バイオマス研究村と熱き日本人たち二
朝七時に起きる。寝過ごす夢を見る。夢の中では人は夢だと気付くことが出来ない。実は今も夢の中かもしれない。夢と現実の見分け方の一つ、顔をつねるというのがあるが、夢の中で顔をつねったら痛かった記憶がある。人は一日に五つ夢を見るらしい。
九時にホテルの前に行く。みんなに挨拶をし、バスに乗り込む。自転車もバスに乗せてもらう。
● バイオエネルギー村、ユンデ村
一同ユンデ村に向かい、施設の説明、質疑応答。
バイオマス発電の概要をもう一度説明。この村は村一丸となって大学と提携をし、研究している。ボランティアでこのバイオエネルギー施設を運営している。菜種や小麦などのエネルギー作物を作り、エネルギーに変えている。
行政の方々が多いので、質問は技術的なところよりも、いかにして住民との賛同を得るか、採算をどう合わせるか、住民の意見、税務関連などの話に及ぶ。ボランティアのユンデ村専属税理士もディスカッションに参加してもらい、適切な情報を受取ることが出来た。
実験圃場に出る。ライ麦、小麦、菜種などを見る。二〇種類以上の小麦を有機栽培している。土壌に会った穀物を探している。食用ではなく、エネルギー作物として、だ。何万年かけて地中に埋まっていた液状の金ことアラブの宝石油。枯渇し、世界が石油をめぐり争いが起きている。ドイツでは食用油をそのままガソリンとして使い、動く車があるという。藤井理事長が実現したいプロジェクトは滋賀県で回収している廃油を精製し、ガソリンとして利用するシステムを構築することだという。私もそのプロジェクトに参加し、ドイツの視点から一歩でも前進するように貢献したいものだ。
さて、同時通訳の愛梨さん。上手い。ドイツ語の知識よりも、日本語訳の適切さに驚かされる。農業の知識が豊富である。そこで試験農場の小麦の種類で質問を受ける。Triticaleという小麦の種類。
「ケイ!このTriticaleの和訳知ってる?」
と聞かれる。
「ごめん。分からない」
小麦のラテン語はTriticum。ライ麦のラテン語がSecale。あわせてTriticale(笑)。和訳はそのままライ小麦。知っていればよかった。
この研究者はみな土壌学の知識が豊富にある。土壌学はやはり農業の基本。もう少し真剣に学ぼう。
帰りのバス、雨の中走っていると、愛梨さんが一言しゃべり、続いて理事長が
「野口君、一言前に出てしゃべりなさい」
とご指名。私は、
「エコツアーの参加者の方々の熱意が非常に伝わってきた二日間でした。偶然に参加させていただいたけど、非常にいい経験になりました。私もここに参加しておられる方々に負けないように、環境に関してドイツと日本の架け橋となって活躍していきたいと思います。これから共に頑張りましょう」
といった。風呂敷は大きいほうが便利なのだ!!
はっきり言って私は知らないことが多すぎる。というか、知っていることが少なすぎる。バスで藤井理事長と話す。
「バイオマスにっぽんプロジェクトを農水、環境省、財務省と提携してやっていたけど、文科省、などもやっとついてきたわ。官房に知り合いが入ったから、話が進みやすくなった。帰国したらすぐに環境省の役員会。国会議員の固まった頭もほぐさなきゃ。大臣も私のプロジェクトをやっと菜の花プロジェクトと呼ぶようになったわ」
とかたる。藤井理事長は国会議員百人をバックに写真を撮ったことがあるらしい。
ゲッティンゲンに着き、耕太さんと愛梨さんとケバブを食べる。カルペンシュタインマヒャン教授と話す。カルペンシュタイン教授はバイオエネルギー村プロジェクトのリーダー格。今度いろいろ話を聞いてみよう。
フランクフルト行きのバスを見送り、楽しい二日間が終了した。
● 日本にもバイオエネルギー村を
環境に力を入れている大学とは知っていたけど、こんな具体的な施設をすでに市民と協力して実行しているとはしらなかった。化石燃料は限りがあるが、菜の花名のどのエネルギー作物を上手に使えば、燃料問題が解決する。エネルギー転換は今後人間が地球に住む上で避けて通れない課題。ここのバイオエネルギー村の実践がドイツに伝わり、日本に伝わり、アメリカに、オーストラリアに、中国に。世界の紛争も菜の花が解決するのかもしれない。ユンデ村の研究。非常に非常に興味深い。研究成果をどっさり持って帰りたい。そして、菜の花プロジェクトの一つの場所に市民と行政と協力しバイオエネルギー村を建設。ゲッティンゲンで学んだ知識を活かし、化石燃料枯渇問題解決の歩みを進める人になりたいと思った。(菜の花は景観も抜群である。多面的機能で農村活性にも確実に貢献すると思う。)
(エコツアー四方山話)
○ ドイツ語と環境
経済の文章は今はほとんど英語。英語が分からないと経済は読めない。しかし、環境の文章はいまだにドイツ語があるらしい。環境建築士の方がいっていたが、環境の文章を英語に訳してもドイツ語の細かいニュアンスが伝わらないらしい。
(ヤン農場四方山話四)
○ アメリカの親友と家族観
ドイツの家族は非常に仲がいい。家族の絆が強い。ヤンの妹が言っていたのだが、彼女がアメリカに研修に行ったときにアメリカ人の家にホームステイしたそうだ。すると、不自然なことが感じられた。夫婦間、親子間で仲があまりよくないのだ。大学に行くと友達同士も距離があるという。
ドイツに学ぶアメリカ人が言っていた。親友を持つのは気持ち悪い、と。友人関係や家族の絆は強いほうがいいと思うのだが、どうだろう。
○ ドイツの有機農業
ドイツは全農業経営の二〇パーセントを有機農業経営に転換しようとしている。すると有機農産物のプレミアがなくなる。安全な食物が市場に出回るのはいいが、消費者は安いほうを買うと思う。大量生産をしたほうが農業経営は安泰である。農業経営は利潤を最大化するのが一番の目的である。