割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その2
====================
本日のお題:割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
きくや着物チョイ話は着物好き方々のために参考になることを紹介させて頂く豆知識メルマガです。着物教則本などに載っているものではなく現在呉服業界で営業している呉服店発の生の情報を配信しております。
上記本店サイトに会員登録していただくと、毎週水曜日にご登録のメールアドレスに同じ内容のメルマガが配信されますのでぜひご登録ください(noteの更新はメルマガ配信より1-2日程度遅れます)。
ツイッターでも毎日着物豆知識をつぶやいています。
TwitterID:@gofukunokikuya
きくや着物チョイ話はメール全文そのままご使用時に限り、転載・無断使用可能です。
====================
いつもメルマガをご購読いただき誠に有難うございます。
先日までまだ暖かかったような気がするんですが、いよいよ冬本番になったような気がします。昨日は討ち入りの日でしたし、もうすぐクリスマスですし、2週間ちょっとでお正月ですよ。なんだかコロナに振り回されて1年間何もしていないような気がしますが、来年は2年分頑張りたいですなー。
====================
■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。
https://www.kikuya.shop/view/category/ct47
====================
■割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その2
今週も先週に引き続き「割賦販売法と呉服屋の悪習、売掛金その2」です。呉服屋の売掛金についてご理解いただいていないと今週の内容は理解しにくいと思いますので、先週のメルマガをお読みではない方はnoteにアップロードしておりますのでそちらを先にお読みください。また、先週も書きましたが、お読みいただく前にご注意いただきたいことがございます。
・決して犯罪を擁護、容認しているわけではありません。
・今回の逮捕はその先にある次々販売をやめさせるための別件逮捕という一部報道もありましたが、この販売会社については直接の交流はなく詳しいことは存じ上げませんし、次々販売についても実際に行われていたかどうか直接見聞きしておりませんのでそのことについても触れません。
・上記の割賦販売法に抵触したとされる行為のみについて、あくまでも一般論として書きます。
・法律家じゃないので間違っている部分もあるかもしれません(というか多分ある)ので法律の専門家、もしくはローン会社の法務担当者様からのご指摘はありがたくお受けいたしますので何でもご連絡ください。次週のメルマガで訂正します。
さて、ローン会社というものがない時代から続く歴史の長い商売である呉服店は、例えば30万円のものを販売しても毎月3万円ずつ店に持ってきてもらうといったことが常態化しておりました(売掛金)。これは決して過去の話ではなく、固定客によって支えられている呉服店はローンという新しいシステムをなかなか思うように導入できず、この令和の時代でも継続して行なっている店は多いと思います。売掛金に売掛金を重ね、毎月ずっと途切れずに呉服店に払い続けているお得意さんも珍しくありません。荒っぽい言い方をすればカード会社のリボルビング払いのような状態になっていくのです。
例えば1枚の着物を30万円で買って毎月3万ずつ払っていました。3ヶ月ほど経って残高21万になった頃に「いい反物があるよ」と声をかけられて20万上乗せ。支払いは毎月3万ずつのままでいいよ、と言われてそのまま購入。半年ぐらい経ったらまた反物を勧められて…というようなことを5年、10年と繰り返した結果、店側は残高を把握していますが、お客様はご自分が一体どの分を払っているのかよく分からないといった状態になってしまいます。念のために言っておきますがここに不正はありません。
お客様はパート代で毎月2万-3万程度支払いをし、店側は残高が少なくなったころにまた反物を見てもらい、20万、30万と販売していくことが呉服業界ではごく当たり前のように行われておりました。お母さんがそうするのを見ていたお嬢さんがまた顧客になるので代替わりしても同じような取引となり、家族ぐるみでお付き合いするような老舗の呉服店であればあるほどローンへの切り替えは難しいケースが多々ありました。切り替えの難しいもう一つの理由として高額な着物を購入するのに旦那さんの理解が得られないため、ローン会社から確認の電話や郵便物が来ると困るということもあったでしょう。
