呉服屋をやめたくなったお話 その2
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本日のお題:呉服屋をやめたくなったお話 その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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先日の日曜日は仕入れの競り市の日だったのですが、今回は帯を中心に仕入れてきました。今まではいろんな事情で長着が中心だったのですが、これからはどんどん帯も入荷いたしますので是非ご覧いただければ、と思っております。裄長の長着も入れてきてますので背の高い方も期待してお待ちくださいませ。
2月のプレゼントは黒地に椿柄の厚底草履
2月のプレゼントが始まりました。今月は黒地に椿柄の厚底草履です。紬や小紋などに合わせていただけるカジュアル用で仕入れるの結構高かったです笑。今回はかなり評判が良いようですでに多くの方にご応募いただいております。まだ会員登録されていない方は是非会員登録の上ご応募くださいませ。
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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。
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■呉服屋をやめたくなったお話 その2
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先週の最後に「呉服店の主なお客様はライトなユーザー」と書きました。一般的な商売ではマニアなユーザーがよりいいもの、より珍しいものを求めるため、単価が高く利益も多く取れるというのが常道なんですが着物の場合は少し違います。もちろんマニアなユーザーはよりいいもの、より珍しいものを求めるのですが、ある統計では着物を日常に着る方(マニア)の人口に占める比率は0.01%(注1)などと言われますので、あまりに少なすぎてそこに重きを置いてリアル店舗で商売を成り立たせるのは少し難しいのです(注2)。
注1:また聞きのように聞いた数字で統計の出所やどのように統計を取ったのか不明のため、いまいち信用できない数字であまり信憑性がないかもしれませんが、感覚的にはなんとなくしっくりくる数字ではあります。
注2:これはあくまでもリアル店舗の話です。リアル店舗は従業員を多く抱え、固定費も比較的多くかかり商圏も限られます。商圏人口が50万人でも対象の0.01%のお客様は50人しかおられませんのでそのお客様を総取りできたとしても商売としては成り立たない…とまでは言わないけれど店主一人や夫婦だけでやっている店でようやく成り立つ程度かも。一方、ネットの呉服店は全国が商圏ですので、日本の総人口が1億2000万人のうち0.01%もあれば1万2000人ものお客様を相手にすることができるので十分成り立ちますね。
ですので何かの時には着物を着るというようなライトユーザーが主な顧客になるのは当然の成り行きでしょう。そろそろ成人式を迎えるから振袖、近々娘が結婚するから留袖、お宮参り、七五三があるから訪問着。当時はまだそれほどレンタルも普及していなかった時代ですしレンタル自体あまりいい印象がなかったので基本は自分で購入して用意するものという意識も高かったように思います。呉服店としてはマニアなユーザーをがっちり掴むために希少織物などを高単価で販売したいのは山々ですが、主なお客様の層がライトユーザーですのでどうしてもフォーマル中心になってしまいます。
先週書いたように、呉服店ももう少しディープなユーザーを増やしたいと、着物を着て京都に行きましょう、着物パーティをやります!というような企画で着物に親しんでもらおう、着物の良さを知ってもらおうとしていました。お客様にも「着物着て京都行きましょうよ!」なんて勧めると、お客様自身も着物を着て京都を楽しんでいる姿を想像して購入していただくことが多かったように思います。
ただね、そういうお客様って結局あまり着ないんですよ。企画していざ行きましょうよ!と誘っても腰が重い。そりゃほとんど着たことのない着物を着ていきなり1日出かけるというのは少しハードルが高いですよね。ましてや若い子じゃなくてそこそこ年齢を重ねた方ですから「着物は綺麗に完璧に着ないと恥かしい」といった呪い(あえてきつい言葉で呪いと書きます)がかかっています。もちろん着付けは店舗スタッフが朝から総出で無料で行うのですが、それでも腰が重いのが現実です。
