[日刊]日銀会合で植田総裁がタカ派にならざるを得ない理由
9月のFOMC会合を終えて休み間もなく、明日22日には日銀会合の閉幕と共に植田総裁の記者会見が開かれる。
7月の日銀会合では前夜に日経でリークされた通り、YCC柔軟化がサプライズ発表されたことが記憶に新しい。
その後、日本国債の利回りは以前よりも機能度が増し、イールドカーブの歪みも解消されつつあり一定の成果が出ているように思う。
今会合では前会合のYCC柔軟化のように大きな変更はなく、無風との見方が大方を占める。政策内容に変化がない場合の注目は、記者会見を含め植田総裁がどこまで踏み込んだ発言をするかだ。
9月9日に読売新聞に掲載されたインタビューによって、植田総裁が年内にもマイナス金利を解除するのではないかという憶測が強まり、その後火消し記事がブルームバーグから出たが、インタビュー前後では市場のマイナス金利解除見込みは前倒しになっている。
そしてなぜこのタイミングであんなインタビューでの発言をしたのかと言えば、行き過ぎた円安を止めるためだと考えられる。
7月のYCC柔軟化前のドル円は7月27日に138.8円ほどだったが、読売新聞の記事が配信される前日の9月8日には147.8円まで円安が進んでいた。
1ヶ月半で約7%も円安が進んでいることになる。
しかもこの間に米10年債利回りは4.01%から4.25%へ上昇、日本の10年債は0.43%から0.65%へ上昇している。もう少しで米国の利上げは終了と思われており、将来的な利下げと景気鈍化で米長期金利が低下し、YCC柔軟化で日本の長期金利は上昇することで日米金利差が縮小すると考えていたのに、予想外にYCC柔軟化前よりも金利差は拡大してしまっているのだ。
こうした背景の中、本当であればもう少し金利上昇ペースを抑えたいハズの日銀だったが日本の長期金利が急ピッチで上昇する中でも臨時オペで抑えつけることが出来なくなっている。
最後に臨時オペを入れたのは8月3日の10年債利回りが0.655%付近まで上昇した時だった。その後、多くの投資家がいったんの目安としていた0.7%をなんなく突破し、ついには0.74%にまで上昇している。
"0.5%を目処"と言いながらも1.0%まで許容範囲を拡大してから0.25ポイントも長期金利が上昇したわけだが、長期金利を今抑えつければ、米国長期金利上昇が進んだ場合により金利差が意識され、円安が進んでしまう。
だから日銀は長期金利の上昇をただ見守ることしかできない。
長期金利が上昇すれば、金融緩和の効果が少なからず薄まることになるため、急上昇することは避けたい向きもあるだろう。
しかし悪いことに、昨晩のFOMC会合でFRBは6月の予測よりもさらに長い期間を高金利水準で推移させることを示唆した。
すなわち、日銀のマイナス金利解除やYCC撤廃が遅れれば遅れるほど、以前よりもさらに日米金利差が大きく開いた期間が長く続くことになる。
円安、日米金利差拡大、日米の大きな金利差の長期化、こうした要因が相まって、植田総裁はタカ派発言をせざるを得ない状況だ。
ここでハト派姿勢を強調すれば、さらに円は売られていよいよドル円150円突破が見えてくる。そうなると輸入物価の上昇は一過性で済まなくなり、国民の生活が苦しくなることは勿論、いよいよ本格的なインフレ対策が必要になってくる。
タカ派姿勢を強調すれば、長期金利は上昇してしまい緩和効果が薄れるリスクはあるものの一時的には円高材料となり、日米金利差も多少なりとも縮小できる可能性がある。
ハト派とタカ派、どちらの姿勢を強調したほうが得られるメリットが大きいか比較すると、今会合ではタカ派姿勢に軍配が上がりそうだ。
明日の会見に注目したい。
ニュースメモ
■米国
米クラビヨが上場、公開価格を一時32%上回る-好調なデビュー相次ぐ
マーケティング・データ自動化プロバイダーの米クラビヨが20日、ニューヨーク証券取引所に上場し、36.75ドルの初値をつけた。公開価格の30ドルを23%上回る水準で、注目の上場銘柄による好調なデビューが続いている。
FOMC、政策金利を据え置き-年内あと1回の追加利上げを示唆
FOMC声明:経済活動は堅調に拡大、雇用の伸び鈍化も力強さ維持
【FOMC】据え置き決定は最良の一手だった-市場関係者の見方
FRB「予想にばらつき」「11月利上げへ」 専門家の見方
FRB、24年は名目で利下げも実質で利上げ
