希少織物の買い方
====================
本日のお題:希少織物の買い方
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。
上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください(noteの更新はメルマガ配信より1-2日程度遅れます)。
ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。
TwitterID:@gofukunokikuya
きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。
====================
いつもメルマガのご購読、ありがとうございます。
本日は毎月28日の仕入れの日の定休日となっております。受注受付や商品発送等は明日29日になりますのでご了承くださいますようお願いいたします。
そして…台風ですね。私、6年前まで台風舐めてましたけど、あの大阪に上陸した台風で近くの屋根は飛ぶわ、信号はあさっての方向を向いてるわ、翌日も交通は大混乱、私の家は停電で水も出なくなり、エライコッチャなことになってしまいました。水なんて電気関係ない、と思ってましたがマンションはポンプで上階まで汲み上げているので水が出なくなるんですよね。
というわけで水を浴槽にためてモバイルバッテリー、そして簡単に食べられる食料や水などは確保して台風に備えてくださいね。
====================
【8月のプレゼント当選者発表】
今回のプレゼントも多数のご応募ありがとうございました。今回見事当選されたラッキーな方は
東京都文京区 T・M様(姓・名の順)
でした!本日は仕入れのため休業致しておりますので賞品は明日発送いたします。到着まで今しばらくの間お待ちくださいますようお願いいたします。
====================
■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。
====================
■希少織物の買い方
今週のお題は「希少織物の買い方」です。着物の世界は希少な織物が多々あるのはこのメルマガの読者の方でしたらご存知ですよね。特に沖縄は元々作物が育ちにくいため税金を織物で納めることが多く、そのため特に織物が発達したと言われております。宮古島には背丈がその高さを超えると課税される「人頭税石」というものが残っており、薩摩藩の支配下にあった琉球王朝が厳しい税を課したものとされています(注)。役人によって監視されながらひたすら織物を織ったという記録も残っており、当時の庶民の生活の困窮ぶりが伝えられております。
注:Wikipediaによると、民俗学者の柳田國男氏が著書に書いたことから全国に広まったのですが、人頭税石を基準に課税されたという事実を裏付ける証拠がなく、現代では人頭税自体否定的な見方をされているようです。
当時の庶民は「いいものを納めないと殺される」という想いで必死にいいものを作ったのか、または「いいものを作って喜んでもらいたい」という想いだったのか私にはわかりませんが、何れにしても沖縄はその歴史的な背景から希少な織物が発達したのは確かです。全くの想像ですが火山島の八丈島で黄八丈が発達したのも同様の理由ではないでしょうか。
それはさておき、着物ファンでしたら希少織物はネット等で見ることは多いと思いますが、新品の商品を実際に購入しようと思ったらどうします?いま試しに希少織物オブ希少織物の代表格、宮古上布を楽天市場で検索してみましたところ新品の反物は10数点ヒットしましたがほとんど流通していないのは間違い無いですね。これを実際に購入するならどうしたらいいと思いますか?
もちろんインターネットでボタンをポチッと押せば手に入るとは思いますが、希少織物は数十万円程度から高価なものになりますと数百万円というものも珍しくありませんので実物を見ずに購入すると言うのも少々勇気が要ります。ネットで見つけた反物を扱っているのが店頭販売もやっている呉服店ならばその店に足を運べばいいのですが、実際に足を運ぶとなると少々億劫なもの確かです。
先ほど、店頭販売という言葉が出ましたが、実際のところ希少織物を在庫として持っている店は日本全国探してもほとんどないというのが実情でしょう。私の30年来の友人で紬など織物が得意な神奈川の某呉服店ならもしかしたら持っているかな、とも思いますがこんな変態的(めちゃくちゃ褒め言葉です)な品揃えをしている店はかなりの少数派です。
このメルマガの読者の方々はきっと普段から着物を着るかなりのティープなファンだと思いますが、残念ながらそういった方は少なくて、メインのターゲットは入卒業式や結婚披露宴、結婚式など「何かちょっとしたフォーマルな時」に着物をお召しになる方なのです。ディープなファンはお客様になっていただければフォーマルな時に着る方よりも底なし沼にはまるように次々と購入していただくこともあるのですが、なにぶん絶対数が少なくて品揃えはどうしてもフォーマル中心にせざるを得ません。
