アイテムが絶滅するとき
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本日のお題:アイテムが絶滅するとき
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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だんだんと暑くなってきましたね。そしてそろそろ袷の季節は終わってしまいます。呉服屋にとって6月から9月は閑古鳥が鳴く月でして御多分に洩れず当店も閑古鳥です。今年は特に浴衣がかなりの値上げになっていて仕入れにくいし、商品登録も少し暇になりそうです。これも円安の影響ですかね…。
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今週から本店公式サイトにて試験的にタイムセールをしてみようと思います。毎日1点だけ、22時から23時59分まで30%OFFになります。1週間タイムセールしたうちの半分でもお買い上げ頂けたなら続けたいんですけれど、いつの間にかやらなくなったらイマイチだっと思ってください笑
パソコンならレフトナビの毎月のプレゼントの下、スマホならずーっとスクロールして下の方にリンクがありますのでそちらからご覧下さい。タイムセールの時間になりましたら自動的に価格が切り替わりますのでフライングに注意してください。
5/22 正絹絞り袷道行コート
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007918
5/23 正絹薄クリーム地袷小紋
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007919
5/24 正絹紺地単衣真綿紬
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007920
5/25 正絹ピンク地絞り万寿菊柄袷小紋
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007925
5/26 正絹白地扇面柄袷一方付小紋
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007926
5/27 正絹紺地花柄袷小紋
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007928
5/28 正絹グレー地小花柄袷小紋
https://www.kikuya.shop/view/item/000000007929
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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。
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■アイテムが絶滅するとき
今週のお題は「帯芯がなくなる」です。当店はしがないリサイクル屋さんで、基本的に帯芯の入った仕立て上がった物を仕入れているため、帯を仕立てに出すのは年に2-3回程度でしてあまりこういう情報は入ってこないのですが、帯の仕立て屋さんのXのポストを拝見して少々驚いているところです。
掲載の許可は取っていないので引用はいたしませんが大まかに要点を書きますと…
・日本で唯一だった帯芯製造の最終工程を担う工場が閉鎖
・全く異業種の会社に機械を移設し、試行錯誤中だけどめちゃくちゃ経費がかかってる
・それに伴って帯芯の価格爆上がり
かるーく三行で書いてしまいましたが、これが事実だとするとエライコッチャということになります。
先ほど書いたように当店はしがないリサイクル店で帯を仕立てることは滅多にないのでほぼ…というか全く影響はないのですが、こういう話を聞くと「帯芯よ、お前もか…」と暗澹たる気分になってしまいます。
何度かこのメルマガで書いておりますようにある商品が無くなるときには全部の工程が一気に無くなるのではありません。着物の製造の世界は分業制になっており、数多くある製造工程のうちの一つが廃業してしまってアイテムを作れなくなるということは多々繰り返されてきました。
例えば江戸小紋の万筋(縞柄)。江戸小紋は柿渋で固めた和紙に型を彫って、その型紙を生地の上に置き、その上から糊を置いて糊伏せして染められます。鮫小紋や角通しは普通に型の上に糊を置けばいいのですが、万筋に限っては両端の部分が固定されているだけなのでそのまま生地の上に置くと型紙の両端以外の部分がグラグラ動いてしまい染めることはできません。ですので型紙を二枚重ねる間に糸(網戸の網のようなのをイメージしてください)sを入れて縞の部分を固定しますが、グラグラ動いている縞の型紙をぴったりと寸分違わず貼り合わせて固定するが糸入れ職人さんです。
この糸入れ職人さんは万筋の型紙を作る時に欠かせないのですが、人間国宝城ノ口みゑさんがなくなって以来後継者がおらず、万筋が作られなくなってしまいました(注)。他の工程を受け持っている職人さんはいても重要な工程を担う職人さんがいなくなってしまい、そのアイテムが作られなくなってしまうというのは呉服業界だけではなく伝統工芸品あるあるではないでしょうか。
注:今はどうなってるのかな、と念のために検索してみたら、某九州の呉服店のブログで職人さんが現れて糸入れが復活したという記事を見つけました。4年ほど前の記事ですが、このブログの内容が正しければ、そして現在も職人さんが頑張っておられたら糸入れはまだ存続していることになります。
大島紬はまだ生産されておりますが黒地に藍色の絣のものはおそらく今は生産されていないと思います。10年ほど前に黒地に藍の絣の生産反数は数反からその翌年に0になったのを公式書類で確認しました。絣を作る締め機の職人さん、染める職人さんなどその他の皇帝の職人さんたちはまだ頑張ってくださっているのですが黒地に藍色の絣は非常に見にくく、高齢化で目が見えにくくなった織子さんはうまく絣を合わせることができなくなったとか。
京都は着物の一大生産地ではありますが、ごくごく小さな工房である一つの工程だけを一人で担っていることも少なくありません。私のように呉服業界の中にいても職人さんの本当の実態をわかっていない、上っ面だけしか見ることができない者にとっては「柄を描く職人さんはまだまだたくさんおられるし安心」などと軽く思ってしまいがちなのですが、華々しく表に出る作家さんや職人さんではなく、例えば糊糸目(注1)を置く柿渋の糊筒が無くなるとか、絣を括る木綿糸を作る職人さんが無くなるとか、そういったごくごく小さな一つの工程が途絶え、そこからアイテムがなくなっていきます(注2)
注1:下絵の青花の下書きの線に沿って生地の上に糸のように細く糊を置いていく作業。この糊が防波堤の役目をして生地に染料を挿しても滲まずに綺麗に染められます。いわゆる友禅技法。
注2:あくまでもなんとなく思いついた例であって実際は今のところそんなことはないと思います笑。
20年ほど前に大島紬を題材にして作品作りをしていた某作家さんに聞いたのですが、その方はT字になっている絣のカタスではなく、十字になっているヒトモト絣(注)だけを使っておられましたが、もうヒトモトの絣は手に入らなくなってきてこれからどうしようか悩んでいる、とのことでした。この場合はこの作家さんのこだわりでヒトモトを選んでおられるので、カタスでも作品作りは続けることはできますが、やはりご自身の美的感覚とは違うのでしょうね。あれからお会いする機会はありませんのでその後どのようにしておられるのかわかりませんが…。
注:大島紬は全く絣になっていない地糸と絣で染め分けられた絣糸で構成されています。元々大島紬はヒトモトと呼ばれる十字の絣でしたが、ある時から十字の絣からT地の絣にして絣糸の割合を少なくして手間を大幅に少なくしたカタスと呼ばれる大島紬が生産され、現在もそれが主流になっています。
一番初めの帯芯の話に戻りますが、当店ももちろん帯芯メーカーさんとのおつきあいはありますが、今のところ生産されにくくなるとか、大幅値上げになるなどの話は入ってきておりません。あくまでも今回聞いたのはネットでの伝聞ですので、まだその「最終工程」をやってくれる他の工場があるのか、別の代替手段があるのか、それともうちが単に取引が少なすぎて報告するのを忘れてるのか笑。うちの取引している三河の帯芯屋さんは、なぜかたまに電話がかかってきて全く仕事に関係のない雑談をしてくる気のいいおっちゃんなんですけど忘れているということはあるんやろか…笑。
たかだか2000億程度の小さな斜陽産業ですし、正直あまり儲からない市場なのでこれから後継者が出てきて技術が伝承されていくというのも考えにくい状態ですので、おそらくいろんなアイテムが少しずつなくなっていくのは止められないでしょう。あれ?この前まで簡単に手に入ったあのアイテムがいつの間にか市場から消えてしまってる、というような状態はそれほど遠い未来の話ではないかもしれません…。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/
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