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作家さんがユーザーに直販することについてその1

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本日のお題:作家さんがユーザーに直販することについてその1

呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■作家さんがユーザーに直販することについてその1

本日のお題は「メーカーさんがユーザーに直販することについて」です。このタイトルだけを見ると「作家さんがユーザーに直接販売するなんてけしからん」的な話を想像するかと思うんですが、私はそんなこと一切思ってないんですよ。むしろこのインターネット全盛の時代、もう問屋さんも小売店もすっ飛ばしてユーザーに直接販売していくのが当然の流れでしょう。

作家さんとお話しさせていただくと、決まって「最近問屋さんは商品を貸してくればかりで全然仕入れてくれない」とおっしゃいます。着物が売れなくなったこの時代、問屋さんも在庫リスクを負いたくないのは理解できます。メーカー(作家さん)から問屋さんに販売する価格なので一般の価格よりは安いのですが、1点数十万の作品だって珍しくありません。ましてや問屋さんだと作家さんの作品を扱うにあたり、1点だけではなく数十点仕入れる必要があるためかなりの額になりますので仕入れるにはかなり勇気のいる額になってしまいます。

昔の呉服問屋さんが元気だった時代、職人さんの中からダイヤの原石を見つけて目利きのできる問屋さんの仕入れ担当者が「全部買い取ってやるからどんどん作りなさい」と作らせて作品のアドバイスや意見を出し、偉大な作家さんにまで育て上げたと言われておりますが、今は問屋さんにそこまでの要求は酷というものですよね。

ところで、20年‐30年ほど前の展示会全盛の時代、作家さんの一般的な販売方法は展示会の一角での実演販売で、商品のほとんどは消化仕入れ(注)でした。

注: 「消化仕入れ」とは売れた商品のみを仕入れる方法で、小売店主催の展示会等に作家さんが出品する際、自分の商品を持っていって実演販売し、会場で売れた商品のみを仕入れるというものです。小売店主催の展示会で作家さんが来場して売れた分を消化仕入れする場合も、一見メーカーから小売店に直接の消化仕入れのように見えますが、間に問屋さんが入って問屋さん、小売店双方消化仕入れとなります。以後は明確に区別するために、買い取って仕入れることを「買い取り仕入れ」、商品を借りて売れた分だけ仕入れることを「消化仕入れ」とします。

補足ですが、問屋さんが作家さんの作品を扱うにあたり、100%消化仕入れとなると作家さんもあまり良い気がしないので多少の仕入れをすることはあります。

この方法は作家さん側と問屋さん・小売店側、双方にとって一定のメリットがありました。作家さんの作品は比較的高額なため、何点か仕入れたら100万円オーバーとなりますのでほとんどの呉服店は扱うことができませんし、扱ってもらえなければ作家さんも販路を広げることができません。また、親しい付き合いの作家さんから仕入れると「売れなかったから半額セール」なんて値崩れの原因となる値引き販売もできませんので非常にリスクの高い商品になり、一般的な小売店ではまず敬遠されます。

その点売れた作品のみを仕入れる消化仕入れなら、小資本の小売店でも扱うことができたのです。しかしその一方で、リスクを負うことなく作家さんの商品を扱えるというぬるま湯に浸かることにもなり、作家さんとしてはなかなか買い取り仕入れしてもらえないジレンマも抱えることになるわけですが。

一般的に作家さんは直接小売店とではなく問屋さんと取引しており、問屋さんは小売店に対して展示会の企画を持ち込みます。そしてその企画で「この作家さんのコーナーを作って販売しましょう」などと提案するのです(なので、先ほど書いたように展示会に作家さんが来られた時の消化仕入れでも間に問屋が入ることになります)。展示会全盛の当時、作家さんはただモノづくりをするだけではなく、展示会で接客して自分の作品を売り込んで販売する、という役目も求められるようになっていました。

