近況報告/立原道造「薊の花のすきな子に Ⅰ 憩らひ」/詩と朗読 poetry night 第68夜
風は 或るとき流れて行つた
絵のやうな うすい緑のなかを、
ひとつのたつたひとつの人の言葉を
はこんで行くと 人は誰でもうけとつた
🌙詩と朗読 poetry night 第68夜は
近況報告と
立原道造詩集『優しき歌 Ⅰ』より
「薊(あざみ)の花のすきな子に
Ⅰ 憩(やす)らひ」
スキマ時間に聴いていただければ嬉しいです。
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立原道造詩集『優しき歌 Ⅰ』より
「薊(あざみ)の花のすきな子に
Ⅰ 憩(やす)らひ」
風は 或るとき流れて行つた
絵のやうな うすい緑のなかを、
ひとつのたつたひとつの人の言葉を
はこんで行くと 人は誰でもうけとつた
ありがたうと ほほゑみながら。
開きかけた花のあひだに
色をかへない青い空に
鐘の歌に溢れ 風は澄んでゐた、
気づかはしげな恥らひが、
そのまはりを かろい翼で
にほひながら 羽ばたいてゐた……
何もかも あやまちはなかつたみな
猟人(かりうど)も盗人もゐなかつた
ひろい風と光の万物の世界であつた。