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はなくそタクシー

※この投稿は3年前くらい前に下書きに入れたままなぜか公開していなかった文章です。もったいないので今更ながら供養がてら公開します。

僕は仕事が嫌いだ。
ほんとうに、嫌いだ。

どのくらい嫌いかというと、
こんなことを書いてるのをもし職場の人に見られでもしたら、気まずくなって居場所がなくなって辞めざるを得なくなってしまうかも・・・
え?それって最高じゃん!と思ってしまうくらい嫌いなのだ。

何がそんなに嫌なの?と不思議がられたりするが、
僕からしてみれば嫌じゃない方が不思議だ。

そりゃあ誰だって仕事は嫌だけど、そんなこと言ってたってしょうがないじゃん。
とか言われても、いやしょうがなくたって嫌なものは嫌じゃん!
と思うのである。

そんなに嫌なら辞めちゃえばいいじゃん。
…ね。辞めよっかな!

そうは言っても、生きていくのにお金は必要でしょ?
…そう、お金は必要なのだ。毎日めっちゃうまいもの食いたい。

だから心の底から嫌だけど、嫌々ながら毎日死んだ顔で会社に行って働いているのだ。

でも本当に嫌なので、当然仕事に身は入らない。
やらなきゃいけないけど、死ぬほどつまらないし興味もない、しかも信じられないくらい面倒くさくておまけにクソ難しいことが、山ほど降りかかってくる。とにかく、つらい。

…という、ただの仕事の愚痴を書くために、僕の指とマックブックエアーがあるわけでは、もちろんない。

そして、この投稿のアホなタイトルと今まで書いた文章がまるっきり噛み合っていないことも、みなさんすでにお気づきのことと思う。

なんだよ、変なタイトルで釣っておいて、結局ただの社会不適合者アピールかよ!つまらん!
と怒っていらっしゃる方も、もう少し、お付き合いいただきたい。

ところで、「夢オチ」という言葉がある。
ご存知の通り、ものすごく急だったり衝撃的な展開のあとに、主人公がガバッと起きて「なんだ夢かー!」ってなるベタなアレである。

僕は別に夢オチは全然嫌いではないのだが、なぜか一番がっかりさせられる演出として多くの人から毛嫌いされている印象がある。

なので夢オチが嫌いな人から嫌われないように先に言っておく。
「はなくそタクシー」は僕の夢の話である。

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話を戻そう。僕は仕事が嫌いだ。(キリッ)

僕の経験上、人の脳というのは僕が嫌いなコンピューターと同じで、
あまりにも無理なことをしようとすると強制的にシャットダウンする機能を持っているようである。

嫌なことで頭がいっぱいになったりすると、その過度なストレス状態から解放されようとして自動的にスリープモードに切り替わるのだ。

つまり、僕はよく仕事中に居眠りをしてしまう。

積み上がった大量のやるべきことを前に、僕はとりあえず「うわーーーーやだーーーーーー」と思う。
手を動かせば割とすぐ終わるものも結構あるのだが、とにかく一度冷静(?)になって、「なんでこんなことしなきゃいけないんだ…?」と考える。

なんでなんだっけ…
終わんないと怒られるから…?
…なんで怒られるんだっけ?
もしかして実は怒られないんじゃね?
いやでもお金もらってるんだよなぁ…
よしやるか…あ、ほんとつまらん…無理…
これ、あと40年くらいやらなきゃなのか…やだな…
とりあえず今の仕事やめるか…
いやーでも辞めてもどうせまた別のとこで働くなら意味ないしな…転職活動したくないし…
はぁ、どうにかして、仕事をせずに生きていく方法はないだろうか…?

