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外枠種牡馬辞典 Vol.1カリフォルニアクローム

カリフォルニアクローム産駒は馬券的にはかなり優秀。単勝ベタ買いでも回収率104.8%(執筆時点)が見込めます。昨年から日本産の初年度産駒が走り始めたカリフォルニアクローム産駒の特徴にはどのようなものがあるでしょうか?
産駒の特徴を調べるに際し、傾向を受け継ぐ源にある種牡馬自身の走りと、産駒の走りのポイントを踏まえながら考えていきたいと思います。


1.父の紹介

具体的にどんな血統の馬だったかは父系馬鹿さんのサイトであったり、wikipediaやJRA-VANの紹介を見たほうが分かりやすいと思います、西海岸生まれというのは日本で言う九州産馬みたいな感じらしいですね。
3~4歳時は外の3番手から早めに動いてねじ伏せるのが王道の勝ちパターン。米国クラシック三冠ではケンタッキーダービ―、プリークネスSを同様の戦法で勝利しており、36年ぶりの偉業がかかった3冠目のベルモントSではスタート直後に足を踏まれるアクシデントからかインの2列目に収まると外に持ち出してからも伸びが鈍くて追い上げきれずに4着に敗戦してしまう。

どうやら内に収納される競馬は苦手なようで、3歳秋初戦に選んだペンシルバニアダービーでは逃げるバイエルン(同年BCクラシック勝ち馬)の真後ろという絶好位につけながら直線で外の馬に張られると他馬を追い抜こうとせず、1.8倍の支持を裏切って6着に終わっている。

ドバイワールドCは2度走って2015年が2着、2016年が1着と好相性。勝った2016年は勿論、2着に負けた2015年も好内容で、離れた最後方から捲ってくるプリンスビショップの余裕、さらに横のホッコータルマエの手応えを見ると超ハイペースを外の3番手から押し切ろうとするのが分かる。「直線でホッコータルマエにぶつけられてフォームが崩れた」とはエスピノーザ騎手。

転機は5歳のパシフィッククラシック。ここで初めて逃げを打つとそのままリードを縮めさせず、当時のアメリカ最強牝馬ビホルダーを相手に影すら踏ませない6馬身差の圧逃劇を披露する。

オーサムアゲインSを勝って向かった2016年のBCクラシックではアロゲートと死闘を演じる。いつも通りの逃げを打ち、直線ではカリフォルニアクロームが一瞬振り切りかけたが、最後の最後でアロゲートが半馬身差追い詰めて2着に敗れる。3着以下は10馬身以上彼方とかなり見ごたえのあるレース。見たことが無ければ、是非一度見てもらいたいくらいだ。
アロゲートとは自身の引退レースとなった翌年の第1回ペガサスワールドカップでも再度マッチアップすることになるが、ここでは逃げることが叶わず、しかもレース中に故障を発生すると4コーナーを迎える時点で大きく減速してしまい、勝ったアロゲートからは大きく離される9着入線でレースを終えている。

改めて特徴をまとめるとこのような感じでしょうか。
・アメリカらしいワンペースな中距離馬。機動力には欠ける。
・淀みない流れを逃げるか外の3番手から次第に進出するかが勝ちパターン。自身が番手ならコーナーでは捲り切れず、直線入口で押し切りを図る。
馬群の中に潜る形だと脆く、古馬になってからは一切内に入る競馬をしていない。

2.産駒の特徴

・芝でも走れるスピード型

自身は3歳の冬に芝のハリウッドダービーを勝っており、4歳時にはイギリスのプリンスオブウェールズSへの遠征を企図していたので不思議な話ではありません。
日本繋養初年度の代表産駒であるワイドラトゥールは芝のリステッド競走、紅梅Sを勝利。このほかにスプリングノヴァ、ララマセラシオンなど2頭の2勝馬を抱えており、中央全30勝のうちの3割である9勝が芝で挙げられています。芝の勝率6.4%は、ダートの勝率7.9%と大きく差がありません。
ただし、性別ごとの内訳を見ると、牝馬は芝7勝/ダート7勝と同数ですが、牡馬は芝2勝/ダート14勝と明らかにダート優勢。これはミッキーアイル産駒の傾向にも見られます。

・新馬戦は走らない

新馬戦は数字が悲惨。以下は勝率/連対率/複勝率のデータですが、
新馬 4.3%/10.0%/11.4%
未勝利 8.4%/15.3%/20.9%
と、新馬と未勝利では勝率と複勝率に半数近い差が出ています。
回収率も勿論悲惨であり、単勝回収率は53.7%、複勝回収率43.6%と全く買えないような数字が反映されています。カリフォルニアクローム産駒は条件慣れが見込めるときに買うのがベストでしょう。
これを逆手に取って考えると、新馬から好走した馬の殆どは有望ということも1つ押さえたいポイント。新馬を勝ち上がったスプリングノヴァ、ワイドラトゥール、ネグレスコはいずれも2勝目を挙げており、新馬戦で2着に入った4頭は2戦目を使ったのちに抹消されたサナダを除いて全頭が勝ち上がっています。

