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リサイクル着物業界は呉服業界に貢献していない…かなぁ

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本日のお題:リサイクル着物業界は呉服業界に貢献していない…かなぁ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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ようやく涼しくなりましたね。これだけ涼しくなると一気に着物が売れ始めましてありがたいことだなぁ、と思っております。

そして朝晩が冷え込むようになってきて体調を崩す方が多いと思いますのでお気をつけてお過ごしください。まだ少し暑い日もありますので窓を開けっ放しにして寝ると朝に急に冷え込んで風邪をひくというのがいつもの私のパターンなので今年は体調を崩さないように多少暑くても窓を閉めて寝ています。

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■リサイクル着物続々入荷中です!是非ご覧下さい。本店サイトは楽天などのショッピングモール価格よりも5-10%程度お安く提供いたしております。

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■リサイクル着物業界は呉服業界に貢献していない…かなぁ

今週のお題は「リサイクル着物業界は呉服業界に貢献していない…かなぁ」です。ほんの少し自虐が入っております笑。

当店は20年ほど昔は新品のみを扱う店でして、毎月チラシを撒いて展示会を開催しそこそこ大きな売り上げを取っておりました。その後、縁あってリサイクル品を扱い始めて現在の営業スタイルになっております。

当店のある大阪市大正区は、車で15分ぐらいの距離にデパートが立ち並ぶ難波や心斎橋といった繁華街がありますが、この街に呉服店は当店だけですので地元の方がちょっとした小物などが必要な時には急いで駆け込んで来られたり、ほんの少しながら地元のお客様に貢献できているかなぁ、なんて思いながら営業しております。

しかしながら20年前ぐらいからでしょうか、地元密着で頑張ってきた当店ではありますが、生活様式の変化から少しずつ着物需要が落ち込んでいったのと比例して、御多分に洩れず苦戦をするようになってきました。ただただ当店の力不足ではあるのですが、1枚販売して20万、30万というような金額のものはなかなか売れない時代になり、また当時少しずつネット通販という販売スタイルが出始めた頃でしたので当店もネット通販に乗り出し、実物を見ることのできないネット通販でも売れやすい価格帯のものを、と思ってリサイクル品を扱い始めました。

呉服店をやっていると頻繁に「着物を買ってもらえませんか?」なんて消費者から電話があったのもきっかけの一つだったかもしれません。その当時はまだ古物商の免許を持っていなかったので買い取ることはできなかったのですが月に1-2回ぐらい問い合わせがあったような気がします。当時でも買取業者はあったはずなのですが、全く見ず知らずの業者よりも地元で長く営業している店の方が信用があったんでしょうね。

新品商品に加えて少しでも売り上げがあればいいな、なんて軽く始めたのですがいざ扱ってみるとリーズナブルでネット通販とも相性が良く、昔の着物の面白さ、仕入れる時の競り市が楽しかったりで今やほぼリサイクル専門店になってしまいました。まあこれはこれでいいかと思っているのですがたまーにSNSなどで「リサイクル着物を買っても呉服業界には何も貢献していない」というような声を目にするんですよね。

確かにおっしゃる通り、リサイクル品を販売しても着物を作る職人さんや和裁士さんには1円のお金も入りません。以前やっていた新品着物屋で職人さんたちの苦労を目の当たりにしている私としては少し心苦しくもあります。1日に10点20点と販売しているのに業界に貢献できていないと言われればその通りです。

ただね、じゃあ1枚20万円、30万円の着物を一体どれだけの人が買えるかというと、現代ではなかなか難しいというのが実情ではないでしょうか。新品屋時代に紬の着物を販売して裏と仕立てで40万円になり電卓を叩いて「36回払いで1日コーヒー一杯分ぐらいですよ!」とか言いながら自分自身はそんな高価な着物は滅多に書いませんでしたからね。普段仕事で着る木綿の着物はそこそこ持っておりますが、数十万の絹の着物は二の足を踏んでしまいます。もちろん仕事柄何枚かは持っていますけどそんなに頻繁には買いませんし買えません。

今の呉服業界は毎年50億円規模で縮小していっております。確か私が仕事を始めたバブルの頃は6000億ぐらいあったような記憶があるのですが、そこから坂道を転がるように縮小して現在の状況になりました。生活様式の変化や女性が外で働くことが当たり前になったなど、着物を取り巻く状況が当時とは一変して、そんな高額商品がどんどん売れるような状況ではないというのがこの業界の市場縮小という結果に表れているのではないでしょうか。それでも職人さんはなんとか安く提供しようと努力されているのはもちろん存じ上げておりますが、基本手作業の着物の製作はコストを削るにしても限度があるんですよね…。

