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1999年の皐月賞を回顧してみる。

まえがき

 現在放送中のウマ娘ROAD TO THE TOP。多くのオタク、そして競馬ファンの皆様がご覧になっていることだと思われます。私もその一人ですが。1話凄いですね……。作画の熱の入りようが半端ない。本当にすごい。ヤバい。特にオペラオーが上がってくるときの絶望が一気に襲ってくるような感覚。あれは非常にゾクッとこみ上げるものを感じました。
 そんな中で個人的好奇心により「ちょっと主観的に分析してみたいな~」と思って書いているのがこちらの記事。書く理由の一つはそうなんですが、もう一つはウマ娘パワーに便乗してなんか残したいな~という、邪念だったりします。レースとかアニメとかもう一回見返すときになんとなくレース像が掴めたらいいなと思ってます。少なくとも自分なりに。

オッズから見る戦前の様子

皐月賞|1999年4月18日 | 競馬データベース - netkeiba.com

 オッズから判断する戦前の雰囲気は若干の2強ムード。
 弥生賞はコケたけどここまですべてのレースで上がり最速を叩き出している良血アドマイヤベガと武豊が巻き返しを見込まれての1番人気。これに追随するように2番人気に支持されているのが明け4歳、重賞2連勝でここに挑むナリタトップロードと渡辺薫彦。
 そこから少し離れた3番人気は半年の骨折休養明けの若葉Sを外から突き抜けて快勝、昨年の札幌3歳Sを5馬身差で圧勝したマイネルプラチナムと木幡初広。ここまでが10倍台を切るオッズ。
 まず木幡初広さんがクラシックで3番人気の馬に乗れること自体が驚き。まあラフィアンですが。
 そしてテイエムオペラオーが11倍も付くという事実。関東圏にお住いの方にとっては情報の少なさゆえに関西馬が軽視される状態、今ではすっかり死語になった「西の秘密兵器」と呼ぶに相応しいところですね。毎日杯のパフォーマンスだけなら、ネットが発達した現代ではもう少し人気になってもおかしくないところ。もし、2023年現在に土曜締め切り時点でこんなオッズになろうもんならYoutuberたちがこぞって本命に指名して妙味を殺しに来る。現代の日本競馬は情報が伝わりやすくて夢がないなあ……。

結果と展開について

「大外一気に突き抜けたか!テイエムオペラオーと和田竜二」【皐月賞 1999】 - YouTube
公式ラップは以下の通り。

12.5 - 10.4 - 12.5 - 12.3 - 12.4 - 12.2 - 12.4 - 12.1 - 12.1 - 11.8
 2ハロン目がとんでもないことに。
これは主導権争いに参加した馬には厳しいラップ。そこから明確に緩む箇所は一つもなく、終始同じラップを刻む究極のポテンシャル戦。ラスト3Fが若干加速する感じで、最後の1Fがテンを除く最速の11.8。追走面での耐久力が基本的に問われていて、決め手に急坂での瞬発力が関わってくるのかなと考えています。
 では実際の流れと照らし合わせて見ていきたいと思います。

①スタート~初角の入りまで

 最内枠を引き当てて、積極策が濃厚だったスプリングSの覇者ワンダーファングが直前でまさかの競走除外。もう1頭の逃げ候補だった共同通信杯の覇者ヤマニンアクロの勝浦正樹には願ったり叶ったりの単騎逃げの可能性が……。
 と思いきやスローペースの可能性を察知した他の騎手が一斉に前へ出て行って先行争いは激化。そうやすやすと思うようにはさせてくれないのが牡馬クラシックの舞台。その中でも先頭に立ったのは若葉Sを惨敗しながら、記念出走枠かもしくはペースメーカーか、900万で出走を叶えたアドマイヤラックと岡部幸雄。2番手には同じく内から前を主張したトウカイダンディーと後藤浩輝で、実はこの馬のここまでの2勝は差しで挙げたもの。ヤマニンアクロはやむを得ず一歩引いて4番手から。こういう駆け引きが競馬、特にG1レースでの面白いところですよね。

競馬は甘くないぞ。

 そして主役3頭。ナリタトップロードは出たなりに好位を確保。アドマイヤベガは少し引きながらも前がかりに追走して中団の後ろ。テイエムオペラオーはテンで少し置かれて後方からアドマイヤベガをマーク。いずれも前の争いには参加しておりません。ちなみにマイネルプラチナムはオースミブライトの外をぴったり追走。

②中盤~後半まで

 マイネルプラチナムが向こう正面でかかり気味にポジションを上昇。この辺りで若干追走が苦しくなったか、最内を通るナリタトップロードは手綱をしごいて押っ付ける様子。アドマイヤベガは涼しい顔でその外を追走。テイエムオペラオーは相変わらずベガの後ろ。
 普通なら2コーナーの辺りで一度緩むんですよね……。若干苦しくなる馬がいても無理はない。

必死に追走する主人公の様子

③終盤

 アドマイヤラックが苦しくなって失速し始めた3コーナーから各馬が外に殺到。先に仕掛けたオースミブライトを追ってナリタトップロードが、さらにそれを目標にアドマイヤベガ、その後ろからテイエムオペラオーが大外から一気に前へ迫る。先に仕掛けたオースミブライトの蛯名正義はコーナーで緩める間にポッカリ空いた内へ誘導。ここの捌き方、超上手い。会心の騎乗だったんだろうなと思います。

