着物の汚れ対策その2
====================
本日のお題:着物の汚れ対策その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。
上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください(noteの更新はメルマガ配信より1-2日程度遅れます)。
ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。
TwitterID:@gofukunokikuya
きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。
====================
いつもメルマガのご購読、ありがとうございます。
当店の本店サイトの一番下の部分のメニューにLINEアイコンが出てきたのはもう気づいておられますでしょうか?今まで放置気味だったLINEアカウントでお客様から相談を受けられるようにしようと設置いたしました。
また、各商品ページにLINEでの購入相談のバナーも貼り付けました。LINEだと気軽に相談できるようで少しずつ利用してくださっているようなのでこれからどんどん充実させていきたいと考えております。
【20%OFFクーポンは11月1日10時まで】
メンバー限定てんちょ生誕祭20%OFFクーポンは明後日11月1日10時で終了いたしますので是非クーポン有効期間内にご利用くださいませ。
【期間】11月1日朝10時まで
【対象】会員様(購入時に会員登録してもご利用可能です)
【利用方法】ご注文時にクーポンコード「member」をご入力ください。
注:メルマガ配信時の情報です。すでに終了いたしております。
====================
■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。
====================
■着物の汚れ対策その2
今週のお題は「着物の汚れ対策その2」です。着物はとても機能的ではあるのですが、残念ながら現在販売されている絹の着物のほとんどは家庭での洗濯はできません。「着物は好きなんだけどお手入れがなぁ…」という方も一定数おられまして、そういう方の声から生まれたのがパールトーン加工に代表されるいわゆる「ガード加工」です。
ガード加工とは簡単にいうと着物についた汚れを弾く加工です。雨が傘に当たるとポロポロと水玉になって転がり落ちる、あの加工です(厳密には傘についている撥水加工とは違うようですが)。細かいことは企業秘密なのであまり教えてもらえないのですがほとんどのガード加工はおそらくフッ素樹脂加工で、他の物質と混ざりにくい、非常に安定した物質であるフッ素で糸を覆うという加工のようです。
ガード加工の中で一番有名なのはやはりパールトーン加工でしょう。私の知っている限りでは確か着物のガード加工の中では一番歴史が古く創業100年近かったと思います。ここでパールトーン社のサイトを見てみると元々は海軍から海水の湿気による金モールや海兵服の酸化防止のために開発されたもののようです。
創業当時はインターネットはありませんので呉服店やユーザーに知ってもらうのに大変な苦労をしたようで、全国の呉服店に醤油とパールトーン加工済みの布を持っていって目の前で醤油をぶっかけ、ポロポロ落ちる様子を見てもらうというデモンストレーションをしたというのは有名な話です。また京都の祇園祭の鉾の重要文化財級の緞帳にも加工されていることでも知られていますね。
というわけで前置きはこの辺で、ガード加工の注意点やメリット、デメリットを箇条書きでお話ししていきます。
・汚れを弾く
これは前置きでガッツリお話しさせていただいたガード加工の一番の特徴ですよね。絹の着物は家庭での水洗いはできませんのでジュースなどがこぼれてしまった時にポロポロと弾いてシミにならないというのは大きなメリットです。たとえ気をつけていたとしても氷の入ったコップの周りについた水滴がぽとりと落ちてしまうこともありますよね。そんな時にもガード加工さえしていれば全く心配なくシミになることなくポロポロと落ちていきます。
・でも汚れに万能というわけではありません
先ほどジュースやコップの周りの水滴などはポロポロと落ちてシミにならないと書きましたが、それではケチャップやマヨネーズなど、粘着性の高い汚れはいかがでしょうか。これは残念ながらポロポロと落ちるというわけには行かず、着物にぺちゃっとついてしまいます。ただし、糸に染み込むまではいきませんので綺麗なタオルでトントンとたたくように応急処置でとってください。糸と糸の間に入り込んでしまうと素人が触るだけでは取れませんが、慌ててこすったりするのは厳禁です(後述)。
また、着物で一番汚れやすい衿山部分等も要注意です。ちょっと下を向いた時に衿山にファンデーションがついてしまうことは多々ありますが、こういった擦り込むような汚れについてはガード加工はほぼ無力と思っていただいていいと思います。少し汚れがつきにくくなるといったことはあるかもしれませんが、目に見えて変化があるというほどではないと思います。
ではガード加工は全く意味がないかというとそうではありません。
ガード加工の会社は粘着性の汚れやファンデーションの汚れ等はどうしてもついてしまうものというのはわかっておりますので、多くの加工会社では自社のガード加工をした着物については染み抜き代金が格安、もしくは無料というサービスをしております。ちなみに当店で扱っております「しあわせガード」では10年間染み抜きが無料になります。
ですので先ほど少し書いた、糸と糸の間に入り込んでしまったマヨネーズ等は決して慌てて擦るようなことはせず、とりあえず上に載っている汚れだけをトントンと抑える程度でとってしまった後はそれ以上触っても事態を悪化させるだけなので放っておいてください。アフターサービスのついているなら加工をした販売店に持ち込むと格安、または無料で綺麗にしてもらえます。
今までガード加工済みの着物のお手入れを何百枚、何千枚としてきた私から言わせていただきますと、着物の汚れの半数以上は衿山のファンデーション汚れですので半数以上の汚れには染み抜きサービスのないガード加工はあまり意味がないと言わざるを得ません。ほとんどのガード加工には無料染み抜きサービスがついているのですが、なかには格安ですがそういったサービスがついていないものもございますので加工する時にはしっかりと確認してくださいね。
・熱いお湯にも要注意
ガード加工の天敵といえば、実は熱いお湯だったりします。私自身は試したことはありませんし、もしかすると今ではかなり改善されているかもしれませんが熱いお湯をかけると一気に効果がなくなってしまうとされています。着物を着て食事をした後コーヒーを飲むということもあると思いますが、そういった熱い液体には要注意です。
・効果は半永久的?