で、本題に戻りますが、リサイクル着物業界は呉服業界に貢献しているか否かですが、先ほど書いたように毎日着物を販売しているのに着物を作っている職人さんや和裁士さんには1円も入りませんので近視眼的に見れば貢献していないかもしれません。でも全く貢献できていないかと言われると「いやいや、貢献していないように見えるかもしれないけど結構頑張ってるねんで?」と言いたくなります笑。

私はあまりサッカーは詳しくないのですが(オフサイドって何?え?今なんで得点にならんかったの?というレベルの人)、1993年にJリーグが発足した時にある解説者の方が「子供たちがサッカーに親しんでくれることによって、その中から世界に羽ばたく選手が出てくる」と言っていたのが印象的でした。当時は日本がワールドカップに出るなんて夢のまた夢のように言われていましたが、今やW杯でベスト8を目指すところまできました(詳しくないので間違ってたらすいません)。

結局のところ、どんなジャンルにおいても「裾野が広くないと頂上が高くならない」のはごく当然のことでして、数百万人の野球少年の中から突出した選手が現れ、野球発祥の地のアメリカに渡ってホームラン50本以上かっ飛ばすようになりMVPになるのと同じで、まず入口の敷居を低くして数千円の着物から気軽に楽しめるような状況ってすごく大事だと思うんですよ。着物になんとなく興味を持った人がまずは着てみたいと呉服屋に行っていきなり50万の訪問着を勧められて「店長!そんな値引きしてもいいんですか!」的な寸劇見せられて30万に値下げされても逃げますって。

まずは数千円程度で楽しめる着物から親しんでもらって、ある程度着付けをマスターして着物友達ができて外にお出かけするようになり、SNSでいろんな情報を得て「結城紬ってどんなのかな、触ってみたい、着てみたい」と思ってもらうようになるのが先ではないでしょうか。もちろんリサイクル着物で満足する方も多くおられるでしょう。リサイクル着物も十分魅力的なのでそれはそれとして笑、その中から3年に1回ぐらいちょっといい着物を反物からフルオーダーしたいという方も出てくるはずです。

ちなみに通販業界でも「入口商品」というのは大事でして、自分の店の商品を購入してもらって店を認知してもらうためにもお試しのような商品を用意して「まずは買っていただく」というのが重要と言われています。当店サイトには「在庫処分品」と書いた原価を割って販売しているような商品がありますし、プレゼントから会員になっていただいてメルマガを読んでいただくのも広義の「入口」と言えるかもしれません。

このメルマガの読者さんも当店で買い物をしたことがない方は多いでしょう。でもそんなのどうでもいいんです笑。毎週水曜日に何十回、何百回とメルマガをお届けしているうちに「そういやあんな店があったなあ」と思い出してくれるだけで十分成功していますし、ありがたい「お客様」です。

残念ながらこの業界はそういったファンづくりをしてこなかった…というよりもできなかったという方が正しいかもしれません。大きな組合もなければTVCMを流せるような大きな会社も皆無です。昔は私の周りの呉服店が集まって小学校に着付けを教える草の根活動のようなものも行なっておりましたが所詮ごく小さな動きで定着には至りませんでした。小学生向けのきもの文化検定を実施するという計画があると中の人から聞いたことがありますが今のところそういったアナウンスはないですね。

非現実的な話ですが、リサイクル品を入口として「着物を日常的に着る人」がどんどん増えて街中に着物を着ている人が多くなれば、悪目立ちすることもなくなりさらに着物に対する敷居は低くなりますし、初心者が初めて着物でお出かけをするのも一歩踏み出しやすいと思うし、そしてその中から頻繁に高額品を買う方も出てくるかもしれません。

新品の販売と比べて職人さんや和裁士さんに落とすお金は限定的かもしれませんが、まずは着物の入口として、ファン作りの一環として機能しているとは思いますし、将来的にはきっとその中から職人さんや和裁士さんにお金を落としてくれる方も少なからずおられると思うので、まずは着物に興味を持っていただいた方を温かく見守っていただきたいな、と思うのです。

というわけでリサイクル着物屋も頑張っておりますので温かい目で見てください笑。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022

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