また、希少織物が欲しいと思って頑張ってお金を貯めて購入する場合2反や3反程度の中から選ぶのではなく多くの中から選びたいですよね。でもそんな珍しい織物を10反も20反も持っている店は日本全国探してもおそらくないのでは…と思うのです。だって、例えば仕入れ値1反50万円だったとしたらその反物1種類だけで500万円-1000万円になってしまいます。毎月のように1反ずつ売れていくのであればそれだけの投資をして在庫としてお金を寝かせていてもいいのですが、呉服屋やっていても10年に1回売れるか売れないかというような希少織物でそこまでの在庫を持つことはなかなか難しいです。ちなみに呉服屋歴30年以上の私は宮古上布を販売したことはありません笑。
馴染みの呉服店がある場合はお願いすればお取り寄せしてもらうことは可能でしょう。呉服店側も顧客から依頼されたとしてもそのためだけに仕入れると言うことはなく、ほとんどの場合は取引の問屋にお願いして集めてもらって借りるということになりますが、正直販売している側からすると問屋の担当者にあちこち手配してもらってこちらに送ってもらうという手間をかけさせてしまっているので、出来れば「売れませんでした」というのは避けたいところ。とはいえかなり高価な希少織物を無理に買っていただくわけにも行きません。特に長年欲しいと思っていて「こういう色柄のものが欲しい」というイメージが出来上がってる方はそのイメージにあったものと出会える確率の方がずっと低く、お取り寄せをしても決まることは少ないです。
その辺りは呉服店の方もある程度心得ておりまして、私なんて気遣いまくりのチキンなので取引先に「ごめんなぁ、ちょっと注文が入ったんやわ、決まる確率は高くないと思うけど手配してくれへん?」なんてあまり期待させないようにお願いしつつ、何回か同じような注文で取引先に動いてもらって、決まらなかった場合は売れ筋の訪問着や留袖などをお付き合いで仕入れるといったことが多々ありました。まあこの辺はくまでも呉服店と問屋との付き合いのお話ですし、呉服店がその取引先とどれだけ取引しているかにもよりますのでお客様は特に意識する必要はないですよ。取り寄せてもらって気に入ったら購入してくだされば喜びますが、気を使って無理に購入する必要はありません。
私の一番のお勧めの方法は、ちょっとメジャーな希少織物でしっかりした組合があるものでしたらたまに東京や大阪など大都市で展示会をすることがあるのでそういったものを狙ってみるのはいかがでしょうか。結城紬は特に組合がしっかりしていて後進の育成と技術の継承に力を入れていて、販売も頑張っておられるようなイメージがあります(販売できなかったら技術の継承なんてできませんので…)。私も何度か結城紬の組合主催の展示会場に行ったことがありますが、めったにみられないような逸品から手の届きやすいものまで幅広く、広い会場に結城紬三昧で、呉服店がちょっと借りてきて見ていただく、なんてのとは全く違う規模でとても見応えがあったのを覚えています。狙っている織物がありましたら組合のサイトの展示会情報等をチェックしながらその間にお金を貯めて、近くで展示会があったら札束握りしめて行くのもいいかもしれません(軽く言うんじゃない笑)。
旅行がてら現地まで買いに行くのもいいかもしれませんが、その織物によっては一般ユーザーには売らない場合もありますので、必ず前もって問い合わせてから行くことをお勧めいたします。もし売ってもらえるのでしたら現地に行ってその織物ができた背景を勉強したり、織子さんや染め職人さんたちをお話しさせてもらったり、実際に織ってるところを見学させてもらってから購入するのも着物ファンからするとプライスレスな経験ですよね。
念のために書きますが、現地に行ったからと言って安く買える訳ではなく、私の感覚ではあくまでも「適正価格」です。下手に安く売ってしまうと今までの取引先に失礼だし、このネット社会で安く販売したと言う話が広がって値崩れの発端となるのも避けたいところなのかもしれません。
中には現地人価格と旅人価格がある場合もありますが、それも含めて適正価格と考えていただければ、と思います。でもこのメルマガを読んでいる良識のある着物ファンなら、きっと自分の払った適正価格が現地の職人さんに直接お金が渡るのであればOKという方がほとんどでしょう。あ、でも先ほど紹介したように呉服店が問屋から借りて、その問屋も産地問屋から借りて、なんてのを繰り返して上流から下流まで全部借りて見せてもらっている場合よりはずっと安いかもしれません。
希少織物は着物ファンにとって憧れの存在ですよね。そしてそのどれもが簡単に買える値段ではありませんが、もし余裕がありましたら組合主催の展示会や現地に足を運ぶなど、できるだけ産地にお金が落ちる形での購入を検討していただければ、と思います。
====================
発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。
====================