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振袖販売裏事情その2
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本日のお題:振袖販売裏事情その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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ちょっと土日に無理をしすぎまして、今めちゃくちゃ腰痛です(汗)。以前からヘルニアを持っていたので左足が痺れてるんですが、それとは全く別の原因で腰痛も持っておりどちらもいっぺんに来たような感じです。もう若くないんだからあんまり無理しちゃダメですよね。最近は病院からもらっている薬が習慣化して忘れずに飲めるようになったのが自慢です(えへん)。
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■振袖販売裏事情その2
先週配信の「振袖販売裏事情その1」では呉服店がなぜ振袖販売に力を入れるのかをお話ししました。今週からこのメルマガをご購読いただいた方のために少しおさらいいたしますと、昭和の時代は結婚される時にお嫁入り道具として着物を一式持って行く風習があり、また近所の人にそのお嫁入り道具をお披露目するといった謎の風習もあったため、女の子の親御さんは多少無理をしてでも豪華なお嫁入り道具を用意したのです。
今まで呉服店とお付き合いがなかった家庭も、まずは振袖を入り口として黒紋付(喪服)や訪問着、色無地、お母様の留袖などを購入していただけるのでまずは呉服店とお付き合いいただく入り口の商品として最適でした。
しかし時代は流れ、生活様式や結婚自体の価値観の変化により、お嫁入り道具としてタンスにいっぱいの着物を持って行くというようなことは少なくなりました。つまり、振袖を購入していただいてもそのあとに続く需要が見込めなくなってしまったのです。
とはいえ、振袖自体はお嬢様のために購入する初めての着物ですから、帯も長襦袢も、その他の小物も何もかも持っておられないので単価は非常に高く、呉服屋にとっては非常に美味しい商材…と言いたいところですがここ最近になって振袖販売に関しては振袖に特化した振袖専門店と、当店のように振袖から撤退する負け組店舗(でも振袖以外は負けてない…はず)と二極化しているように思います。これにはいくつかの理由が考えられます。
1・振袖の営業はとにかく金がかかる
先週書いたように、1年後、2年後に成人を迎えるお嬢様の名簿は手に入りにくくなったとはいえある程度は業者から手に入りますので、呉服店の営業はその家庭に営業を仕掛けます。しかしですね、どこの呉服店も全く同じ名簿を元に営業することになります。つまり名簿に掲載されているお嬢様がいる家庭にいろんな呉服店からの営業やパンフレットが届けられるため、いわゆる「レッドオーシャン状態(注)」」となってしまいます。
注・ビジネス用語の一つで競争が激しい市場を意味する言葉。 多くの企業が参入し合うのでサービスや価格などの競争が厳しいことが多い。
そのため、少しでも安く、より良いサービスを、ということで着付け無料サービス、ヘアーセット無料サービスは当然、オーダーレンタルと称してレンタルなのにお嬢様の寸法に合わせて仕立てる、成人式当日は着付けやヘアーセットを一括で受け持つ会場をホテルなどに用意しなければならないなど、とにかく経費がかさむのです。
また、お客さんに購入していただくために綺麗なパンフレットを作り(一冊数百円かかることも)、ダイレクトメールをどんどん発送するなど頻繁なアプローチが必要となります。
2・常に店に在庫を用意しておかなければならない
何度かこのメルマガでも書いておりますように、呉服店はほとんどが固定客相手の商売でして、固定客であるがゆえに「今度こんな訪問着欲しいから用意しといてよ」「次は九マルキの大島が欲しいからいれといて」なんてお客様から要望を聞いてから用意することができます。意外かもしれませんが、全く面識のないお客様がふらっと店に来られて「留袖がください」なんてことはほとんどありません。まあこの辺は当店のような下町の小さな店とショッピングセンターに入っている有名チェーン店とは多少事情は違うかもしれませんが、少なくとも当店では非常に珍しいことでした。
本来ならば常に在庫として持っておくべきなのですが、着物はアイテム数が非常に多いです。留袖や訪問着、付下、小紋、紬、それぞれの色や柄などをすべて網羅して在庫しておくとなると数千万から億単位の資金が必要で小資本の事業体が多い呉服業界では現実的ではありません。お客様はほとんど固定客ですし、リスクとメリットを天秤にかけると、お客様から依頼があってから手配をすることは珍しいことではありません。
しかし振袖だけは違うんですよ。
先ほど書いたように、パンフレットやダイレクトメールを送っているため、お母様とお嬢様とでふらっと来店されることがほとんどです。その時に「あ、今在庫にないんで手配しておきます」なんていった日にゃ、その足でダイレクトメール送ってきていた別の店に行ってしまいます。そのため振袖だけは常に在庫を用意しておく必要があります。
ちなみに当店も10年ぐらい前までは積極的に振袖販売を行なっておりました。振袖販売の組合に入り、組合メンバーみんなでお金を出し合ってパンフレットを作り、2週間に1回ぐらいダイレクトメールを発送しておりました。みんなでお金を出し合って図案を選び、メーカーから1月ごろに新作が染め上がってきて100万から200万ぐらいの支払いだったように思います。在庫はその当時で300枚ぐらいありましたでしょうか。
振袖だけじゃダメですよ。振袖用の帯も同じくらいの点数、長襦袢や帯〆、帯揚などの小物も必要ですので、当店のようなごく小さい店が在庫として持っている金額としてはとんでもないウン千万単位の金額になってしまいます。正直、毎年1月に染め上がってきた商品の支払いは頭が痛かったです笑
まあそんなこんなで、当店もそれなりに頑張ろうとしておりましたがどうしても背伸び感は否めず(笑)、その後、縁あってリサイクル着物業界に引っ張られ、その面白さに目覚め、振袖に関しては負け組を自覚して撤退しました。
現在は振袖が得意な店とあまり力を入れていない店の二極化しているように思います。
振袖が得意な店は、ダイレクトメールや訪問営業などを仕掛け、かなりの枚数を販売しているためそのスケールメリットを活かして成人式当日はホテルの大きな会場を借り切ってヘアセット、着付けを一手に引き受け、写真スタジオまで併設してその店で一貫してお世話ができるようになっています。また、販売が見込めるのでメーカーも協力して商品を貸してくれますから豊富な商品点数の中から選んでいただけます。
そういう振袖に特化した店と普通に置いているだけの店だと…うーん、もう勝負は目に見えてますわな笑。先ほど書いたように少ない需要を取り合うレッドオーシャン状態でサービス合戦が過熱しており、資本力の小さい店には手を出しにくい商材になっています。
数年前に某振袖専門店が事業破綻して成人式当日に雲隠れするという事件がありました。風の噂ではかなりの販売枚数を誇っていたと聞こえてくるのですが、それでもうまくいかなくて破綻してしまいます。まあ、ああいうのは特殊なケースだとは思いますが、それでも競争が激しい分、経費がかかり、一見かなりの販売数でうまくいっているように見えて内情は火の車、ということもあるんですかねぇ…。
当店はもうそんな競争から早々に降りてしまったのでなんともいえませんが…。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
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