見出し画像

「九份の夜に消えたギタリスト」〜渦巻く旋律とランタンの暗号

第1話

第2話 渦巻く旋律とランタンの暗号


絵に秘められた暗号を読み解く

ウェイの行方を突き止めることを決意したサオリは、彼が残したと思われる暗号めいた絵を手がかりを元に調査を開始した。彼女はその絵を手に取り、かつて二人が訪れた場所を思い出していた。

そこには、ギターを手にした男と、背を向けた女性が描かれており、彼らの周りには流れるような線と、風に揺れるランタンが散りばめられていた。その絵は一見、美しい音楽の瞬間を捉えたものに見えたが、サオリはすぐにその中に隠された暗号に気づいた。


ギターの弦の数、女性の髪のカーブ、そして周囲の渦巻く線やランタンの位置、すべてがサオリへのメッセージを伝えていた。ギタリストが弾く旋律はただの音ではなく、特定の符号を象徴していた。それは彼の過去と未来を繋ぐ重要な手掛かりだったのだ。

サオリはギターの弦の動きを観察し、その音の高低を文字に置き換えると、次のようなメッセージが浮かび上がった。

「月が雲に隠れるとき、秘密の扉が開かれる。」

この暗号は、何か重要な行動を示唆していた。月が雲に隠れる瞬間—それは何かが起こる合図だ。ギタリストの音楽が導くように、サオリはその瞬間を待ちわびた。

彼女は心の中で、その女性が何者で、どこへ導こうとしているのかを考え続けた。その瞬間が来たとき、サオリは絵の中の隠された意味に従い、次のステップを踏む準備を整えた。

「このメッセージ…ウェイは何を伝えたかったのだろう?」サオリは心の中でつぶやいた。

サオリはその謎を解くため、九份の夜市で出会った人物たちの顔を思い浮かべた。もしかすると、その中に彼の行方を知る手がかりがあるのかもしれない。彼女は手がかりを求め、再び夜市へと足を運んだ。

『紅龍』への足跡


「ここに来るのは久しぶりね…」サオリは静かに言った。

「何かお探しですか?」突然、背後から声が聞こえた。振り向くと、そこには夜市で見かけたことのある初老の男性が立っていた。彼は顔に穏やかな笑みを浮かべていたが、どこか警戒心が感じられた。

「実は、少し探している人がいて…ウェイというギタリストを知りませんか?」サオリは慎重に質問を投げかけた。


男性は一瞬ためらった後、ゆっくりと答えた。「ウェイ…ああ、彼のことは知っているが、ここでその名前を口にするのはやめた方がいい。彼には…危険が伴っている。」

サオリは彼の言葉に不安を感じつつも、さらに踏み込んで尋ねた。「彼が残したメッセージがあります。それが、彼を探し出す鍵だと思うんです。」

男性は深いため息をつき、少し声を潜めた。「あなた、彼のことを本気で探すつもりかい?もしそうなら、覚悟を決めることだ。この街には、あなたが知らない闇がある。ウェイが関わっているのは、その中でも最も危険な部分だ。」

「どんな闇ですか?」サオリは恐れずに尋ねた。

「影の組織『紅龍』だよ。彼らは才能あるアーティストを誘拐し、富裕なコレクターに売り渡す。彼らはその才能を独占し、アーティストを事実上の囚人として閉じ込めるんだ。ウェイも、その標的にされている可能性がある。」男性の声には重みがあった。

サオリはその言葉に衝撃を受けたが、心の中で強い決意を固めた。
「私はウェイを助けます。どんな危険が待ち受けていても、彼を見つけ出します。」

男性は彼女の強い意志を感じ取り、静かに頷いた。「ならば、このメッセージを解読し、台北の中心部へ向かうんだ。そこに、彼が隠れている場所への手がかりがあるかもしれない。」

サオリは感謝の意を込めて男性に微笑み、「ありがとう、必ずウェイを見つけ出してみせます」と誓った。


彼女の調査は、台北の賑やかな夜市を通じて進んでいく。夜市の雑踏の中、サオリは暗号が刻まれた絵を手に、ウェイの痕跡を追いかけた。彼女が出会う人々の中には、彼女を助けてくれる者もいれば、何かを隠している怪しげな者もいた。

「この街は、見た目よりもずっと危険ね…」サオリは自らに言い聞かせた。

サオリは、このネットワークが非常に秘密主義で、社会の上層部にもつながっているため、暴露することがほぼ不可能であることを徐々に知ることになる。

しかし、彼女は諦めなかった。ウェイとの絆を信じ、彼を救い出すために、さらなる手がかりを求めて歩み続けた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?