリン系など4種類があり、これらの組み合わせによっては防虫剤が液状になり、着物にシミを作ることがございます。特にナフタリン系と樟脳系の組み合わせ、パラジクロロベンゼン系と樟脳系の組み合わせ、パラジクロロベンゼン系とナフタリン系の組み合わせは相性が悪いので、一緒に入れないことはもちろん、防虫剤を変える時も以前に使っていたものがなくなってもタンスの中に気体で残っている場合があるのでできるだけ防虫剤は変更しないようにした方がいいと思います。
先ほども書きましたが、経験上絹の着物はほとんど虫の被害にあいません(ただし少数ながら絹を食べる虫も存在するそうです)。被害に遭うのはダントツでウールでして、ウールの着物は防虫剤を入れ忘れるとあっという間に食われてしまいます。私が見た驚きの例では絹の子供の着物の衿先に着やすいようにウールの腰紐を縫い付けていましたが、絹は一切被害はないのにウールの腰紐部分だけはボロボロになっていたということもありました。
ですので素材を見極めた上でウールなどカジュアルな着物はタンスの一番下の方に、できれば絹の着物とは引き出しを分けてウールはウールだけの段に適量の防虫剤と一緒に入れておく、絹の着物は頻繁に着るカジュアルなものは防虫剤を入れずに下から、上に行くに従って滅多に着ないフォーマルなものにしていくのがおすすめです。
最後に、これは真偽のほどは定かではありませんが、石油の燃焼ガスが着物を痛めるということを聞いたことがあります。確かに稀に、着物の畳んでいる状態で表面に出ている部分だけがまるで日光に長時間当たったかのように変色しているものを目にすることがあります。畳んでいる状態といっても表面は着物が重ねられているため変色はなく、袖山、肩山、両脇の縦の縫い目部分など「着物が重ねられている状態で表面に出ている部分」が変色しています。この説はある着物の文献で読んだことで、なぜそのようになるのかまでは検証されておらず、あくまでも「こう言った話もある」というレベルの話ですのでそれほど神経質になる必要もないかもしれませんが、よろしければ頭の隅にでも留めおいてくださいね。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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