見出し画像

[日刊]米国債売りが世界株安へ、ドル円は介入あれど160円台へのリスク高まる

10月4日(水)のレポート。


▼米国

今朝の米株式市場はS&P500種株価指数が前日比-1.37%と大幅安だった。

8月の米求人件数が発表され、エコノミストの予想を上回り予想外に増加したことが、最近の金利上昇圧力をさらに高めて米国債売りが加速したからだ。

参考:米求人件数、8月は予想外の増加-ホワイトカラーの求人が急増

以前から米長期金利は上昇し、下がることは無いと書いてきたものの正直ここまでの上昇は想定していなかった。

一時的に落ち着いた米政府閉鎖の問題も引き続き長期金利上昇の材料となり得る状況で、マッカーシー下院議長が解任動議が可決されたことで、大手格付会社ムーディーズが米国債を格下げするリスクも高まりつつある。

関連:マッカーシー米下院議長の解任動議可決 米史上初

また、市場が混乱に陥り、世界的な株安の流れが続く中で当局者たちはあとひと押しが必要だと言わんばかりにタカ派な発言をメディアに流している。

アトランタ連銀のボスティック総裁は「利上げを急ぐつもりはないが、利下げを急ぐつもりもない。長期にわたり据え置くことを望む」と発言。

クリーブランド連銀のメスター総裁は「次回会合でも、最近の会合と同じような経済状況であれば、私なら追加利上げを行うだろう」と11月会合での利上げを支持した。

参考:アトランタ連銀総裁、政策金利を高水準に「長期間」据え置くべきだ
参考:クリーブランド連銀総裁、11月の追加利上げ支持-米経済が安定なら

一方で、イエレン財務長官は高金利水準を長期的に据え置くことが本当に必要なのか疑問視していると述べた。

参考:イエレン氏「決して既定路線ではない」-金利の長期高止まりシナリオ

昨日に続き要人の発言が多くニュースに流れているが、トータルでは全体的に年内もう1回の利上げと高い政策金利水準を長く据え置くという見方が優勢だろう。

米10年債利回りは4.88%まで上昇し、米30年債利回りは2007年以来の5.0%を越えた。

日本の国債を見てもわかり通り、米国債の急激な下落(利回り上昇)が世界の債券にも影響を与えて広がっている。ブルームバーグの指数によれば、米国債と世界の債券の相関が2020年3月以来の高水準となっている。

それだけ米国債利回りの上昇は世界の金融市場に不安を与えている。

関連:米国債の売りが世界の債券に広がる-米10年債利回り5%超が視野に

▼日本

米国株安を受けて4日の東京株式市場でも売りが優勢となった。

日経平均株価は前日比で-711.06円(-2.28%)の30,526.88円で引けた。実に5ヶ月ぶりの安値だ。ドルベースでもバフェット効果が現れ初めた4月頭の208.80ドルを下回った。

売られている理由について様々な見解が見られるが、今年これまで上昇してきた分の利益確定売りと昨日も書いたように機関投資家の機械的な売りが重なったこと、日米金利上昇からリスクオフのムードが一気に高まったことなど、挙げられている理由全てが重なっているように思う。

ただ、中長期的に売られる理由は私としては見当たらないため、やはりこの下落は日本株の買い場と捉えている。

日本株下落のリスクに当たるのは足もとでは、
・マイナス金利解除
・YCC撤廃
・日米の景気後退
・インフレ抑制不能
・円高
あたりだろうか。

このうち、マイナス金利とYCCが無くなり、金融政策の正常化があったとして、日本企業の資金調達コストにどれだけの悪影響があるのかを想像してみてほしい。

政策金利を仮に0.5%や1%に引き上げても、依然として企業の借り入れコストは低い。10年債利回りが1.5%になってもまだまだ健全な範囲内だ。

だから、米国債利回り上昇とYCC撤廃圧力から日本の長期金利が多少上がろうとも、多額の借入でレバレッジをかけまくっている企業でなければ業績への影響は軽微。にも関わらず、連日売られまくっているのは中長期で優良企業の株式を保有するスタンスの方であれば好機だろう。

もちろんこの後もう一段の下落があるかもしれないが、底はどこにあるか見極めることは難しい。

だが、売られているのが企業の実力に関係なく、一時的な外部要因であれば下落幅も限られるし、徐々に買い進めていくのが賢明と判断している。

というわけで、今年の残りNISA枠を今月来月で埋めるべく、お買い得な銘柄を探していく。

▼為替

本日は特に為替のニュースが多い。

昨晩1ドル 150円を付けた後、一瞬にして147円台まで急騰した。

為替介入観測もあるが、神田財務官は介入の有無についてはコメントしない方針のため審議はまだわからないが、トレーダーの機械的な売りが重なっている可能性も無きにしもあらず。

