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#1_2 何も起こらなかったごく普通の入社式の話
前回はこちら
※ここで出てくる人物名や地名は仮であり事実とは異なります。
8回目の「ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」を聞き、拍手が鳴り止んだ後、
「次は長谷川さん」
自分の番だ。
「はい!」
元気がいいねと褒められることも、もっと大きな出した方がいいよと注意される事も無いくらいの声量で返事をした。
前から3列目左から2番の席を立ち、スピーチを終えて一安心と肩を下ろす同期を横切り、事前に練習した通り、それぞれの場所に3回礼をして、黄色いビニールテープの前に立った。
顔を上げると、スポットライト的な灯りの影響か、目の前に13人のスーツを着た少し肩の力が入っている同世代の男女の初々しさを感じてか、眩しいなと思った。(多分ライトの影響だろう)
「本日は私たち新入社員のため、盛大な入社式を開催して頂き、誠にありがとうございます。」
Googleで”入社式 挨拶 テンプレ”と検索してすぐに出てきそうな挨拶をした。
小学生の時から、人前で話すことはなぜか苦手ではなかった。2分の1成人式、作文の音読、文化祭の劇、就活の自己紹介など特に練習しなくてもそこそこは出来てしまっていた。
ただ人前で話すことはあまり好きじゃなく、この唯一と言って良い長所を活かさずに就活をしていたことが勿体なかったなーとほんの少しだけ思った。
「自分の母は精神的な病気を持っており、子供の頃から普通に生活が出来ない状態でした。サッカーの練習に行ってヘトヘトになって洗濯物は山積みの家に冷凍食品のピラフをレンジで温めて食べる様な生活をしていました。
そんな時にこの会社の様なサービスに助けてもらい、
母が少しずつ元気になりちょっとずつ家事が出来るようになり、
好きなバンドのライブに一人で行くほどに元気になりました。
このように自分の人生を豊かにしてもらったサービスをしている会社に恩返しがしたい。
自分みたいに大変な人のためにもっとこのサービスをもっと広めたいと思い入社しました。
今、父も体調が悪くあまり働けない状態になってしまっているので、
1日でも早く出世して父に仕事やめて良いと言ってあげられるくらいになりたいと思っているので、とにかく愚直に頑張ります。
何卒よろしくお願いいたします。」
スピーチを終えた後、またそれぞれに一礼をして、自分の席に戻った。
当たり前なのだが、このスピーチの内容は実話であり、本心であり、決意表明であり、入社式で緊張して最高潮にモチベーションとやる気が満ちあふれいた頃の自分が話した内容である。
こうして何も起こらないごく普通の入社式が行われ、一人のごく普通の男が社会人になった。
※ここで出てくる人物名や地名は仮であり事実とは異なります。
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いかがだったでしょうか。
ごく普通の当たり障りない返事から始まり、少し自分らしいスピーチをしてみました。
皆さんは入社した時、スピーチはありましたか?
どんなスピーチをしましたか?
次回、新卒なので、研修が始まります。
うちの会社はホテル研修というちょっと特殊な研修があり、それに挑む特に面白いことも、事件も起きない話です。
続きはこちら
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気ままに日々思うことをつぶやいています。
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