農場実習in Eime

 農場実習に行ってきた。前から計画していたのだが、やっと実現することが出来た。

さて、朝から土壌学の講義を受ける。興味の無い分野なので、非常に無味乾燥(Trocken)としている。ふう、三時間に及ぶ講義。講義後はヤンとご飯を食べる。一時過ぎに講義棟前に集合。Exkusionがあるからだ。学部全体が三つのグループに分かれる。バスで移動。午前中の理論を午後実習する。ゲッティンゲンの周りの土壌を見て周る。ここはBuntsandsteinで、Muschelkalkはここ。ガウス塔や城、ゲッティンゲン森などを散策する。なるほど、ところどころで土壌が違う。Gipskeuperなどは壮大な風景。全く興味なかった分野であるが、徐々に惹かれていく。毎週野外実習があるのは、楽しみだ。
五時に終了し、ご飯を食べヤンの家に向う。車で二時間弱の道のり。農場を見て、家に向う。妹のリドゥルケとおばさん、おじさんに会う。おばさん「ようこそ!我が農場へ!」といって迎えてくれる。二一時になると日が沈む。

○ ようこそ、我が農場へ
 さて、私はここで一〇〇以上の質問を受けた。ざっと上げると、
• ドイツの旅行した場所はどこだ
• 高速道路の料金は
• 将来何になるのか
• 稲作のヘクタールあたりのカリウム投入量は
• 稲作の機械化状況を説明してくれ
• 米経営の事情はどうか
• 小麦はどうか、輸入の割合、輸入先、国産は
• 農業用の土地購入価格
• 有機農業経営の割合
• 離婚率
• 家族構成
• 休暇日数、就労時間
• 食文化について説明してくれ(回数、時間、種類、誰とか)
• ドイツと日本はどう違うのか
• 日本人の家族が集まる機会
• 彼女はいるのか
• 車はいくらか、ガソリンの値段は
• 国技は
• 原子力発電の依存度
• 日本語について
• 天皇の名前
• 何故ドイツについて学ぶのだ
 など、ざっと覚えているだけでこんなものだ。いや、まだまだいろいろな情報の発信を求められたのだ。質問の連続であった。
 さて、先ずは来るまでサトウダイコン(Zuckerruebe)畑に行く。五週間前に植ええたとか。Sommerweizen(夏小麦)の畑も見る。家に戻り、夕飯を共にする。チーズ、肉、バター、パンなど典型的なドイツの料理を出してくれた。
「お箸が無いのよ。ごめんなさいね」
 といわれる。スープを箸でどうやって食べるのか不思議に思っていた。お椀を口につけるのだ、というと驚いていた。コップ以外は食器を口につけないドイツ人にしてみれば当然か。
 ヤン(この日記で、ヤンは中国人とドイツ人の二人がいる。ここではドイツ人の方)の妹とお母さんは寝てしまった。そして、私とヤンとおじさんと農業について話す。

<Hennies農場メモ>
 思い出すままに書くことにする。ドイツはEime農場、規模は百二十ヘクタール。
• サトウダイコンが二十二ヘクタール
• 小麦が八十ヘクタール
• 西洋菜種が五ヘクタール
• 休耕地が一三ヘクタール(農地の一〇~三〇パーセントを休耕しなければいけないのはドイツの法律)
 年間収量は
• サトウダイコンが六〇トン
• 小麦が九トン
• 西洋菜種が三.五トン
 市場価格はトン当たり
• サトウダイコンが百十ユーロ(一ユーロが一三三円)。
• 小麦が一二〇ユーロ
• 菜種は二三〇ユーロ
 そのほか、国から年間ヘクタールあたり直接支払いの所得補助が入る。
• 小麦、菜種、休耕地には三五〇ユーロ
• サトウダイコンは支払いが無いという。
 土地の輪作は小麦、小麦、サトウダイコン。