関連:円相場 一時1ドル=150円台 財務官“介入有無コメント控える”

乱高下を繰り返した後は149円前後で推移し、記事執筆時点の17時現在は148.85円となっている。

介入警戒があることに加えて、日本の10年債利回りが一時0.8%を付けても日銀が臨時オペを入れなかったことも若干の円高要因として機能しているかもしれない。

しかし引き続きファンダメンタルズとしては、円安ドル高の方向にしか材料はなくこのまま米国長期金利が5.0%に到達、突破をすれば、日本国債10年利回りが1.0%の上限に達してしまう可能性がある。

日本の10年債が1.0%で抑えつけられている間に、米長期金利がさらに上昇をするならば、もはやドル高を止めるためにFRBの利下げしかなく、それには少なくとも半年以上の期間が空くと見られる。

そうなってしまっては、ドル円は1ドル 155円、最悪の場合には160円といった水準まで突き進む可能性すらあるだろう。

それではまた明日!

マガジンの紹介

平日:米国、日本、中国、為替、債券、コモディティについて動向をまとめています。気になるニュースやネタについての解説など。

特に日米国債の金利動向について詳しく追っています。

土日:週間展望や自分の資産運用について綴っています。

フォローして頂けると励みになります!

ニュースメモ

■米国

アトランタ連銀総裁、政策金利を高水準に「長期間」据え置くべきだ

米アトランタ連銀のボスティック総裁は3日、米金融当局はインフレ率を目標の2%に戻すため、政策金利を高水準で「長期間」据え置くべきだとの考えを示した。
ボスティック総裁はアトランタで行われたイベントで「利上げを急ぐつもりはないが、利下げを急ぐつもりもない」とした上で、「長期にわたり据え置くことを望む」と述べた。

クリーブランド連銀総裁、11月の追加利上げ支持-米経済が安定なら

メスター総裁は3日の電話会見で記者団に対し、「次回会合でも、最近の会合と同じような経済状況であれば、私なら追加利上げを行うだろう」と語った。

米求人件数、8月は予想外の増加-ホワイトカラーの求人が急増

8月の米求人件数は予想外に増加した。ホワイトカラーの求人が急増したことが主因で、労働需要の底堅さを浮き彫りにした。
米求人件数は961万件に増加
全てのエコノミスト予想を上回る
エコノミスト予想の中央値は881万5000件
前月は892万件(速報値882万7000件)に上方修正

FRBは来年「劇的に」利下げ、ステート・ストリートの逆張り戦略

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、世界の債券市場で急速に織り込みが進む高金利の長期化見通しに対して逆張りの戦略を採っている。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの最高投資責任者(CIO)、ローリ・ハイネル氏はインタビューで「フェデラルファンド(FF)金利は来年、かなり劇的に低下する必要がある」と指摘。「少なくとも4回の利下げがあると想定している。そのため(利下げ幅は)100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、最大で200bpもあり得る」と述べた。

マッカーシー米下院議長、解任の瀬戸際に-動議阻止の手続き否決され

米下院は3日、マッカーシー下院議長(共和)の解任動議を阻止するための手続き上の採決を行い、218対208で否決した。議長と支援者が求めていた手続きが否決され、保守強硬派が議長を近く解任できる力を有していることが示された。

マッカーシー米下院議長の解任動議可決 米史上初

米下院は3日、ケビン・マッカーシー下院議長(共和、カリフォルニア州)の解任動議を可決した。野党・共和党の保守強硬派に加え、与党・民主党の議員らが賛成に回った。米国で下院議長の解任動議が可決されるのは初めて。

米下院議長の解任動議可決 “歴史上初” 政府予算案で対立

イエレン氏「決して既定路線ではない」-金利の長期高止まりシナリオ

イエレン米財務長官は3日、米経済が想定外に底堅いことで、投資家からはインフレ鈍化の要件は何かとの疑問が出ているとした上で、そのために長期にわたって金利の高止まりが必要なのか、自身は疑問視していると述べた。

米新車販売、7-9月はGMとトヨタが2桁の伸び-逆風も勢い持続か

7-9月(第3四半期)の米新車販売台数はゼネラル・モーターズ(GM)とトヨタ自動車が2桁の伸びを記録した。10-12月(第4四半期)が始まる中、自動車需要が引き続き堅調であることが示された。
業界関係者の多くは、デトロイトの自動車メーカーのストライキや借り入れコスト上昇といった逆風にもかかわらず、累積需要によりこの勢いは年末まで続くと予想している。

