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思考図書館

イタリアで医学を六年勉強した実はスラブ人のブレンディーと散歩する。天気がいい。カフェで私には珍しく桃ジュースを飲む。帰ってから一眠り。食事をする。あやとくんと語る。ギュンター・グラスの『Mein Jahrhundert』を輪読する約束をする。現代史に弱い私。世界史なんぞには全く持って意見を持っていない。これが意外と外国人と話すとき困る。世界史は世界共通の教養の一つ。彼らとの歴史の話になるとさすがに厚顔無恥の私の無知さと無智さに顔から火を出し穴があったら入りたくなる。あちぃ。ちなみにギュンター・グラスはノーベル文学賞受賞者らしい。

 
● 何を探しているのか忘れたときに、目的のものが見つかることは非常にまれである。
 これは私が大学の最初この頃に気付いた概念。誰かの引用でも無い私の唯一オリジナルの考えである。(いつもは大抵人の考えを使っているのだが。)
 体験したことがあるだろうか。物探していて、ふと考えると何を探していたか分からなくなること。思い出すのが先か、そのまま探し続けるか。かたや、そのまま探し続けていて、あるものを見つける。そして、気が付く。
「ああ、私はこれを探していたのだ」
もしくは、何を探していたのか探す前に先に思い出す。
 「ああ、私はこれを探していているのだ」と。
 たいていの人は後者だろう。探すものを知っていたほうが早い。
 以前ならここで考えが止まった。しかし、ちょっと踏み込んでこの考えを一般化してみよう。

 人生で人は何を探すのか。人生の探し物を忘れるときがフとある。そこで、じっくり立ち止まる人はいるかなぁ。そして、
「ああ、私はこれを探しているのだ」
 と気付けるものだろうか。いや、そんな人は少ない。
 探し物が見つかって、
 「ああ、私はこれを探していたのだ」
 と最後のほうに気が付く。
• 幸せを探す。人生における幸せとは。これも難しい。努力して得る幸せが一番幸せ。急に売るほどあるお金を手に入れたとする。するとその人の人生は幸せか。いや、一概にそうとも言い切れない。家族とのふれあい?仕事の成功?

• 健康を探す。健康は何よりも大切だ。健康のうちは健康の大切さを見つからない。健康を損なうと健康を求める。肺炎になるとタバコをやめる。アル中になると酒をやめる。太るとやせたくなる。運動不足になって健康診断の結果が気になりだすと、健康を求める。健康を求める人生、これもいいかもしれない。

 ??まだ、この答えを出すには早すぎる。きっと、ソロソロ私を待っている超多忙で人生の勝負期を乗り越え、やっと気が付くのだろう。ああ、私はこれを探していたのだ。十年後にもう一度書くことにしよう。

● 日本経済を立て直す方法
 私の友人のひとりは何を思ったか低迷する日本経済の解決策を提案する。
 日本の経済を立て直す方法。
 友人「金利をマイナスにする。一パーセントを切った金利はもはや機能を果たしていない。来年の四月からマイナス四パーセントにする。預金利率をマイナス四パーセントにすれば、誰も預金しなくなる。すべてお金を銀行から引き出す。だって預けているとお金がなくなるから。貸金利率も同様にする。すると、借金をしても徐々に借金がなくなっていく。みんなお金を借り出す。手元に絶え間なくお金があると、限界消費性向が倍増。バブルのごとく市中に金が溢れる。財布にお金が溢れる。景気がよくなる。物価が上昇しデフレ対策ばっちり。給料も上がる。投資も増える。株も上がる。強い日本が立ち直る」
私「……施行直後に全ての銀行と金融会社は店を閉めると思う」
「ドイツのごとく開店法も改正しておこう」と、友人は濃い睫毛に囲まれて虹彩が蜂蜜色に輝き、微笑しているように見えはするが、ムッと反撥している眼の表情でいいかえした。

● 外国人の人権
 ヤフーのニュースを見ていたら興味深い内容。
「外国人の人権を守るべき」
 と考えている日本人は五四パーセントであり、どんどん減っているという。外国人の不当な扱いを容認する意見が目立っているとか。
 ドイツに来る前にドイツ語の先生と話したことがある。日本はドイツと似ている。血統主義と現地主義とがある。血統主義とはある一民族が国を支配するということ。現地主義は現地に住んでいる人が国を支配するということ。フランス、アメリカ、イギリスとかは現地主義であり、ドイツ、日本は現地主義である。
 日本は日本人のものである。外国人は日本人ではない。国籍をとるのも難しいし、もし、肌の色の違う外国人が日本の国籍を取れたとしても、彼が日本人である、と周りが認めにくいと思う。
 ドイツもそうであったし、そのために過ちを犯した。
 ドイツにいたとき、あるインタビューを見た。
 レポーター「どこから来ましたか?ガーナですか?」
 黒人の幼稚園児「ストゥトゥガルト(ドイツの都市)です」
 これを見て私の周りは笑う。日本に置き換えると分かりやすい。黒人の人が日本人であると認められ、同等の扱いを受けることは難しい。
 徐々に日本に来る外国人は増えてくると思う。何せ経済規模がアジアの中で抜群にいい国であるから。それにどう対処するか。昔のドイツのようになるのか。仕事が無いのは外国人労働者のせいだ!とかね。ヤフーの話は笑い事では無いのかもしれない。そのうち直面する問題だ。どう対処するか、それは日本の先輩かつ立場が近いドイツの体験がヒントになるのかもしれない。

 大江健三郎を読んでいる。表現の豊かさに驚く。これを私の友人はドイツ語で読んでいるのだが、どういう人が独訳をしたのだろう。おそらく凡人による完全独訳は不可能であろう。日本とドイツの両方で人生を費やした大文豪がなせる神業だ。森鴎外がEhlingを見事に訳したように、私も何かやってみようかなぁ。

 明日は世界で一番美しい街ゴスラーに行く。天気は最高であるらしい。楽しみだ。

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