ガード加工の会社では効果は半永久的と書かれていることが多いです。今某P社のサイトを確認致しましたがやはり「半永久的」と書かれておりました。50年前にガード加工をした生地があったのでそこに水をかけてみたら見事に水を弾いて効果は持続致しておりました、と記載があるのですが、私の感覚では着用頻度によってかなり違うと考えたほうがいいように思います。
実は私、新品屋時代にお客様のところを紋付羽織袴で挨拶回りをしたことがありました。約3週間ぐらいだったかな、毎日紋付羽織袴でお客様訪問をしたのですが、ガード加工をしていたにも関わらず袖など擦れやすい部分はガード加工が剥がれてる部分が多々ありました。なぜそれがわかったかというと、外回りをしていた時に雨が降ってきまして「ガード加工してるから大丈夫」とそのまま外回りをしていたのですが(傘はさしてます)袖の部分などで水が染み込んでいるところが多々ありました。
現代では同じ着物を3週間も着続けるといったことはほぼないと思いますので、上記の事例は非常に特殊ですのであまり深刻に考える必要はないと思いますが「効果は半永久的」というのは加工をしてそのまま一切触らずにいた場合に限ったことであり、もし着続けたり頻繁に摩擦があったりすると表面の加工が剥がれてしまう可能性は高いと思っています。
・本当に通気性や風合いは損なわないのか
どの加工会社のサイトにも通気性や風合いはかわりません、と記載されておりますが実際のところは変わります。といっても普通の方ですとほぼわからない程度の変化でして、何百枚、何千枚と着物を縫ってきた和裁士さん、自分の指先の感覚で着物を織り上げる職人さんでようやく感じ取れるような変化のようです。当然私もわかりません笑。
今まで何度か和裁士さんに「これ、ガード加工してるのかな、ちょっと固かったね」と言われたり、お召しを織る職人さんも「ガード加工をした着物はヌルヌルする」というようなことをおっしゃってました。これは指先の感覚がかなり鍛えられた職人さんならではの感覚ですのであまり気にする必要はないかもしれませんが、重要無形文化財の結城紬などは空気を含んだふんわりとした風合いを楽しんでいただきたいので、少しでもその風合いを損なうものは躊躇してしまいますね。
・結局のところどうしたらいいの?
結局のところどうしたらいいのか、迷いますよね。せっかくの風合いの良い絹の着物を購入したのならその着心地まですべて楽しみたいので、素人にはわからないレベルと言われても風合いが落ちると言われたらなんとなく二の足を踏んでしまうのはわかります。しかしその一方で着物を着て食事をする時にいちいち汚れを気にせずに食事に集中したいし、自分は気をつけても隣の人がこぼしたりなんていうこともありますのでそういうことを考えると(染み抜き格安保証がついているガード加工の)染み抜き代が必要なくなるというのは非常に魅力的。
私なら、例えば重要無形文化財クラスの結城紬や芭蕉布、宮古上布などの希少織物でしたら、私にわからないレベルであっても風合いが落ちる、または変化するというのであれば加工はしたくありません。一方、名の通った織物ではない普通の着物でしたら気楽に着るために加工をする、というところでしょうか。やはり汚れを気にすることなく気軽に着たいので。
本当は、ガード加工をしなくても染み抜き無料サービス(もしくは格安)で染み抜きをしてくれる染み抜き保険のようなサービスがあれば一番良いんですけど、意外とこのサービスをやっている会社がないんですよね。どこかの会社でやってもらえません?
====================
発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/
上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。
====================