米住宅は割高、手を引くウォール街

米下院議長の解任、さらなる混乱招く-政府閉鎖回避で新たなハードル

マッカーシー米下院議長(共和)の解任動議が3日、賛成多数で可決されたことで、下院共和党は権力闘争の状態に陥った。だが議会は現在、連邦政府機関閉鎖を回避するためのつなぎ予算の期限を11月17日に控えているほか、懸案のウクライナ向け支援の承認もまだだ。さらに先を展望すれば、来年11月には大統領選も行われる。

米スタートアップ投資額、7〜9月29%減 5年ぶり低水準

安全重視のクオンツ投資がアウトパフォーム-財務健全性が懸念材料に

米優良企業の資金調達コストが2009年以来の水準に急上昇する状況にあって、クォンツ投資を手掛けるウォール街のトレーダーは米企業の財務健全性を懸念し始めている。

■日本

需給ギャップ、4〜6月はマイナス0.07% 日銀推計

日銀は4日、日本経済の需要と供給力の差を示す「需給ギャップ」が2023年4〜6月期にマイナス0.07%だったとの推計を発表した。マイナスは13四半期連続となる。ただマイナス幅は1〜3月期(マイナス0.41%)から縮小した。内閣府が公表した別の推計ではプラスに転換しており、需要不足は解消しつつある。
需給ギャップは一般にプラスだと需要超で物価には上昇圧力が働きやすい。反対にマイナスだと物価が下がりデフレに陥りやすいとされる。
内閣府が先行して公表した需給ギャップは、同じ4〜6月期でプラス0.1%だった。内閣府と日銀では推計方法が異なる。両者の水準感に差が出るのは珍しくはない。

国債は落ちるナイフか 日銀と市場、再び攻防戦へ

バフェット効果消えたドル建て日経平均、日本株投資意欲の陰り懸念

海外投資家のパフォーマンスを測る際の一つの目安となるドル建て日経平均は、6月14日に241ドル台まで上昇した後に下げ基調となっている。4日終値は204.59ドルとなり、バフェット氏の見解が相次いで伝えられた4月11日終値の208.80ドルを下回った。

■中国

中国のオフィス空室率、ゼロコロナ下より悪化

中国のオフィス空室が新型コロナウイルスを徹底的に抑え込もうとした「ゼロコロナ」政策下よりも悪化している。景気回復がもたつくなか企業はコスト削減を続けており、オフィスの需給バランスが大きく崩れた。不動産業界は住宅の取引低迷も相まって二重苦の様相を呈している。

■ユーロ圏

ECBシムカス氏、インフレはなお多くの抵抗線に直面

欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのシムカス・リトアニア中銀総裁は、インフレ率を目標に戻すために必要であれば、ECBは金利を景気抑制的な水準に長期間とどめる必要があるとの考えを示した。

ECBのインフレ目標に達していない、まだ仕事残る-レーン理事

欧州中央銀行(ECB)チーフエコノミストのレーン理事は3日、政策金利を現行水準で据え置くことが基本シナリオだが、インフレ抑制に向け手綱を緩めることはできないとの考えを示した。

■為替

円相場 一時1ドル=150円台 財務官“介入有無コメント控える”

3日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカの金融引き締めが長期化するとの見方から円安が一段と進み、円相場はおよそ1年ぶりに一時1ドル=150円台まで値下がりしました。その後は円を買い戻す動きも出て乱高下しました。
財務省の神田財務官は4日朝に記者団の取材に応じ、日本政府による市場介入があったかどうかを問われると「市場介入の有無についてはコメントを控えます」と述べました。

円が対ドルで150円台に下落、日米金利差拡大で-高まる介入警戒

円は一時1ドル=150円08銭まで下落。これは昨年10月21日以来の水準で、当時は151円95銭と32年ぶりの水準まで円安が進み、政府・日本銀行が円買い介入に動いた。

為替介入巡り神経戦 深夜の円急騰、疑心暗鬼で増幅

外国為替市場で、為替介入を巡る市場と政府の神経戦が激しくなっている。3日深夜には対ドルの円相場が1ドル=150円台から147円台まで急騰する場面があり、市場では為替介入の観測も流れた。政府は為替介入にはコメントしない方針で、介入の有無を巡り投資家の疑心暗鬼は当面続きそうだ。

■債券

米国債「最悪の日」の一つか、10年利回りも5%視野-金利出口見えず

米国債市場にとって、3日は過去1年で最悪の日の一つに数えられる。30年国債利回りは2007年以来の高水準に急上昇した。
8月の米求人件数が予想外に急増し、 米連邦準備制度による利上げが終わっていないとの観測が強まり、売りが加速した。

