振袖当選商法
====================
本日のお題:振袖当選商法
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。
上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください(noteの更新はメルマガ配信より1-2日程度遅れます)。
ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。
TwitterID:@gofukunokikuya
きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。
====================
いつもメルマガをご購読いただき誠に有難うございます。
先週、腰痛で困ってる、というお話をさせていただきましたが、MRIの結果、脊柱管狭窄症と診断されました。ヘルニアは昔から持っていたんですが、もっと広い範囲で神経を圧迫してました。
呉服業界って腰痛持ちが多いってご存知ですか?展示会等では商品の入った段ボールを担いで会場に運び込まなくちゃならないので腰を痛めるんです。大きな店ならホテルなど便利な搬入口のある大きな会場を使えるんでしょうけれど、小さい店だと公民館などでは車を外に停めて玄関からの搬入というのはごく当たり前でした。
着物なんか軽いんじゃないの?というそこのアナタ!袋帯の箱なんて1箱に30-40本ぐらい入りますので1本1kgとして30-40kgぐらいになるので結構な重量になるのでなかなか大変なんですよ汗。
====================
■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。
https://www.kikuya.shop/view/category/ct47
====================
■振袖当選商法
今週のお題は先々週、先週に引き続き振袖関係のお話で「振袖当選商法」です。
突然ですが振袖が一番売れる時期っていつかご存知でしょうか?実は1月から3月あたり、特に成人式が終わったあとの1月あたりに一番動くと言われております。成人式が開催されて振袖姿がテレビで報道されると「うちも来年やん!そろそろ用意しないと!」とばかりに動き始めるんでしょうね。
業界の方もそれはよくわかっており、昔当店が所属していた振袖販売の組合(注)でも、毎年12月末頃に新作が染め上がるように依頼していました。
注・小さな店が有名タレントを使ったパンフレットやダイレクトメールを作ると莫大な経費がかかるため、数十店舗が集まってお金を出し合って作成してました。当時まだ駆け出しで無名だった女優Sさんを起用したことがあるのですが、タレント事務所もこれから力を入れて売り出そうとしているタレントさんなので光の当て方や肌の修正など要望が多くパンフレットの担当者は大変そうでしたが、これから正念場というところなのでタレント事務所も必死なんでしょうね。ちなみにSさんがモデルを務めたパンフレットは非常に好評でその数年後にテレビで見ない日はない売れっ子に成長されてました。
先々週、先週と書いたように振袖販売は非常に手間もコストもかかりますので資本力のある大手には太刀打ちできず、当店はすでにほぼ撤退状態ではありますが(少しは在庫してあります)他店での購入に関して相談を受けることはあります。というわけで先日お客様から相談された内容を今回のメルマガのお題にさせていただきました。
今ではかなり少なくなってきましたが「振袖が当たりました!」という商法、耳にしたことはありますでしょうか。
アンケート付き往復はがきのダイレクトメールだったり、営業電話だったり、店頭でアンケートをとったり、振袖の抽選と称して応募者を集める方法はそれぞれありますが、「着物普及委員会」的なもっともらしい団体でアンケートに答えてもらって抽選で○名様に振袖プレゼントいたします、というのがよくあるやり方で、御察しの通りだいたい応募者全員に当たります。
喜んで店に行くと当選はがきの横に小さく「転売防止のため、必ずお仕立てをしてください。裏地やお仕立て代、その他加工で10万円かかります」となど書かれているんですよね。振袖の表地は無料で差し上げますが、お仕立てをしてもらって振袖の分の金額を取り戻そうというカラクリです。
先日相談を受けたのもこのパターンでして、なんか腑に落ちないからとりあえず契約はせずに帰ってきたとのことでした。
確かにこの商法は景品表示法によって規制されている「有利誤認」というものでして、消費者庁のサイトによると
「商品・サービスの取引条件について、実際よりも有利であると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に安いわけでもないのに、あたかも著しく安いかのように偽って宣伝する行為が有利誤認表示に該当する」
とされています。実際には全員に当たるのにまるでごく一部の人が当選したかのように装って、着物を仕立てるのに何が必要なのか、仕立て代の相場もよくわからない消費者に不当に高い裏地、加工賃、仕立て代を請求するのは有利誤認に該当するでしょう。
こういう商法は景品表示法的に問題があるのでもう行われていないと思ってたんですがまだやっているところがあるんですね。そして現在はもっと進化しているんです。
振袖は無料でも裏地やお仕立て代で10万円というのは、少し安めの振袖+裏、お仕立てを販売した時の金額とほぼ同じぐらいの金額です。つまり振袖は無料で差し上げるけれどお仕立て代に振袖代も乗せられているのはご想像の通りですが、あまりにもあからさまというかわかりやすいというか、通常の仕立て代よりも高くなってるのを指摘されることもあったんでしょうね。そんなわけで少し進化しました。
当選商法は他の着物(訪問着や留袖)でも行うことはできますが、実は差し上げる表生地は振袖というところがミソでして、振袖を購入するお客様はほとんどの方が初めて着物を購入し誂えるお嬢様であり、振袖用の帯も長襦袢も帯締め帯揚げも何もお持ちじゃない方がほとんどです。お母様の帯があったとしても訪問着用だったり、そもそもその帯が振袖に合うかどうかもわからない、相談する人もいない、という方がほとんどなので「じゃあついでにコーディネートしましょうか」という話になると多くの割合でフルセットでご購入される、ということになるのです。
だったら裏地と仕立て代が相場よりも高い10万円というようなあからさまな方法は取らず、あくまでも転売防止のために裏地と仕立て代のみで通常の5万円程度はご負担ください、という方法が出てきました。建前は帯や長襦袢は買っても買わなくてもいいということになりましたが、先ほど書いたようにほとんどの方がセットで購入されますので、振袖の表地をプレゼントする分を吸収してうまく儲かるようにはなっております。
これが訪問着や留袖だと手持ちの帯や長襦袢を使えるからいらないです、となってしまう可能性が高いのであくまでも振袖なのです。訪問着でもこういった商法が行われているのは見たことがありますが、その商材の特性上、振袖の方が多いように思います。
最近はコンプライアンスや、消費者の目も厳しくなりこういう商法をやっている店自体怪しく見えてしまうため、一時的には儲かっても長期的には決して店のプラスにはならないのであまり耳にすることがなくなってきましたが、今回久々に問い合わせがあったので少し驚きながら今回のお題にさせていただきました。
え?結局一番はじめの問い合わせにはなんて答えたのかって?
有利誤認という問題はあるとは思うし、いまだにそういうことをやっている店は良く言えば商売熱心なのでお付き合いが始まると面倒臭そうという懸念はあるけれど、振袖の表地は安物でも5-6万ぐらいはしますし、裏地+手縫い仕立てで4-5万ぐらいはしますので、フルオーダーお仕立て上がり価格10万円なら安くも高くもないことは想像できるので気に入ったなら買いなはれ、くれぐれも「当たったからラッキー、めっちゃお得やーん」という気持ちで判断しちゃダメよ、タダでもらえるならとかそういった事前情報に左右されずご自身が「この振袖だったら10万円出しても欲しい」と思うなら買ってもいいんじゃない?とお返事させてもらいました。
着物は価格相場がわかりにくいため不透明な販売方法が横行しやすい土壌があるとは思いますが、何か疑問があればすぐに契約せず、一呼吸置いてから総合的に判断するのがいいかな、と思います。
====================
発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。
====================