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色無地の家紋

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本日のお題:色無地の家紋
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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Googleのセキュリティ強化はなりすましメールなど少し悪質なメールを撲滅するためのものらしいですが、ちゃんと送ってるメルマガも届かなくなるというのは少々困りますね…。

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■色無地の家紋

本日のお題は「色無地の家紋」です。このメルマガの読者さんはもちろん色無地ってご存知ですよね。その名の通り一色だけで染めた無地の着物です。昨今では同色系のぼかしも色無地(に準じた着物)といわれることがあります。今はお嫁入りの時に着物を持っていくなんてのはあまり聞かなくなりましたが、昔はこちら関西では「何は無くとも色無地」と言われるぐらい(?)、色無地は重宝されました。

家紋を入れるとセミフォーマル、家紋なしだとカジュアルといろいろ使いやすく、お宮参りや七五三など自分が主役ではない時に少し格を落としたセミフォーマルの色無地はお嫁入りのお道具として一枚入れておけ、なんて言われたものです。

色無地がここまで重宝されるのは関西だけと聞いたことがあります。関東の呉服店に聞いたところ、色無地はあまり置かれておらず、その役割は江戸小紋になるようです。確かに江戸小紋も色無地と同じように家紋を入れてカジュアル、セミフォーマルと幅広く使えますからね。

江戸小紋は江戸時代に参勤交代で江戸城に行った時に、どこの藩の武士か、どのくらいの階級かを一目でわからないとトラブルになるので江戸では江戸小紋が広まった、というところから現代でも関東方面では江戸小紋が多く着られるんだろうなぁ、と推測するのですがそれはまたいつか詳しくお話しするということで…。

まあそんなこんなで(どんなこんなだ)関東の方では江戸小紋が中心、関西では色無地が中心でして、関西では江戸小紋はあくまでも小紋の柄の一つという位置付けで本格的に江戸小紋を扱っている店はあまりないのでは、と思います。こういうところにも地域性があって非常に興味深いですね。

ところで色無地に入れる家紋ですが、どんな家紋を入れるのでしょうか。あ、家紋の名前じゃないですよ。日向紋か刺繍紋か、という家紋の入れ方の話です。

結論から言いますと、多くの店は刺繍紋をお勧めすると思います。あまり目立たないような同色系をお勧めする店が多いだろうし、実際リサイクルで入荷してくるのも同色系の刺繍糸を使ったものが多いです。地色が濃い場合はその色よりも薄い色の糸を使い、地色が薄い場合は濃い色の糸を使います。前者を「共薄(ともうす)」、後者を「共濃(ともこい)」といいます。呉服店で紋入れを依頼するとき、「共濃」「共薄」というと「お、なかなかやるな」なんて思われます笑。

で、なんで刺繍紋かというと、着物の格自体セミフォーマルなので格の高い日向紋(注)を入れる必要はないとも言えるのですがもう一つの理由としてはすでに染め上がっているところに日向紋を入れてもあまり綺麗に入らない、というのが大きな理由なんですよ。

注:日向紋=白く染め抜いた家紋は刺繍紋よりも格が高くなります。

黒留袖や黒紋付は家紋を入れるのが当たり前ですので背中の部分、両袖の後ろ側、両胸部分に白いままで丸く染められていない部分があります。これを「石持(こくもち)」と言います。初めから白く染め抜いているので家紋は綺麗に入ります。ところが色無地はもう染められてしまっているので石持部分に入れるのと違ってあまり綺麗に入らないのです。地色が入っているところに白を乗せるとなると厄介なのはちょっと想像すればなんとなくわかると思います。

私がこの業界に入った30年ほど前にはすでに色無地は元から染められているものでしたが、昔は色見本帳から色を選んで白生地から染めるのが一般的だったようです。とはいうものの現在も店内には何冊も色無地の見本帳があり、昔は当店もお客様に色見本帳を見てもらって色無地を染めていたんだろうと推測できます(注)。このメルマガを書くにあたって倉庫をゴソゴソと探してみましたら出てきたので写真を掲載いたします。なんと昭和56年に作られたものでした。

注:当店は今はリサイクル専門の店になっていますが、元々は父の叔父から父へ、そして私と100年ほど続く呉服店でした。私で4代目らしいのですが一番はじめの創業者については記録もないし、戦争などもあった混沌とした時期で、また店舗を構えておらず行商のようなことをやっていたようでよくわかってません。

表紙
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中身
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昭和56年
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所々、生地が切られているのは同じ見本帳を持っていない染屋さんに発注する時に生地の端っこを切り取って色見本として白生地と一緒に渡していたためで、多くの生地が切り取られていることから昔はたくさん別染めに出していたんだなぁ、ということが推測できます。もしこのメルマガの読者で白生地から染める機会がある場合、写真で見た通りのこのような小さな色見本ですので、この色のまま大きな面積の反物に染めると若干派手な感じに見えてしまいますので要注意。染めあがってからやり直すことはできないので思っている色よりも少し地味な感じでちょうどいいぐらいと覚えておいてください。

白生地から別染めすると、家紋を入れる部分を糊伏せ&防染して生地を染めますので家紋はとても綺麗に入ったのですが、すでに全て染まってしまっていると、ちょっと文字では表しにくいのですがいかにも後からつけました、という感じになってしまうのです。すでに色が載っているところを白くするための顔料で貝から採る胡粉という顔料があるのですが、それとも違うような…なんか家紋だけ浮いたような感じになってしまいます。下に引いてある色を消すために厚く家紋を描かなければならないのであまり綺麗にはいらないんですよ。

というわけで先ほど書いたように家紋を入れても元々セミフォーマルの着物ですので、わざわざあまり綺麗に入らない日向紋を入れる必要はなく、他の地域のことはわかりませんがこちら大阪では刺繍紋を入れるのが主流になっております。昔は石持になっている色無地も販売されていた、とX(旧ツイッター)で教えていただきましたが、残念ながら私は見たことがありません。

なお、シールのように着物に貼り付けることのできる「貼り紋」というのもありますが、これは黒留袖や黒紋付に使うことだけを想定しておりますため、シールの地色が黒になっていて黒以外の着物には付けることができません。少し費用をかければ別注で任意の色の貼り紋を作ることはできますが少々高くなるので30年の呉服屋人生で1回だけしか作ったことはありません。

最後に花紋というのを紹介しておきます。花紋とか加賀紋、伊達紋(注)などと呼ばれ、季節の花をあしらった紋です。一般的な女性の家紋より若干大きめで男性の家紋ぐらいの大きさでしょうか(大きさは特に決まっていません)。昔からある家紋ではなく、任意の花柄などを組み合わせたもので完全におしゃれ用、遊びでつけるものですので花紋が3つ入っていても5つ入っていてもあくまでもおしゃれ用の着物となります。染め抜いたものもあるようですが刺繍で入れられることが多いように思います

注:正確にはこれらは明確に区別されていたようですが、最近は一括りになっているのでここでは一括りで説明します。

色無地はその名の通り全くの無地で色味を楽しむ着物ではありますが、カジュアルで着るにしても花紋が1個-5個入っているとすごく華やかになりますし遊び心が出てきます。以前お客様の要望で5つ紋を入れた時には1つ3万円ぐらいかかってそれを5個でしたので合計15万ほどかかったような記憶がありますが、先ほどネット検索すると1つ13000円、5つ紋でも33000円ぐらいでかなりリーズナブルで入れてもらえそう(オリジナルのものではなく加工会社の見本からデザインを選びます)なのでワンランク上のおしゃれとして挑戦してみるのもいいかもしれませんね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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