米投資適格級債券の利回り、2009年以来の高水準-米追加利上げ観測で

米投資適格級債の利回りが2009年以来の水準に跳ね上がっている。米金融当局者が年内追加利上げの可能性と政策金利を長期間にわたり高水準で据え置く方針を示唆していることが背景にある。
米投資適格級債の平均最低利回りは6.15%、昨年の高水準を抜く
米国債売り継続で利回り2007年以来の高水準、スプレッド拡大圧力に

長期金利が10年ぶり高水準、スワップ金利1%乗せ-日銀政策修正観測

4日の債券相場は下落。長期金利が0.79%と2013年9月以来、10年ぶりの高水準を更新した。日本銀行のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の影響を受けにくい10年物の円スワップ金利は1月以来の1%台に上昇した。

5年国債利回り0.335%に上昇、13年7月以来の高水準-政策修正警戒

4日の債券市場で新発5年国債利回りが0.335%と、2013年7月以来の高水準を付けた。米国の長期金利が約16年ぶりの高水準を更新したことや日本銀行による金融政策の早期正常化への警戒感が根強く、売りが優勢だ。

揺れるクレジット市場、FRB当局者発言や強めの米指標で痛み増す

米投資適格債の平均最低利回り(YTW)は2日に6.15%と、昨年の高水準である6.13%を上回り、2009年以来の水準に達した。クレジットスプレッドは、7月に記録した今年の低水準から11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大した。ボラティリティーの高まりで米国債利回りが上昇し株価が下げる中、3日には少なくとも2社が起債を見送った。

債券トレーダー、数週間以内に10年物米国債利回り5%超を見込む

米国債の下げが拡大する中、過去1週間の金利オプション市場ではトレーダーが新たなリスクに備える弱気ヘッジを多数購入した。10年物利回りはアジア時間4日、2007年以来の水準となる4.85%まで上昇した。予想以上に強い米労働市場データを受けて、連邦準備制度が高めの金利を長期化させるとの見方が強まり、前日に続いて利回りが上昇した。

長期金利、0.8%に上昇 13年8月以来の高水準

4日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りが上昇(債券価格は下落)し、一時0.8%を付けた。13年8月以来およそ10年ぶり高水準。3日の米債券市場で米長期金利が07年以来となる4.8%台に上昇するなど、海外市場の金利上昇が日本にも波及している。

セブン&アイ、社債2000億円

セブン&アイ・ホールディングスが2000億円規模の普通社債の発行を準備していることが3日、わかった。社債発行は2020年12月以来約3年ぶり。年限が3年、5年、10年を中心とする複数建てで、10月下旬の起債を予定している。このうち1300億円は23年12月に償還予定の社債の借り換えに充てる。金利の先高観がくすぶるなか、企業の高水準の社債発行が続いている。

米国債の売りが世界の債券に広がる-米10年債利回り5%超が視野に

米10年債利回りは今週4.85%まで上昇した。世界の債券と米国債についてのブルームバーグの指数の相関は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が襲った2020年3月以来の高水準に達している。

米30年債利回りが5%に到達-2007年以来

世界的な国債の売りが止まらない中、30年物米国債利回りが4日、2007年以降で初めて5%を超えた。
米30年債利回りは9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の5.01%。10年債利回りは8bp上昇の4.88%を付けた。

米国債と米ソブリン格付けにリスク高まる、マッカーシー下院議長解任

4日のアジア市場では、マッカーシー議長解任をきっかけに金利高止まりや債券の伝統的なリスク・プレミアムの復活への懸念が強まり、米国債相場は下げ幅を拡大。米国債利回りは今週急上昇しており、ストラテジストは米議会の権力闘争が債券市場の動揺を再燃させかねないと指摘している。

■コモディティ

LME銅が一時8000ドル割れ、5月以来-米国の高金利長期化懸念

米国の高金利長期化を巡る懸念から、世界の金融市場でリスクオフの地合いとなる中、LMEの銅相場は一時、1トン=8000ドルを割り込んだ。同水準割れは5月下旬以来。

OPECプラスの供給引き締め、緩和の兆し見られず-今週に閣僚会合

石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」は、4日に合同閣僚監視委員会(JMMC)を開き、世界の石油市場を検証する。原油価格がバレル当たり100ドル近くに上昇する中で、OPECプラスに過熱する相場を冷やす意向は一切なさそうだ。

■その他

ドコモ、証券業に参入 マネックス証券を子会社に


サポートを頂くことがありましたら、主に投資資金としてありがたく頂戴しますm(_ _)m