呉服屋の掛売り問題その1
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本日のお題:呉服屋の掛売り問題その1
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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朝、テレビのワイドショーを見ていたのですが、関東の方ではかなり寒くなっているようでいよいよ冬が近づいてきたな、なんて思っています。今年は秋がなくていきなり冬になってしまったような感じでしたね。
そんなことを言っている間にもう12月、あっという間にもう年末でなんとなく慌ただしいです。
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■呉服屋の掛売り問題その1
先日、報道番組を見ていたらホストの掛売り問題が取り上げられていました。ホストにハマった女性が支払いのために風俗で働かざるを得なくなるなど社会問題化しているとのことで、問題解決に取り組もうとしている政治家もいるようです。
悪質なホストはいけませんが(何をもって悪質とするかはさておき)、あまり規制が入るというのもどうかなぁ、なんて思いますが、キャバクラにはまって家庭を壊す男性もいっぱいいるので男女共遊ぶのはほどほどにした方がよろしいかと思います。仕事が終わったらとっとと家に帰って、夜は家から出たら負け!とばかりに出て行かない私としては皆さん元気だなぁ、なんてその元気さが羨ましかったりもしますが。
そんな話はさておき、掛売りといえば呉服屋です。え?そんな話聞いたことがないですって?いやいや、呉服屋と掛売りは切っても切れない関係なんですよ。今週はそんなお話をしていきたいと思っております。
まず、掛売りというのを解説いたしますと、簡単にいえば「ツケ」のことです。商品を買ったりサービスを受けるときにお金を持ち合わせていなくても購入できて、あとで支払うという方法です。ショッピングローンとは違って間にローン会社が入らず(注)、店舗とお客様の間だけで行われます。今回は掛売りの話ですので間にショッピングローン会社が入る割賦販売とは明確に区別してくださいますようお願いいたします。もちろん割賦販売と同じで全額支払いをする前に商品はお客様に渡します。このあたりはもう店とお客様との信頼で成り立っている関係ですね。このメルマガで何度も書いておりますように、呉服店はほぼ固定客相手の商売ですから10年、20年のおつきあいは当たり前ですからそういう支払い方法が成立したのです。
注:一般的な商取引は、販売店は商品やサービスを提供し、お客様はお金を支払うという二者間で行われますが、ショッピングローン(割賦販売)の場合はその両者の間にローン会社が入ります。販売店はお客様に商品やサービスを提供し、ローン会社は販売店に対してお客様の購入代金を立て替えて支払いをします。そしてお客様は利息分を上乗せしてローン会社に分割で支払うという流れです。つまり、お客様はいま持ち合わせがなくても購入できますし、販売店は持ち合わせのないお客様にも販売できて先に代金を頂ける、ローン会社はお客様から利息を頂けるというシステムです。
ショッピングローンは上手く使えば便利なシステムなのですが、欲しいものがあると自制が効かない方もおられるようで、一時社会問題化されまして、トラブルを防ぐために現在は年収の1/3を超える利用は禁止されております。まあこのあたりはあくまでも自己申告で何か証明書を出すわけではないので抜け道だらけではありますが…。
呉服店というのは古くからある商売でして、京都には創業元禄13年の大手老舗呉服問屋なんてのもあります。元禄13年というと1700年ですから実に創業423年です。近江五箇荘で麻の行商から始めたのが始まりでして、おそらく正式に記録に残っている最古の呉服店でしょう(現在は問屋ですが、当時は問屋や小売店という明確な区別はなかったのでは、と思います)。
まあそんな何百年も前の話はさておき、ちょっと検索してみましたところ、割賦販売という概念が日本に入ってきたのは1897年に住宅ローンが始まり、1960年にプリンス自動車がオートローン開始、1980年ごろには自動車販売会社が扱いを始めましたが、着物やその他商品に割賦販売が利用されるのはまだもう少し先の話です。私の感覚ではようやく1980年代後半ごろになっていろんな商材にローンが使われるようになったのでは、と思います。
ではそれまではどうしてたかと申しますと、今回のお題の掛売りなんですね。高価な反物を購入したとしても毎月幾らかずつ分割で支払うという方法です。掛売りで利息を取るのは法律上禁止されている(と思う)ので利息は取れませんが、着物は利益率が高いと言われておりますので、利息分を見越した上の価格がつけられていると考えられるかもしれません。
で、今はショッピングローンがあるからそう言った習慣はなくなった…と思うでしょ?ところがどっこい、まだあるんですよ。
もちろん当店のようなリサイクル店は掛売りなんてやりませんよ。いつもニコニコ現金払い(またはカード決済)です。しかし昔から続く呉服店はこの掛売りという商売からなかなか脱却できなくて困っているところは今でも多いと聞きます。
今まで何度もこのメルマガで書いておりますように、呉服店は固定のお得意さんを相手に商売をすることが非常に多いです。おばあちゃんの代からお母様、娘さんと親子三代にわたってその店の顧客なんてのも全く珍しくありません。当然おばあちゃんの代はローンもなかったので掛売りで毎月少しずつ支払うというお付き合いしてきたことでしょう。
ショッピングローンが導入されても昔からの信用でお付き合いしていたお客様はそんなもの使いませんよ。店側はショッピングローンを使ってもらえばすぐに信販会社から全額お金が入ってくるのでとてもありがたいですからお客様にも使って欲しいですが、お客様からすれば「今までお互いの信用で取引していたのに急にこんなもの書かせやがって!そんなに私が信用できないのか!」と怒る案件です。
そんなあほな、と思うかもしれませんが、1980年代あたりでまだショッピングローンなんて一般的でなかった時代ですし、今まではお互いの信用で取引するのが当たり前だったのに、ある日「この会社を入れるから書類を書いてくれ」とよくわからないシステムの説明をされたら「私を信用していないのか!」と怒られるのも当然です。当時まだローンなんて一般的ではありませんでしたし、よくわからない書類を出してきて記入しろなんて無理やり借金させられるような錯覚に陥る方もおられたでしょう(着物を買ってまだ代金を払っていない時点で借金なのですが…)。
事実私が以前勤務していた店の社長は、ローンのシステムの出始めの頃に何人ものお客様にそんな風に怒られた、と言ってました。
来週に続きます。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
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