20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ニューヨークの株式市場と外国為替市場が特に注目したことは、名目政策金利ベースで、2024年の利下げ回数予測が4回から2回に減ったことだ。その切り下げ幅は合計0.5%程度となる。これが、市場にずっしり応えたのは、名目では利下げでも、実質政策金利ベースでは利上げになることだ。
■日本
社債市場は夏枯れ知らず、日銀政策変更にらみ調達相次ぐ-9月倍増
例年起債が減りがちな夏休みシーズンも勢いは弱まらず、年初からの起債総額は過去最速で12兆円を突破した。日本銀行の金融政策変更を意識した発行体の調達需要は旺盛で、積極的な起債は今後も続くとの見方がある。
年度内にもマイナス金利解除、30年金利1.8%へ-かんぽ生命の野村氏
かんぽ生命保険の野村裕之執行役員兼運用企画部長は、2023年度内に日本銀行がマイナス金利政策を解除し、30年国債の利回りは1.8%に上昇するとの見通しを示した。
日銀会合注目点:政策正常化へのヒント探る、総裁のタカ派発信あるか
ブルームバーグが注目点をまとめている
■中国
中国オフィス市場、厳しさは米国以上
不動産サービス会社CBREによると、中国主要18都市の6月の高層オフィスビル空室率は約24%だった。同月のオフィス空室率が18.2%と30年ぶりの高水準となった米国をさらに上回っている。
中国のオフィス市場は米国とは異なり、ハイブリッド型勤務へのシフトが打撃になっているわけではない。
建設業者が単に物件供給を増やしすぎ、経済は今、それを吸収するには弱すぎるということだ。
■ユーロ圏
4%の金利維持でインフレ率は目標に達するだろう-ECBデコス氏
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバー、スペイン銀行(中銀)のデコス総裁は、現在の金利水準を維持すればインフレ率は目標まで低下することができ得るとの考えを示し、前例のない規模の連続利上げが終了することを示唆した。
英都市バーミンガム破綻 同一賃金軽視、10年のツケ
ロンドンに次ぐ英国第2の都市バーミンガムが事実上の財政破綻を宣言した。
「6億5000万ポンド(約1200億円)を超える同一賃金債務に見あう財源がない」。バーミンガム市議会は5日、地方財政法に基づく事実上の破綻通知を出した。人口114万人の中核都市の破綻を英メディアは大々的に伝えた。
最後の利上げか今月停止か、英中銀は「際どい決定」に-きょう発表
イングランド銀行(英中央銀行)は、これまで14会合連続で押し進めてきた利上げを停止するかどうか、金融政策委員会(MPC)の政策決定を21日に公表する。投資家と一部のエコノミストは追加の引き締めに懐疑的だ。
■為替
ドル・円は148円台前半、FOMCタカ派的据え置きでドル上昇
1日朝の東京外国為替市場のドル・円相場は1ドル=148円台前半で推移。米連邦公開市場委員会(FOMC)は市場予想通り政策金利を据え置いたが、高金利が長期化することが意識され、昨年11月以来の高値を更新した。
為替の過度な変動にはあらゆる選択肢を排除しない-松野官房長官
松野博一官房長官は21日午前の記者会見で、1ドル=148円台まで円安が進んでいる足元の為替動向に関して「為替相場は安定的に推移することが重要だ」と述べた上で、「為替の過度な変動にはあらゆる選択肢を排除しない」と市場をけん制した。
円、日米5年金利差と連動 経済成長と金融政策にらむ
2年金利は、イールドカーブ(利回り曲線)の起点である短期の政策金利に近く、各中央銀行による金融政策の影響を受けやすい。10年金利は経済の成長期待や長期的な物価情勢を反映する。円相場の値動きと日米金利差の動きを重ねると、現状は2年と10年の中間的な位置にある5年の日米金利差との連動性が高いようにみえる。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「2010年以降の国債利回りと円相場の関係を分析すると、5年の日米金利差を利用した場合に一番、説明しやすい」と語る。10年は経済・物価情勢を映し出す半面、国債の増発など需給要因も影響する。日米両国の金融政策の方向性の違いも表れる5年の金利差が適切との見方だ。
円安加速、148円台半ば 「タカ派」FRBに市場動揺
外国為替市場で対ドルの円相場が下落している。21日には2022年11月以来の円安・ドル高水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)幹部が示した24年の利下げ回数の見通しが2回に減り「タカ派」との受け止めから米金利の上昇ペースが急加速。日米の金利差拡大が円安に拍車をかけた。市場では円買い・ドル売り介入への警戒が一段と高まっている。
