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留袖やら比翼やら

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本日のお題:留袖やら比翼やら

呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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昨日、郵便局に行くとお菓子のキットカットにポチ袋がついた「キットカットポチ袋」が売られてたので、娘や息子、甥っ子たちの分、5つ購入してきました。今日から12月とは今年も1年経つのがすごく速かったような気がします。

今年もコロナに翻弄された1年でしたが、この秋から結婚式やお宮参りなど、行事も少しずつ行われているようで、少しずつ動き始めているのを感じてますが、また変異株が出てきているのでぶり返さないように気をつけないといけませんね。

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■留袖やら比翼やら

本日のお題は「留袖やら比翼やら」です。このメルマガの読者には普段着のようにリサイクル着物を気兼ねなく着ておられる方が多いイメージですが、そういう方は意外に留袖とは縁がないと聞いております。そりゃそうですよね、洋服でも普段着のTシャツやジーンズと比べるとタキシードやパーティドレスなどは滅多に着る機会はありません。今週はそんな留袖に焦点を当てていろいろお話ししてみたいと思っております。

まず、留袖ってなぜ「留袖」というかご存知でしょうか。これは読んで字のごとく「袖を留める」からなんですよ。昔は未婚女性の最高の礼装として「黒紋付裾模様振袖」というものがあったようで(私も実際に見たことはありません)、結婚した後は袖を短くするのですが、その短くするのを「袖を留める」というのです。

なぜ袖を短くするのかと申しますと、袖を振るのは古来から求愛行動とされており、好きな異性の前で袖を左右に振ることによって想いを伝えるということがあったようです。

あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る

万葉集の額田王の有名な和歌です。袖を振っている「君」は大海人皇子、それを見ているのは額田王。当時天智天皇と恋人関係にあった額田王に大海人皇子は袖を振って額田王に想いを伝えます。それを見てそんなに袖を振っていると見張りの人にバレてしまうやないかーい、という和歌ですね。

ちなみに額田王は女性、大海人皇子は男性ですので袖を振って求愛行動をするのは女性だけではなく男性も同じです。

かくしてパタパタと袖を振って見事パートナーをゲットした人は結婚しているのだから求愛行動をする必要がないので袖は必要なく、短く留めてしまいましょう、ということですね。

そしてめでたく(?)振袖から留袖にトランスフォーメーションした着物はこれから既婚女性の第一礼装として着られることになります。

さて、現代の留袖には袖周りや袖口に「比翼(ひよく)」と呼ばれる生地がつけられていることはご存知でしょうか。今となっては完全に飾りのようになっており、なぜこんなものがつけられているのか不思議に思う方も多いでしょう。

元々留袖は、留袖と長襦袢の間にもう一枚真っ白の着物を着用いたしました。なぜこのような風習なのかはわかりませんが、とにかく最礼装の着物の下にはもう一枚着物を着ることになっていたのです。蛇足ながら付け加えると、昭和中期あたりまでは黒紋付(喪服)の下にも同じように白い着物を重ね着していたようです。当時はマナー講師のような方はおられなかったでしょうが、自然発生的に「不幸が重なる」などと言われるようになり重ね着が避けられるようになりました。

黒紋付は、本来女性の最高の礼装で決してお葬式専用の縁起の悪い着物ではないはずなのですが、おめでたい席用として留袖が君臨しているため、図らずも黒紋付はお葬式専用となってしまい「喪服」という名称で呼ばれるようになってしまいました。黒紋付はそれ単体では喪服ではなく、黒共(くろとも・真っ黒で地模様だけの帯)の九寸名古屋帯、黒の帯締め帯揚げを使ってようやく喪服の装いとなります。

話を元に戻します。

下にもう一枚着物を着なくてはならないのであれば、留袖、その下の白い着物、長襦袢と最低でも3枚、肌襦袢も合わせると4枚着なくてはなりません。となるとおはしょりの部分がモコモコになって非常に着づらくなってしまいます。そのため、着ていない白い着物をあたかも着ているかのように、外から見える衿や袖口、振りの部分、裾まわりに白い生地を縫い付けるようになりました。これが「比翼」です。

この「比翼」という名前は中国の伝説の鳥「比翼の鳥」からきています。一つの翼と一つの目しか持たないため、1羽だけでは動けません。お互い片方ずつを探し、雄と雌が出会い、支援しあってようやく飛び立つことができるとされています。2つの着物を合体させるところから留袖につける白い生地のことを「比翼」と呼ぶようになったのだと思いますが、結婚式用の着物につける名前としてはとても秀逸ですよね。

もう少しおまけの話をしますが、比翼紋というものを聞いたことはございませんでしょうか。と言っても私も呉服屋歴30年ですが、実際に見たこともなければ仕事として紋入れをしたこともありません。比翼紋とは想い合う男女がそれぞれの家紋を組み合わせた紋で、二つ紋、並び紋ともいわれます。着物や婚礼道具につけられ、昭和初期頃まで使われていたようです。

最後に、留袖は絹100%なのに比翼だけ、または比翼と胴裏どちらもポリエステルが使われていることがございます。これは単にコストダウンというだけではなく、もう一つ理由があります。

昔はお嫁入りの時に訪問着や留袖など着物一式を嫁入り道具として誂えて持っていくものでした。しかし留袖は滅多に着る機会のないものなので、タンスの中にずっと入れっぱなしになることも多く、裏地に絹を使っているとどんどん黄ばんで最終的には茶色くなってしまうこともありました。黒地の留袖に黄ばんだ比翼や胴裏って結構目立つんですよ。しかしポリエステルなら全く黄変することなく真っ白のままでしかも軽い。東レのシルックの生地を使うと肌触りもよく、着心地を損ねません。

しかし最近ではホワイトガード加工といった絹の白さを保つ技術が出てきたため、絹の表地にポリエステルの胴裏をつける意味合いは少し薄れてきたように思います。表と裏で材質の違うものを使用すると、経年変化によって表地の絹が縮んだときも裏地のポリエステルは全く縮まないので沿いが悪くなったり袋になったり、比翼が裾から出てきたりといったことにもなりますのでメリットデメリットをよく考えて素材を選択してくださいね。

最後に、留袖は滅多に着ることのない着物ですので、ついタンスの中に入れたままにしてしまいがちですが、地色が黒いのでカビが発生すると特に目立ってしまいます。先週のメルマガ「着物の虫干しと収納」にも書いたように、湿気を避けてなるべくタンスの上の方に収納すると少しでもカビのリスクが少なくなると思います。

晴れの日にお召しになるものですので、できれば着用予定日の2ヶ月ぐらい前に一度出してみてシミやカビがないか、確認してくださいね。2ヶ月あればだいたいどんなトラブルがあっても余裕を持って対応できます。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや

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