というわけで、着物を購入しても着用されずしつけ糸がついたままタンスの中に眠ったままになっていることが非常に多いのです。「タンスの中に眠っている着物 総額」で検索してみたところ、8兆円から40兆円まで様々な説はありますがとにかく大量の着物がタンスの中に眠っていると言われております。
で、そろそろ私の「呉服屋をやめたくなったお話」に入っていきます。
先週から書いているように、お客様といろいろお話をしているうちにパイプが太くなり、展示会等に来て頂いて少しずつ着物を買っていただけるようになります。「そやなぁ、まあそのうち着ることもあるやろ。娘もいるしな。あんたがそういうんやったら買っとくわ」みたいな感じで購入して頂いた方は多かったように思います。
私は押し売りみたいなのは絶対したくなかったので、お客様の周りに他の社員がたくさん寄ってきたら「ちょっとあんまり囲んだらあかん、どこかに行って」みたいなことを言ったり、余計なプレッシャーをかけないようにいろいろ気を使ってました。それでも購入してくださったお客様にはほんと感謝感謝です。
で、ある時昔から可愛がっていただいていたお客様に呼ばれたんですよ。
もうかなり前のことで忘れてしまったことも多いですが、多分年齢は60歳後半ぐらいだったように思います。別に何かを買っていただくためとかそんなのではなく、近くに寄ったついでに「何か用事ないですか?」と気軽に立ち寄れるような、そんなお客様でした。その方から「前に買った帯、1回も締めてないのにシミだらけになってる」と連絡をいただいたんです。
1回も締めていないのにシミだらけになってる?そんなはずはないけどなぁ…と思いながらそのお客様のご自宅にお伺いすると出てきたのは全体的にまだらに変色した白地のカジュアル用の染めの袋帯。パッと見てすぐにわかりました。長い間タンスの中にしまったままにした結果、湿気からカビが発生したのです。
最近の住宅は密閉性が高く、この時期ですと結露で窓の下に水が溜まるぐらいの湿気が家の中にこもります。当然タンスの中にも湿気が入り込み、そこからカビが発生して変色することは着物あるあるなのです。虫については気をつけている方は多いのですが、何度もこのメルマガで書いておりますように絹の生地を虫が食べることはあまりなく、気をつけるべきは湿気なのです。
頻繁に着用するのであれば、それが自然の虫干しとなってカビの発生を防げるのですが、着用する機会もなくタンスの中で何年も湿気にさらされていると高い確率でカビが発生します。店頭に着物の買い取りを持ち込まれるお客様も多いのですが、カビが発生してしまっていて値段のつかない着物が非常に多いです。
そのお客様に購入していただいたのは決して安い帯ではありませんでした。たしか30万円程度はしたはず。大金ですよ。でもその帯が1回も使われることなくカビだらけになってしまったのは私にとって物凄い衝撃でした。
販売方法について何かと話題になる呉服店ではありますが、私の知っている限りではありますが、ほとんどの従業員は着物が好きで、その着物の良さをわかってもらいたい、という思いが根底にあります。以前に倒産した大手チェーン店Tの営業をしていた方とも着物談義で盛り上がり「着物が好きなんだよね」と言ってました。もちろん私も着物が好きだったし、着物を通して豊かな生活を送ってほしい、と思ってました。でも目の前で見せられたのは、本当に使いやすく、その方に似合うと思ってお勧めし、お客様も納得の上で安くない金額で購入していただいたのに全く使用されることなくカビだらけになった帯。
先週に少し書きましたが、私がやっていた呉服店の営業は主に展示会への勧誘でした。展示会の勧誘と言えば聞こえはいいかもしれませんが、展示会にご来場いただくともらえるお土産の予約を勧めるという仕事です。毎月開催される展示会の3週間ほど前から勧誘期間に入るのでいわば年がら年中お土産のご予約をとりに走り回ってるという状況です。
「こんなん呉服屋ちゃうやん、お土産屋さんやん」と思っていたときのことです。お土産物屋さんになってお客様に展示会に来ていただいて、お勧めして購入していただいたのに、全く無駄なことをしているように感じたのでした。お客さんにとってはもちろん、自分の人生も。
来週に続く
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
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