本来販売は小売店の仕事なのに、作家さんにきてもらって販売してもらうなど、完全に小売店の怠慢だと思います。しかしながら、お客様に展示会の勧誘をする時に「こんなすごい作家さんが来られるんですよ!」と案内をすることによって展示会の箔をつけるという面もあり、展示会の企画の柱にもなっていたのです。「友禅作家○○先生来場!」とチラシに書くとなんとなく締まりますし、一般の着物よりも高額になる作家ものがよく売れると展示会全体の売り上げも上がります。展示会に来られた作家さんの作品がどれだけ売れるかに展示会の成功がかかっていたとも言えるかもしれません。

展示会が全盛の頃の作家さんのスケジュールは、毎週水曜日に値札を付け直し(小売店ごとに掛け率が違うため1回ごとに値札を付け替える必要があります)木曜に展示会場に向けて作品を出荷、金曜に移動して土日は自ら展示会で実演販売、日曜日の夕方には工房に向けて商品を送り返し、水曜日になるとまた値札をつけて・・・という繰り返し。もちろん値札付けや出荷は作家さん以外の社員の仕事ではありますが、作品作り以外に様々なことを要求されて大変だったと思います。

そんな状態でしたので作家さんは作品を作るセンスや能力だけではダメ、展示会での接客能力も要求されるようになっていきました。問屋さんが展示会の企画を持ってくる時「この作家さん展示会に入ってもらったらどうですか?よく喋ってよく売りますよ」みたいな言い方で企画提案してくるんですよ。作品の説明もそこそこに、その作家さんはどれだけ喋ってどれだけ売り込むか、というところをアピールしてくるのですから、もうこうなると本末転倒ですね。そして小売店は顧客に「今度こんな作家さんが来られるから是非きてくださいよ」と集客し、実際に販売を担うのは作家さん、というような役割分担が自然にできあがります。 

これが昭和後期のバブル時代から平成にかけての作家さんの立ち位置でした。しかし平成も後期になりますと生活様式の変化に伴って着物市場は急速に縮小し、思うように集客できなくなってきました。会場を借りて展示会を行うには会場代、チラシ代、お土産代、会期中に一気に販売するために販売員(着物アドバイザー)を雇う日当、会場ディスプレイ代などかなりの経費がかかるため今までの展示会の形式では採算の取れない店が多くなり、次第に展示会というものが少なくなってきました。

もちろん本物の作家さんは残りますよ。おそらく今活躍されている作家さんのほとんどはセンスが良く、常に新しいものを模索して努力し続けている作家さんでしょう。しかしながら先ほど書いたように昭和から平成にかけて猫も杓子も呉服屋も展示会展示会展示会…とばかりに展示会を開催していた頃から時代は流れ近年は大規模な展示会はほぼなくなり、廃業していく作家さんもおられたのは事実です。

小売店側は展示会などの企画では集客できなくなって顧客のニーズに答えられるかどうかを試される時代になり、作家さん側も実演販売でのアピール力で勝負していたのが、展示会の減少に伴って作品そのものの良さを求められる時代に原点回帰しているのではないか、と思っています。

前置きがめちゃくちゃ長くなりましたがこれからが本題。今回はほとんどが前置きやないかーい!とツッコミが入ると思いますが、こういった前提を理解していただかないとこれからの話がよくわからないと思いますので…。

本当の力があるのなら、インターネット全盛の時代なんですからうまくネットを使って自分の作品を広く日本中に見てもらってユーザーに届けるというのは正常進化だと思うんですよ。インターネットがなかった時代は日本中にネットワークを持っている問屋さんの力を借りてユーザーに商品を届けていましたが、インターネットを使えばその役割は必要なくなります。自分が接客すれば小売店すら要らない。

理屈だけで言えばそんな時代がもう目の前…じゃない、そんな時代に突入しています。しかし、なかなか難しい面もあるのでそれはまた来週に…。

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