もちろん現代の常識からすればいびつな取引ですよ。こんなの呉服店以外ではほぼ見たことありませんし、どちらかといえば高齢の方を相手にする商売のため貸し倒れのリスクも高く、店側としても一刻も早く辞めたいと思っているでしょう。多くの店では銀行から多額の融資を受けつつ、その一方で多額の売掛金をもっており、いわば銀行からお金を借りてお客様にお金を貸しているような状態です。
少し難しいことを言いますが、売掛金は帳簿に載っているだけで即現金にはならない、まさに「絵に描いた餅」なのですが、税法上は現金と同じ扱いで売上として算入されるため利益であり、課税対象になります。手元に現金はないのに税金を払わなければならないため、売掛金が多くなればなるほどジリ貧になっていきます。それでも購入時にローンを組むことをお願いすると、今まで店に毎月お金を持ってきていたお客様からすれば「なんで今までやっていたことをやってもらえないの?」と感じることでしょう。
さて、こういう背景であることを理解して頂いたところで今回の割賦販売法違反で逮捕された件についてお話しします。
今回の逮捕理由は「国の許可を得ずに高額な着物を客に売る際、2回以上に分けて前払い金を払わせた上で商品を渡した疑い」という割賦販売法違反だと報道されました。「前払金」ということは商品を渡していないまま2回以上に分けてお金を払わせた、ということなんでしょうか。もしそのとおりでしたら呉服店としては「それが罪になるのはあまりにも理不尽じゃないの?」と感じます。
先週から延々と書いているのは「売掛金」ですが、分割で店に持ってきて頂く約束で着物を購入して頂いた時に「じゃあ少し入れとくね」と頭金を幾らか入金することはごく一般的に行われていると思います。そしてクーリングオフ期間を過ぎた後にお仕立てにかかりますと40日や50日ぐらいはかかってしまいますが、その翌月に「また今月の分入れとくね」と入金して頂いたら…
はいアウト。国の許可を得ずに高額な着物を客に売る際「2回以上に分けて前払い金を払わせた」上で商品を渡してます。
あくまでも報道での「国の許可を得ずに高額な着物を客に売る際、2回以上に分けて前払い金を払わせた上で商品を渡した疑い」というのを文字通り解釈すれば、上述したような例で逮捕されてしまう風に読めてしまいますが本当にそうなんでしょうか?頭金を入れて、仕立て上がる前に臨時収入があったからもう少し頭金を入れておきます、ということはごく日常的にあり得ることではないか、と思うのですがこれが法律的には「2回に分けた前払金」と解釈されて逮捕(=刑事罰)されるとなると、呉服店に限らず納期まで時間のかかる商品を扱っている店なら「え?そんなアホな」と驚くと思うんですよね。
馴染みのお客さんから「これ取り置きしといてよ!」といわれて商品を預かったままで2回3回と分けてお支払いをしていただくことはありえますし、このメルマガの読者様には考えられないことかもしれませんが着物を買うこと自体が目的で、仕立て上がってきても「預かっといてよ」といわれて納品できず、毎月の約束の金額を入金されることもあります。これが全て逮捕されるような案件なんでしょうか…汗
まさかなぁ、と思って割賦販売法を頑張って読んでみたんですが、少々難しすぎてよくわかりませんでした汗。
一部報道によると、渦中の呉服店の次々販売に対する苦情が消費者センターに多数届いていたものの、取り締まる法律がないため割賦販売法で別件逮捕したとも言われております。販売店側からは「これが罪になるとは思わなかった」というコメントが出ておりますが、これからの逮捕2日、拘留期間20日間で次々販売の実態を掴むのでは、と思っております。しかしながら例え別件逮捕であったとしても、刑事罰になるような行為であったとすれば認識を改めなければなりませんし、こういった行為は慎まなければなりません。
冒頭で書いたように事件の舞台となった店について様々な噂は聞くものの私自身の実体験としては一切ありません。報道を見る限りでは逮捕容疑については非常に驚きましたが、販売方法やお客様への対応についてはここで書けることは何もありません。私の大好きな着物をめぐる今回の事件は非常に残念であり、これから捜査が進んで様々な問題が解明され、着物ファンがより安心して買い物できるようになることを願ってます。
====================
発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
上記URLにて会員登録していただくと毎週水曜日にこのブログと同じ内容のメルマガがご登録のメールアドレスに送信されます。
====================