農場実習in Eime 2

 参与観察フィールドワークの基本はその現地の人と一緒に同じように行動することである。そこからいろいろ発見をする。朝八時一五分にノックがある。おきるとみんなすでに働いていた。パンとチーズなどを食べさせてもらう。(ちなみにここでの滞在中にコーヒーを一滴も飲まなかった。なんて健康的。苦しいものがあるが。)昼まで働く。ヤンと木を積み上げる。共同作業で時間が空いたので、トラクターで畑に出る。
「ここからは君が運転しな。農業実習だ」
 という。青空の下、黄色く輝く菜の花畑の坂を大きなトラクターで上る。夢の中にいるような光景だ。ああ、ここがドイツだ!!
 昼ごはんは豪勢。お米、じゃがいも、赤キャベツ、肉のスープが出る。午後は買出しの手伝いをする。ヤンの狩猟用の銃、テレビのチューナーなどを買う。街観光もする。はっきり言って、この町並みのすばらしさは世界遺産級である。すべての家が二〇〇年くらい前のままだ。レンガ、石の屋根、木組みの家、ここに住めたらなんていいのだろう、と思う。ドイツにきたら、農村に来るべきである。ミュンヘンやノイシュヴァンシュタイン城、ベルリンなどは行かなくて良い。ドイツのすばらしさは、農村に眠る。
 家に戻り、ティータイム。さくらんぼケーキ、アップルパイ、チョコレートケーキなどを食べる。
「うちの母がドイツのケーキに興味を持っているんですよ」
 というと、
「レシピを書いてあげるわ」
 といってくれる。美味しいケーキだった。その後、芝刈りに精を出す。家の庭の手入れ、旧厩舎周りの芝刈りをやる。ふぅ。任務完了したので、庭でくつろいでいると、おばさんがきてくれる。陶芸の趣味について話してくれた。二〇〇個くらいある陶芸の人形。一つお土産にくれた。イギリスガーデニングも趣味の一つらしい。そういえば、私の父がプロデュースしている実家の庭となんとなく共通するものがある。
その後は廃材処理の手伝い。家を壊したときに出た廃材を電動のこぎりで切り、積み上げるという仕事。私がハンマーでコツコツと窓枠をはずしていると、近所で手伝いに来てくれているおじさんがおもむろにハンマーを振り上げ「ドカッ!」と窓にぶちあて、破壊した。
「こつこつやる、それは日本だ。どかんとやる、これぞドイツ流なのだ」
と誇らしげに語る。(それだからドイツ人はパソコン、デジカメなどのデリケートな精密機械が生産できないのだ。とぼやく。)
 夕飯を食べる。ヤンのおばあさんも来てくれた。部屋に戻りしばしば休憩。八時過ぎからヤンの友達のパーティーがあるからついていくことに。
 農業の倉庫を借り切ってのパーティー。寒いが、ビールなどが飲み放題。ソーセージなども食べ放題。ヤンが「イエガーマイスター」と名乗るカクテルを作ってくれた。すると、結構知っている人がいる。うちの学部の人がいるのだ。バスティアンにも会う。バスティアンはうちの隣に住む学生。彼は頭がいい。非常に、いい。頭脳明晰、と一緒にいて思う。兄もゲッティンゲン大学の農学部で学び、いま卒業間近であるという。八〇ヘクタール。豚の家畜経営もしている。家が近いから大学に一緒に行こうといってくれる。
 もう一人の学生は実家で有機農業をやっている学生だ。ドイツは有機農業経営率を二〇パーセントに上げようとする政策がある。今は五パーセント程度だが、徐々に上げていくという。ヤンの父親は
「有機農業経営はためだ。今はいい。出回る有機農産物はすくないから。でも、二〇パーセントにもなってみろ。プレミアが消える。能率の悪い農業経営が残ることになる」
 と否定的だ。しかし、その彼は有機農業を語る。有機農業に転換する農業は転換する間、減った分の収量は国が補償してくれるという。移行期間の補償だ。
 ポーランドに出資する農業経営者。
 有機農業に出資する農業経営者。
 どっちが生き残るか!
 DJが良くないので、あまり誰も踊らず、結局二時前に帰る。

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