・コーナリングが大味

1周コースでの複勝回収率は65.0%。これに対し、ワンターンでの複勝回収率は137.7%と大きく差があります。
確かにカリフォルニアクローム自身もコーナーの機動力でアドバンテージを取るタイプではなく、コーナーから直線にかけての持久力を武器にするタイプです。実際に産駒の1周コースでの走りを見てみると、コーナー出口~直線でもたつきながらも一瞬の切れ味を活かして勝っているケースが見られます。

2つ例を紹介しましょう。
例1)ハリウッドパーク 2023/10/29 未勝利
新潟のコーナーはスパイラルカーブ。コーナー地点(後半4-2F)のラップは12.8-13.3-13.0と決して加速しているわけではありませんが、ハリウッドパーク(橙帽13番)は外でもたつき、4角では鞭が一発入れられる始末。
そこからホームストレッチに出て、再度鞭を入れられるとコーナーでの鈍い反応とは一変して一気に加速。ラスト2Fは13.0-12.3と加速する中で瞬発力を活かして勝ち切っています。

例2)キューティクローム 2024/04/07 未勝利
後半5Fのラップは12.2-12.2-12.2-12.4-12.2とほとんど加速無し。この持久ラップに外の3列目からじわじわと位置を上げていくのですが(桃枠16番)、中山のスパイラルカーブで案の定手応えが怪しくなり、4角の出口では外でもたもた。
そこから直線に入ると徐々に勢いがつき、12.4-12.2と急坂で加速ラップを踏む中、外から追い上げてくる2頭の追撃を振り切っています。

外枠ポイント→馬群を突けない

スプリングノヴァのサフラン賞を例に考えましょう。
黒帽2番のスプリングノヴァの前走新馬戦は逃げを打つ形での好走でしたが、このレースでは控える競馬を示唆。スタート直後に外の馬から被される形になると頭を上げて抵抗する素振りを見せましたが、内ラチ沿いにポケットを見つけると馬群の中で折り合いをつけることに成功しました。
コーナーでも内をそのままスムーズに追走していましたが、直線を目前にして前の馬との距離が近づくと頭を上げて外に逃げてしまいます。ただ、しばらくすると前の馬が完全に失速して大きなスペースが開き、そこに飛び込むと一瞬の切れ味を発揮。後の桜花賞馬ステレンボッシュを下しての連勝を飾っています。
カリフォルニアクローム産駒の揉まれ弱さの特徴としては以下のことが考えられそうです。
・道中は馬群の中でも我慢できるが、加速している途中で馬群に近づいたり、外から被されたりするとフワフワして力が抜けてしまう。
カリフォルニアクローム産駒は確かにキックバックを嫌う産駒もそこそこいますが、芝ダート関係なく揉まれ弱いタイプが多く、一番の敵は馬込みだと考えています。
道中は我慢が効くことを前提にすれば、勝負所でも内ラチとの間にちょうどいいスペースさえ見つけることができれば馬群を突いての好走も可能になります。
例)スプレーフォール 2024/06/29 3歳以上1勝クラス

馬券の狙いどころ

「ワンターン(替わり)の外枠で狙え!」
これは産駒のウィークポイントである揉まれ弱さとコーナーでの反応の鈍さを一気に補えることが根拠になります。
1周コースの競馬ではコーナー地点からペースが速くなるので、自身がもたつくだけでなく、機動力に長けた馬が外から被せてくることで戦意を喪失してしまいますが、ワンターンの競馬になると、本来は加速地点になるコーナー部分が直線に向けての休憩地点に変わるため、ペースが上がりづらく、外から追い上げてくる馬も必然的に少なくなります。
特に東京D1600m戦では全3勝が外枠からの逃げ切りとなっていて、出走回数は23回とまだ少ないですが、人気薄での激走が目立ち、複勝回収率479%を誇る得意コースになっています。
ゆったり走りたいタイプということもあり、どちらかと言えば距離延長向きの印象を受けますが、例えば母父にサウスヴィグラスを持つロサンゼルスは阪神D2000m→東京D1600mへの距離短縮で激走していますし、同様にアイスリンディも阪神D1400m→福島D1150mの距離短縮で未勝利を勝ち上がっています。主張力の強い母父を持つ場合はそちらに引っ張られるというのが私の仮説です。

3.注目産駒

メイショウマドロス

初ダートになった6/8の未勝利戦は2番手を追走。直線の入口でスパートを開始すると逃げていた2着馬トーレをあっという間に突き放しての大差勝ち。最後の100mほどは流しながらも勝ち時計は同日の2勝クラスとコンマ1秒差の好時計を記録。さらなるダート慣れが見込める次走以降が楽しみ。

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