高強度インターバルトレーニングが、がんを予防する
アメリカ人の成人のほとんどがもっと運動する必要があると言っても過言ではありません。実際、アメリカ合衆国保健福祉省によると、成人と青少年の約80%が、有酸素運動や筋力トレーニングの1日の推奨必要量を満たしていません。
運動には心臓病、肥満、がんなどの健康問題の予防など、肉体的、精神的に多くのメリットがあることが十分に立証されていることを考えると、これは悲惨な統計です。最近の2つの研究では、高強度インターバルトレーニング (HIIT) が、がんに及ぼす大きな影響が強調されています。
Journal of Physiologyに掲載された研究によると、HIITはがんを予防し、有益な免疫反応を高めることで腫瘍の成長を遅らせることもできるそうです。さらに、2023年にJournal of Sport and Health Scienceで行われたランダム化比較試験では、補助内分泌療法を受けている乳がん患者の心血管フィットネス、生活の質、精神的健康が HIITによって大幅に改善されることが明らかになりました。
研究では、身体活動ががん患者の転帰を改善することが示されています。特に、高強度インターバルトレーニング(HIIT)が大腸がんにどのような影響を与えるかが、調査されています。HIITは、短時間の激しい運動と休憩の繰り返しと定義されています。この研究では、研究者らは20人の大腸がん生存者にHIIT運動セッションに参加してもらいました。1セッションは、最大心拍数の85~95%で4分間の運動を4回行ってもらい、その後、研究者らは参加者の血清レベルを測定しました。
参加者の半数は、HIITセッションの直前、直後、および120分後に血清レベルを検査しました。残りの半数は、HIITセッション導入前と4週間後 (12セッション後) に血清レベルを検査しました。
HIITセッション直後(120分後の安静時を除く)に採取した血液サンプルでは、大腸がん細胞の数が減り、腫瘍壊死因子アルファ(壊死は細胞死を意味する)と呼ばれるサイトカインを含むサイトカイン(感染と戦い炎症を調整する免疫細胞)の数が増加したのです。
研究者らは、「これらの急性効果(HIIT)に繰り返しさらされることは、運動と大腸がん生存率の向上との関係に寄与する可能性があります。」と結論付けています。
言い換えれば、HIITエクササイズを定期的に行うと 、ワークアウト直後に現れる有益な免疫システムの変化に繰り返しさらされることになります 。これは、現在がんの治療を受けている場合でも、単にがんを予防しようとしている場合でも、朗報です。
●毎週の運動ルーチンにHIITをもっと取り入れる
現代人は明らかに運動不足です。しかし、週に数回のHIITセッションを追加することで運動不足を解消することができるのです。正しく行えば、素晴らしいトレーニングになります。家でできる、簡単な自重運動で十分です。スクワットやランジ、さらには「バーピー」(スクワット、腕立て伏せ、ジャンプ)などの運動でも十分です。あるいは1分間全力で走り、1分間歩く、といったメニューを30分程繰り返します。強度や時間は各人の体力に合わせて調整すると良いでしょう。
HIITは、減量にも効果を発揮します。実際、運動後過剰酸素消費 (EPOC) と呼ばれる現象により、HIITセッション中とセッション後に大量のカロリーを消費します。運動強度が高いほど、EPOC効果は大きくなります。