■債券
NY債券、長期債続落 10年債利回りは4.41% 16年ぶり高水準 FOMC後に売り優勢に 2年債は17年ぶり水準
20日のニューヨーク債券市場で長期債相場は続落した。長期金利の指標となる表面利率3.875%の10年物国債利回りは前日比0.05%高い(価格は安い)4.41%と、2007年11月以来、およそ16年ぶりの高水準で終えた。
米投資適格債の保証コスト上昇-FOMC「タカ派的休止」と受け止め
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)指数のスプレッドに反映される米投資適格社債の保証コストが上昇した。
北米企業の信用リスク指標であるマークイットCDX北米投資適格指数のスプレッドは、一時70.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に拡大した。米国の2年国債利回りは2006年以降で最も高い水準に達した。
米国債利回りの上昇持続予想が大勢、当局の意向浸透-MLIV調査
FOMCの20日の政策決定後に実施されたブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査では、2年債利回りがまだピークに達していないと答えたのは回答者172人の58%に上り、10年債利回りが4.5%超に上昇するとの見方が大勢だった。
長期金利 一時0.745%まで上昇 2013年9月以来10年ぶりの水準
21日の債券市場では日本の国債を売る動きが強まり、長期金利は午前中に一時、0.745%をつけ、10年ぶりの高い水準となりました。
債券15時 長期金利、0.745%に上昇 10年ぶり高水準
21日の国内債券市場で長期金利は上昇(債券価格は下落)した。指標となる新発10年物国債の利回りは前日比0.025%高い0.745%と2013年9月以来、10年ぶりの高水準をつけた。
米30年国債利回り上昇、11年以来の高水準-2年債も06年以降で最高
アジア時間21日午前の取引で、米国の30年国債利回りが3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.48%と2011年以来の高水準を付けた。米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を受けた売りが継続した。
■コモディティ
イランの石油輸出、米国人解放の交渉中に急増
イランで収監されていた米国人の解放などを巡る交渉の過程で、米政府はイランの石油輸出制限を目的とした制裁の実施を一部見合わせていた。これにより、イランのエネルギー輸出は拡大した。米国の現・元当局者が明らかにした。
シェブロンと豪労組、スト収拾で合意間近-豪公正労働委員会
米シェブロンとオーストラリアの労働組合は同国の液化天然ガス(LNG)プラントでのストライキ収拾で合意に近づいている。同国当局が残る問題に関する労働協約案を提示した。
シェブロンの両LNG施設の従業員は先週からスト拡大を開始しており、LNG輸出の減少や価格上昇につながる恐れがある。
■その他
リンガーハット、逆風のフードコート 値上げ戦略に誤算
中でも苦戦しているのが、店舗数の6割を占めるショッピングセンター(SC)内のフードコート店だ。3〜5月期の売上高はロードサイド店がコロナ禍前のほぼ同水準まで回復したのに対し、フードコート店は9割にも届かず不振が鮮明だ。
「外食全体で値上げが進んだことでフードコートの割安感が薄れた。ざわざわした雰囲気のフードコートをあえて選ぼうという人が減っている」。リンガーハットの北原憲和執行役員は嘆く。
冷凍餃子無人販売店の急拡大、秘密は開店コスト
ニュース対価の算定根拠開示を 公取委がヤフーやLINEに
公正取引委員会は21日、ニュース配信サービスを運営するヤフーなどIT(情報技術)大手に対し、メディアに支払うニュース記事使用料の算定根拠の開示を求める調査報告書をまとめた。使用料が著しく低い場合は、独占禁止法違反になり得るとの考えも示した。
ブラジル中銀が0.5%利下げ、12.75%に 2会合連続
マガジンの紹介
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土日:週間展望や自分の資産運用について綴っています。
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