 農業経営が所得の半分。農業外所得が半分。第一,五次兼業農家ですね。
 農業外所得源は運輸業。
• 収穫したサトウダイコンを工場へ運ぶサービス
• 人糞(!)を農場に運ぶサービス(年間八〇〇〇トン)
• 製紙工場廃棄物の再利用一五、〇〇〇トンを農場に配るサービス
• サトウダイコン産業廃棄物を農場に運ぶサービス(二五,〇〇〇トン)
 人糞の農業用転用は衛生上の問題でドイツでは禁止されていると思うのだけど……。
 
 ビールを片手に語る。盛んにタバコを私に勧める。吸わなかったけど。ヤンも興味深そうに聞いている。ビールはドイツが誇るNo一ビール「Wacsteiner」。疲れていたので味が分からない。おじさんが肘をつき、タバコをふかし、笑顔で続ける。

☆ ポーランドについて
 「農業はビジネスである。チャンスがあれば多少のリスクを省みず飛び込み投資するのが変わり行く世の中で生き残る基本である」といい、ビールをおかわり。
「ポーランドに投資している。
• 投資額は約一ミリオンユーロ(一億三千万!)。一九九七年からはじめたビジネス。
• 一五〇〇ヘクタールを買い込んだ。
o サトウダイコン三五〇ヘクタール
o 冬小麦六五〇ヘクタール
o 夏小麦八〇ヘクタール
o 菜種百十ヘクタール
o とうもろこし二〇〇ヘクタール
o 残りは休耕。
 (一五〇〇ヘクタールといえば、日本の一般的農業経営規模の一〇〇〇倍以上だ!)
• 一五人のポーランド人農業経営補助人員を雇っている
o 一人は監督として
o 事務が一人
o 機械屋が一人
o 農業用トラクター運転手が八名
o 三名は夜の見回りである
• 年間二十万リットルのディーゼルを消費している。(ちなみにドイツでは農業用のディーゼル使用は免税される。一ユーロが〇,八ユーロになるとか。トラクター一台あたり年間四七〇〇〇リットルを消費する。)
• もちろんポーランドの小麦をドイツに持ち込むことは出来ない。税関でブロックされる。では、なぜ今ポーランドに投資するのか。それは二〇〇四年に法律が改正されて、EUの国境が薄くなるということだ。つまり、物資の運輸が自由になり、ポーランドの農産物をドイツで売れるのだ。
• いま、ポーランドの土地は安い。ドイツは一haあたり二〇,〇〇〇ユーロなのだが、ポーランドは一,〇〇〇ユーロで買える。借用もドイツが年間ヘクタールあたり五〇〇ユーロなのだが、ポーランドは二五ユーロだ。でも、土地がまだ悪い。ドイツのPHは七,二なのに、ポーランドは四.六だ。ドイツの農業人口率は全体の二~三パーセント。ポーランドは二八パーセント。平均耕地面積はドイツは三四ヘクタール。ポーランドは五ヘクタールだけ」
 と、ポーランドについておじさんは熱く語る。なるほど。面白い投資だなぁ。
 「肥料は窒素がヘクタールあたり二二〇キロ。リン、カリウム、カルシウムは投入しない。人糞を使っているから。九月一八日から一二月中旬までサトウダイコンの工場がフル稼働する。一億トンのサトウダイコンが運ばれる。サトウダイコンから砂糖は総量の一七.五パーセントを取り出すことが出来る。サトウダイコンが一番お金になる。家畜はお金にならないから撤退。じゃがいもは湿気の多いここの土壌と相性が悪い」
 などなど、いろいろ教えてくれる。その後、ヒルデスハイム農協の資料をくれる。平均の労働力、経営規模、家畜規模、サトウダイコン率、穀物収量、売値、租収益、税金、投資などがのっている。農業経済を勉強してきたからか、こういう数字のほうに興味が湧く。農薬の種類、作付けのタイミング、病気などはあまり興味が無い。
 眠いので寝る。来客用の寝室は非常に広い。トイレ、バスがついている。この家は四〇〇年以上住んでいるという。一〇〇年以上前の嫁入り道具などがある。凄い家。シャワーを浴びて熟睡。

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