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必要以上に花の季節を気にするのはやめよう

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本日のお題:必要以上に花の季節を気にするのはやめよう

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■必要以上に花の季節を気にするのはやめよう

今週のお題は「必要以上に花の季節を気にするのはやめよう」です。呉服店をやっていると、着物に関する質問をよくお受けするのですが、ダントツで多いのは「この花の柄は今の季節に着ても良いですか?」というもの。。

巷では着物に花柄が描かれていたらその花の咲く季節にしか着てはならない、というまことしやかなルールを信じておられる方が意外と多くて驚きますが、必要以上に気にする必要はありませんからね。着物の柄と花の柄の相関性についてはかなり拡大解釈されていて、必要以上にルール化されて縛られているなぁ、という印象です。

もちろん、写実的に描かれた満開の枝垂れ桜が上前にどどーんとあるような「いかにも春でございます」といった柄の着物だと、確かに春以外に着るのは二の足を踏んでしまうかもしれません。また、極端な例ではありますが、花ではなくても黒地にオレンジのかぼちゃ柄の帯を2月に使うとか、雪の結晶の柄の帯を5月に使うとなると何となく野暮ったい、という感覚は一般的かもしれませんね。

これは洋服にでもあることで、真夏に「メリークリスマス」と書かれたTシャツを着るのはよほどの野暮かウケ狙いと思われるかもしれませんよね(そんなTシャツが実際あるかどうかはこの際置いといてください笑)。

しかし、誰かに聞かなければ何の花かも分からないほど図案化された花柄であれば、花の季節など気にしなくても良いでしょう。呉服に携わる業界人でも、図案化された花の季節まで気にする人はあまりいないように思います。そもそもその花が咲く頃にしか着られないのなら、着る時期を限定する花柄は安易に描けなくなってしまいます。むしろ、そういう間違ったルールに縛られるのを嫌って種類が特定できないような花にしたり、春夏秋冬の花を並べたりして季節感をなくすようにしているのが現実です。

もちろん、着物の柄で季節を感じるのも着物の楽しみ方の一つですからそれは全く否定いたしません。花を愛でるのと同じように季節に合わせて着物の柄を選ぶ。素晴らしいと思います。お金が湯水のようにあれば…笑。場所もお金にも余裕があれば、たくさんの着物の中から選ぶのも楽しみ方の一つでしょう。しかしながら花の季節合わせた着物を「着なくてはならない」というのなら「ちょっと待った!」と言いたくなります。

季節の花にこだわって選びたいという方はそれももちろん良いのですが、図案化された花の季節なんて気にしない、というのもアリだと思うんですよね。呉服店としてはむしろ、着物をそんな高尚なものだとは考えず、花の季節なんてあまり気にせず気軽にお召しいただきたいのです。

「図案化された花」といってもどんな花が図案化されたのかいまいちわからないですよね。簡単に言えば洋服と同じように考えていただいたらいいと思いますよ。洋服でも気にする方は気しますし、別にどうでもいいじゃない、という方は気にしないでしょう。この柄が洋服についていたら今の季節にお召しになるか、という点でお考えいただければ間違いではないと思っていいと思います。

ではなぜこういった誤ったルールがまことしやかに語られるのでしょうか。

これは私の想像ではあるのですが、おそらく単なるマウントから始まったのではと思うんですよね。着物友達に一目置いてもらいたくてよく知らないのに知ったかぶりをして話したことが、「へえ、そうなんだ、知らなかった」と聞いた人にすんなり受け入れられてしまったのではないでしょうか。一般的な生活から着物が離れてしまった結果、着物とは季節を感じて優美にお召しになるもの、というある種先入観のようなものと結びつき、知らず知らずのうちに「花の季節に合わせた柄の着物を着なくてはならない」という誤ったルールとして伝わっていったのだと思います。

まあ、これも私がいつもいうように「服飾文化は社会が作っていくものであり、右に揺れたり左に揺れたりしながら少しずつ進んでいく」一例なのでしょう。「着物とはこういうもの」という一般的な感覚とたまたま合致した結果、さも由緒正しいルールかのように根付きつつあるのではないでしょうか。。

私は基本、着物のルールは時代の流れによって変化するものだと考えているのですが、今回の花の柄によって着る季節を限定するというルールには反対です。だってそんな拡大解釈されたルールを厳密に守らなければならないなら、季節の移り変わりを楽しむどころか花の柄が敬遠される原因になって、縞柄や花であっても種類が分からないほどデフォルメされた柄の着物ばかりになってしまいます。

着られる季節が限定されるようなルールを呉服屋が消費者に押し付けて、着物をたくさん買わせようとしている!というような意見を頂くこともありますが、これは全くの見当違いです。むしろそんなルールが市民権を得てしまうと、お持ちの着物を気軽に着られなくなって着物民が減ってしまいますし、そもそも勧められたからと言ってどんどん買えるような方はごく少数でしょう。

なので、何の花かわからないようなもの、図案化されたような柄はあまり気にすることなく気軽にお召しいただければ、と思うのです。花が書いてあればいちいちその種類を調べて季節を考えて着なくてはならないというようなことはありません。桜は春だけど、冬にも桜を着て桜が好きな友達を楽しませたいとか、冬にひまわりの柄を着て明るい気持ちで夏を待ちわびる、というのもいいじゃないですか。

着物ってもっと自由で楽しいものですからあまり難しく考えず、楽しんでくださいね。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや

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