2024.06.18
私がミッドナイトガールだと知っているあの男はサンドイッチになって死んだ。
サンドイッチというのは物理的な意味ではなくて、彼女と浮気相手の間に挟まって、浮気相手に刺されて死んだという話なのだ。
彼は私に対して、浮気相手はロングヘアーでめっちゃエロくて自分と会う時ちょいエロの下着を決まって身につけてきてくれてワイン好きなのだと話した。
彼女についての話は一切しなかった。
彼は私に対して、ハイボールを飲める女と飲みたいとずっと言っていた。私は狙ったわけではないけれど、ずぅっとハイボールばかり飲んでいた。
私はハイボールと、言い訳みたいなチューハイを飲んでいた。
彼が刺された話を聞いて、私は自分の中にあるしこりみたいなものをアルコールで洗い流そうとして、彼と行っていた居酒屋で酎ハイを一生頼んで、隣のおじさんに彼の愚痴を言い続けた。
どう思いますか?まじてないですよね?私は結局何だったんだってなりますよね。
そう捲し立てながら、頷くおっさんが私の太ももばかり見てくる。私はスキニーを履いていく直前で何を思い直したのかホットパンツに履き直して、そしてこの飲み屋に来たのだから、来たのだから。
私は何かを求めていた。同時に私は何者にも求められたくなかったのだ。
おっさんは絶えず話しながら私の脚を見ていた。
「何してんの、いくぞ」
たまたまおっさんとの応酬の中に紛れていた若い男に声をかけられる。
私は店主から出禁だと言われたらしい。男はそれを私にやんわり教えてくれた。
私は反省しつつ、この男がこの世界の全てのように思えて、自分の浅はかさを悉く思い知った。
「どこぉ」
「一駅先に立ち飲み屋行くから」
「いコォ、今日はいくひ」
行く日ではない。あの男と飲みに行く日は、今日は飲む日じゃないと焦ってたくさん断って、それが私を私たらしめる理性だと思っていたし、それは呆気なく瓦解するのだと泣きたくなった。
彼と立ち寄った飲み屋は立ち飲み屋で先払い制だった。私はいっぱいめのハイボールが苦すぎて、それがトリガーになって喉の奥に人差し指と中指を突っ込んで、人生の余剰となっていたクソみたいな出っ張りをならして吐いたのだ。
見ず知らずの男と飲むのが問題外だとして、彼女持ちの男の浮気相手との関係値を調整する女の身にもなってみろ。
なってみろ!
好きだなぁ。ずっと好きだなぁ。
彼の目には私なんていないことが、下手くそな男の胸板から透けて見える。
いいよ、いいよ、私はあなたのこと思ってずっと泣くんだもんね。
あぁ、明日も仕事かぁ。