赤のマイネルの後ろにいるのがオースミブライト。外の3頭衆に比べて格段にロスが軽減されているのが一目瞭然。

 直線に入ると内から2頭目のスペースをスルスルとオースミブライトが抜け出して坂を越えた時点では先頭。直線の入りで内に切り返したナリタトップロードも坂でエンジンがかかって前を追う。アドマイヤベガはじりじりとした伸びでキレを欠いて依然中団。あと1頭交わすだけ。そう思われた。
 しかし、大外から飛んできたのはテイエムオペラオー。坂を上る時点で既にエンジン全開。ゴール前の最後の一伸びで同じ勝負服の2頭を抜き去り、その首が僅かに先に出ていた。ナリタトップロードはオースミブライトをあと少しで抜かせずにハナ差の3着。伸びあぐねたアドマイヤベガは最後に追い上げて6着に終わった。

(主に3頭の)分析のコーナー

1着テイエムオペラオー

毎日杯|1999年3月28日 | 競馬データベース - netkeiba.com
 前走の毎日杯が5ハロン目からのポテンシャル戦で、今回のレース質と合致。そこで突き抜けていた通りのレース内容。
 オペラオーの良さは立ち回りの器用さと底力勝負の強さ。決して切れる脚が使える馬ではないということは勝ったG1の殆どが35秒台の上がり最速であることからも、父オペラハウスということからも判断できます。さらに自身の決め手は抜け出すときの瞬発力にあり、この中山も相性が良いコースと言えるでしょう。
 外枠から自分で早めに動く競馬になるとどうも甘くなる面があるのでそこがウィークポイント。その点、アドマイヤベガをマークできたのは優位に働いたのではないでしょうか。和田竜二J、少なくともこのレースは上手く乗れていたはず。

2着オースミブライト

 4コーナーの捌きで大きくアドバンテージを得るも、最後の最後に差されての2着。あの立ち回りも自身が中山と阪神の内回りで重賞2勝を挙げていたことに裏打ちされる、コーナーの器用さに他ならないところ。急坂での瞬発力勝負も勿論得意で、120点の競馬はできていたが、相手は後の年度代表馬。内容ではほぼ勝ちに等しい2着。

3着ナリタトップロード

 中盤で追走の苦しさを見せるも終盤のスパートには問題なく食らいつく。坂の上りでエンジン点火も、先に抜け出したオースミブライト、外から猛追したテイエムオペラオーには僅かに及ばずの3着。
 ナリタトップロードは中山が苦手なことで有名ですが、3着に来られたのはなぜか。私が考えるに、トプロは小回りのコーナー部分での急加速が苦手な馬で、明確にスパートが入るとそこで置いて行かれるか、コーナーで大きく回りすぎるかになって、タフな流れになるほど不利を受けてしまうのですが、今回のようにそもそもペースがずっと流れていて、かつ内の馬が失速していて外をジリジリと回しても問題ない流れなら中山の小回りを克服できたのではないかと思われます。最近の馬で例えるならダノンザキッドと同じ。

6着アドマイヤベガ

 トライアルを含め、アドマイヤベガ自身はタフな流れをまともに追走した経験が無く、今回がキャリアの中で初めてキツいペースを前目で追ったレースと言えるレースです。その辺りの経験の少なさがまず敗因の一つ。
 さらにもう一つ敗因を挙げるなら前走の敗戦。前哨戦に使った弥生賞はこの馬の本来のスタイルである後方追走からの直線勝負に徹するも、位置が後ろすぎて届かずの2着。直線の短い中山で勝負するには……!と判断して武豊Jがある程度前に行った、安全策を取りに行ったという判断ができますが、これが大きな間違い。早め早めの追走をさせて基礎スピード面を問う走りをさせると、終盤に発揮できる抜群の切れ味が大きく削がれてしまうのがアドマイヤベガ。     
 結局は終いの決め手だけに賭けられなかった状況の全てがこの馬の敗因です。ただし、その特徴を理解できたという点ではダービーに向けて意味のある敗戦だったと言えるのではないでしょうか。

おわりに

 まとめるとアドベはタフなレース展開の追走に脚を使いすぎ。トプロは瞬発力という適性の差で上位2頭に劣った。オペラオーは和田Jが大外ぶん回しという見た目以上にスムーズに立ち回った。
 という感じで。あとは触れ忘れていた4番人気のニシノセイリュウ。ウマ娘ユーザーの皆様方にとっては非常になじみ深いあの西山牧場の生産馬です。若駒Sでは、福寿草特別でトゥザヴィクトリー、ナリタトップロード以下を下した評判馬スリリングサンデーを破っての勝利。これが評価されたものと思われます。(どちらかといえば毎日杯のメンバーレベルが疑問視されていたオペよりもこちらの方が西の秘密兵器として見られていたのかも。)ただ、予定していたスプリングSが熱発で使えず皐月賞にぶっつけで参戦する羽目に。これが響いたのか全く見せ場なしの12着に終わってしまいました。この馬は以降も体質の弱さと戦うことになります。詳しくはググるなど。
 この記事が他人に知見を与えるものであることを願ってこの拙文をおわりとさせていただきます。ダービーは2話見てから考えます、多分やると思う。

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