着物販売の仕事をやめようと思った話その3
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本日のお題:着物販売の仕事をやめようと思った話その3
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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呉服のきくや本店サイトで開催中の30%-90%OFFの秋のセールは日曜夜23時59分までとなっております。在庫処分品は今までも50%-90%OFFにしておりましたが、在庫処分品ではない新しく登録した商品も全て30%OFFとなっておりますので是非ご来店くださいませ。期間は10月17日までですが、全て1点ものですので気に入った商品がございましたらお早めにご注文ください。
期 間:10月17日23時59分まで
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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。
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■着物販売の仕事をやめようと思った話その3
先々週、先週に引き続き今週も「着物販売の仕事をやめようと思った話」のその3です。それなりに使命感を持って着物販売の仕事をしてきたものの、お客様が気に入って購入してくださった帯なのに、それが一度も使用されないままカビによってシミだらけになってしまい、自分は何故この仕事をやっているんだろうと思うようになってしまったのが前回までのお話です(冒頭で書いたように前々回までは楽天出店者ブログ、前回分はnoteにてバックナンバーを置いております)。
ちょっと話は違うかもしれないんですが、若者が伝統工芸の世界に入ってもすぐに辞めていく、最近の若者は根気がない、というじゃないですか。
某伝統工芸の職人さんに聞いたところによると、ほとんどの若者は希望を持って、どんなことがあっても頑張ろうと思いながらその伝統工芸の世界に足を踏み入れるんです。今時親が強制的にその世界に放り込むわけでもなし、厳しいというイメージのある世界に自分から入っていくんですから色々と覚悟の上で、それでも頑張ろうという心構えをもって足を踏み入れてるんですよ。
その心構えをもってしても伝統工芸の世界は厳しいです。いや、親方から怒鳴られたり、何も教えてもらえず自分で盗め、とか365日1日も休みなく働け、とかそんな時代錯誤じゃないんですよ。手作業の世界なので職人として使えるようになるのは10年後というような世界です。その10年間に普通の企業に入社した周りの友人は少しずつ仕事を任されて社会の役に立っているのに対し、自分はいつまでも一人前の仕事をさせてもらえず、雑用係と練習の繰り返し。
10年って長いです。職人さんとして一人前になりたくて、自分の仕事で伝統工芸を後世に残したくてその世界に飛び込んだはずなのに自分だけが取り残されていくような気がしてくるんです。親方も「今はまだ我慢の時だけど、頑張って技術を磨いて一流の職人になるんやで」と励ますんですが自分の無力さを感じ、自分の存在意義を疑い始めた結果、辞めていくんです。
当時の私も同じように、自分の仕事に価値を見出せなくなっていました。着物を販売しても着物パーティーや京都旅行のような、着物を着て参加して頂くイベントを催さないと全く着てもらえない、そういうイベントにも参加できない方の着物は全く着られないままタンスの奥で朽ちていく。そして今回、朽ちてしまった帯を目の当たりにしたのです。
先日からうちの店の近くに健康食品の特設の店ができました。食パンなどを配って高齢者を集めて、健康食品の説明会のあと購入してもらう、というよくある期間限定の店です。周りの人は「いまだにああいう商法で騙される人いるんかな?(注)」と笑ってるんですが、突き詰めていくと私のやっていたことと変わらないんですよ。
注:こういう商売は違法ではないことは誤解のないようにお願いします。「騙される」という表現は聞いた話をそのまま記載しています。
いつもの顔見知りのお客様に「今度展示会があるんですよ、こんな着物が出てこんなお土産があってこんなおもてなしがあって…」などとお誘いして。お客様は着物にもお土産にもおもてなしにもあまり興味はありませんが、営業マンとの付き合いで足を運んでくださいます。展示会に来られたらおもてなしをして「ちょっと羽織ってくださいよ」「そろそろお嬢さん適齢期で結納などもあるんじゃないですか?」なんて言いながらお客様の気持ちをくすぐって購入していただくんです。これ、パンをタダで配って健康食品を買ってもらう店と全く変わらないですよね。私はその店のこと笑えないです。
