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新・古今東西見聞録
あんたが“怪物”だ!
午前3時である。不眠症の俺は目を覚ました。いつも通りラジオを流しっ放しにしていた。すると、聴き覚えのある声。しげるさんの声だった。“春夏秋冬”から何年経つだろう…。あの“春夏秋冬”でさえ、近年はU2のようなノリにアレンジを変えて、泉谷しげるの誰にも出来ない世界へ叩き込んでいた。あの独特な歌い方とシャウトでである。
今朝は10分超えの“怪物”という曲を、初めて聴いた。しげるさんの歴史は長い。新宿フォークゲリラまで遡る。でも、そんなキャリアを蹴飛ばして、いつも新鮮、ストレートなのだ。テレキャス辺りのエレキギターをカキ流しながら吠えるのだ。唯一無二のものだ。素顔はシャイでありながら、ピンスポが当たると世情も何もかも、しげるさんの手の中。そして彼はそれを握り潰し歌い、シャウトする。
今朝聴いた“怪物”も、世間様を騒がせた事件を想像させ、最後には誰でも“怪物”になりうるんだぜ!と吐き捨てる。その鬼気たるものは聴いているだけで、しげるさんのピンスポにあたった、その向こうが、シャウトするそれが見えるようである。なのに、ミディアムやバラードになると、素のしげるさんが真っ裸でフォークギターで歌っているようなテイストになる。
それがしげるさん、“泉谷しげる”なのである。それがしげるさんのとんでもない場数と年月、キャリアが創り上げた、皮肉なものでしげるさんこそ“怪物”なのである。なかなか“春夏秋冬”以外は、ゴールデンタイムのテレビやラジオで観聴き出来ない。しかし、“泉谷しげる”は進化し続けている…。