そんなことをぐるぐる考えているうちに、どんどん瞼が重くなる。

あぁ、もうダメだ…
眠すぎる…
いったん、休憩しよう……

-気づくと、僕は車の運転席にいた。
何かものすごく違和感があったが、間違いなくそこは車の運転席だった。
親の車でもなく、乗ったことのない車種なのに、なぜか見覚えがある。
4人乗りで、僕の他にはどうやら誰も乗っていないようだった。
エンジンがかかっていたので、わけもわからないままとりあえずアクセルを踏んで走らせてみると、すぐに違和感の正体に気づいた。

まず、走行音が明らかに自動車のそれではなかった。
ブーンというエンジン音でも電気自動車のスーッというモーター音でもなく、甲高くて大きいキーンという音がしていた。どちらかというと飛行機に近い、とにかく未来的でSFチックな音だった。

そして何よりも驚いたのは、周りの景色だった。
そこには信号機や車線はおろか、整備された道路もなかった。もっと言えば地面すらない。
長いトンネルのようだが、壁がなく、代わりに青白い光がねじれて渦巻いていた。まさに「超空間」としか言いようのない場所だった。

いま思えばあれは、スターウォーズの「ハイパースペース」そのものだ。
ほら、ハンソロとかを乗せたミレニアム・ファルコンとかが、光速ジャンプした時に突入する次元違う系のあれ、あれである。
(…ドラえもんのタイムマシーンが通る場所といえば、少しイメージが違うがまだ伝わりやすいのだろうか)

そんなどこまでもSFな世界観に圧倒されながら、僕はもう一つ重大な事実に気がついた。

車内の前側と後ろ側のちょうど半分くらいの位置、つまり運転席に座っている僕の頭のすぐ後ろのあたりを、透明な厚めのプラスチック板が仕切っていた。
そしてその仕切り板は空間の上半分に取り付けられ、助手席と運転席の間の隙間はわざと人の手が通るようになっている。
極めつけに、後部座席から見てその隙間の先にある部分、つまり僕の左ひじのわきには、お金を載せるトレーがあった。

道理で見覚えがあるわけだ。
それは非常にオーソドックスなタクシーの車内の構造だった。
運転席側からは見たことがないので、すぐに分からなかったのだ。

僕はどうやら、ハイパースペースの中でタクシーの運転手をしているようだ…。

夢の中の自分というのはやたらと呑み込みが早いもので、「僕はここで昔からタクシーの運ちゃんをしているが、何らかの事情で記憶を失い、今に至った」という設定を即座に了解した。

呑み込みの早い僕はとにかくタクシーを走らせることにした。
ハイパースペースの中にはどういうわけか他の車や宇宙船?は通行しておらず、人の姿も見かけることはなかった。
そもそも、前後上下左右どこを見ても同じ青白い光の渦だから、進む方向すら分からないはずなのだが、不思議と大きくみるとまっすぐの一本道に見えるので運転には困らなかった。

それからしばらく流していると、前方の左に赤いランプが点滅しているのが見えた。
青白い渦以外になにもない空間に突如現れた赤い光は、とてもよく目立っていたので見落とすはずがなかった。
そしてまた不思議なことに、僕にはそれが「乗せてくれ」の合図に見えた。
別に近くに人が立っているわけでも、タクシー乗り場の標識があるわけでもなく、ただ赤いランプがチカチカと点滅しているだけ。
それなのに、僕はなぜかそれを道路脇で手を上げているサラリーマンと全く同じ意味を持つものとして認識していた。

記憶がなくても身体が覚えているとはこういう感覚か、と我ながら感心した。
この世界では点滅する赤いランプはタクシーに「止まれ」を伝えるためのものなのだ。
またも新たな設定を瞬時に呑み込み、僕は赤いランプの手前で車を左に寄せて止めた。

すると案の定、1人のサラリーマンが乗り込んできた。


ガバッ

ゆ、夢だったのかーーー!

その日の残りの時間はどういうわけか面白いように仕事が片付いた。

きっと世界中の鼻くそが集まってきて、僕の脳にちょっとした栄養を供給してくれたに違いない。

おわり

※2022年末でほんとに仕事やめました。

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