その後、着物販売はこれから難しくなるということで会社の体制が少し変わり、会社の中に医療系の訪問マッサージの部門ができました。なぜマッサージ?と思われるかもしれませんが、高齢者の顧客が多かったのでお客様の年齢層が合っていたんです。医療系のマッサージとは「この方はリハビリとしてマッサージが必要」という医師からの指示があれば健康保険を使ってわずかな負担でマッサージのサービスを受けられるというものです。
これもね、マッサージのサービスを提供して対価を得るというよりも、訪問することにより健康保険からもらえる往診料で稼ぐ方がずっと多いというようないびつなビジネスモデルでした。遠くであればあるほど高い往診料をもらえるので「遠くのお客さんを取ってこい」などと言われ、正直その頃には「着物好きな人に喜んで買ってもらいたくて呉服屋になったのに、自分はいったい何をやってるんだろう。つまんねぇ」とすっかり嫌になっていました。
どんどん嫌になっていくのですからそんな仕事が続けられるはずもなく、それから色々模索、放浪、自分探しの旅(笑)をして現在のリサイクル着物に出会いました。
今まで扱っていた新品のように20万円、30万円ではなく、リサイクル着物は5000円、1万円といった気軽に購入いただける単価なんですよね。そして同じ頃に普及しだしたインターネットを見てると、着物の愛好家の皆さんが自分のコーディネートや着姿を披露しているじゃないですか。今までは販売した着物の着姿はほとんど見せていただけくこともなく淡々と販売していたのですが、インターネット上では購入した着物を思い思いのコーディネートで着て下さってるのを見ることができる。
信じられないかもしれませんが、当時の呉服屋は着物を扱っていてもお客様が着ている姿なんてほとんど見る機会がないんですよ。フォーマル用がほとんどでタンスの中に入れたままになっているし、そもそもお土産やおもてなしで展示会に来ていただいてその場の雰囲気で購入してくださる方が圧倒的に多かったので実際に普段着として着物を着る方はごくごく少数です。まあそんなタンスの奥の着物が現在リサイクル業者に渡り、しつけ糸つきの未着用品が多数流通しているわけですが…。
インターネットは呉服店にとっても革命的なツールでした。今でこそSNSで着物ファン同士が交流し、一緒にお出かけをしたりオフ会なども頻繁に開催されますが、それ以前は着物ファン同士の交流なんてほぼないに等しかったのです。パソコン通信(インターネットとは違う、文字だけでやり取りをするツール・今はもうありません)で着物ファンが集まる掲示板はありましたが、当時は今ほど通信が普及しておらず、よほどパソコンに強い人でなければ知らなかったと思います。
着物ファンがいて、喜んで着物を購入してくださってる。もうこれだけで私は満足でした。
これを読んでおられる皆さんも何かしら仕事をしたことがある&しておられると思いますが、生活費を稼ぐために嫌々仕事をしているんじゃなくて、それぞれ仕事に誇りを持って、社会の一端を担うことで自身の存在意義を確認していると思うのです。このメルマガももう20年近く配信しておりますが、販売するための商品を羅列するのではなく、お客様に少しでも着物の情報を伝えたい、着物の魅力を伝えたいという思いから続けております。
今はTwitterなどでお客様と交流しながら「こんなときにはどうすればいいの?」という質問に答えたり、「こんな商品が欲しい」というツイートを見かければ「この店のこの商品なら希望通りじゃない?」とお勧めしたり、時には業界の裏話をぶっちゃけたりもしながら、辞めようと思っていた当時には全く感じられなかった着物ファンのお役に立ててる充足感を感じています。
孔子の論語に「四十にして惑わず」とありますが、色々やってきて、あちこち頭をぶつけながら50歳過ぎとなりましてようやく「不惑」になりました(笑)。リサイクル着物屋さんなんて大して儲かる商売でもないですけれど、家に帰ってテレビを見ながら350mlのビール一本飲んで毎日楽しく過ごしております。大儲けもしない代わりに明日のご飯に困ることもなく、おかげさまで日々平穏に暮らしております。
着物のことでちょっとした質問などがありましたらTwitterで「呉服のきくやてんちょ」で検索していただければでてきますのでなんでも気軽にお声をお掛けくださいませ。
3週間にわたる壮大な自分語りでほんとすいません(汗)。お読みいただきありがとうございました。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
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