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禁止指定から考える統率者戦との向き合い方(2024/9/23改定を受けて)
2024/9/23、統率者戦における禁止指定カードが新たに4枚発表されました。発表直後から色々な方が様々なご意見を発信されており、過激な発言をされている方も多く見受けられ少々驚きました。
今回の件について自分でも思うところがあり、遅まきながら自分でも記事を書くこととしました。あくまで一個人の意見として、興味があれば読んでいって頂けると嬉しいです。
※本記事はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。
©Wizards of the Coast LLC.
今回禁止指定カードが出た理由
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まずは今回の禁止制限告知について、統率者戦ルール委員会の告知文(和訳版)のリンクを貼っておきます。内容はこの後ざっくり解説するので読んでも読まなくてもOK。
簡単に内容をまとめると
・最近の統率者戦はゲームスピードが早くなり過ぎている。みんながやりたいことを出来るように、ゲームをゆっくり楽めるようにしよう。
・そのために爆発的なスタートを可能にする《魔力の墓所/Mana Crypt》《宝石の睡蓮/Jeweled Lotus》《波止場の恐喝者/Dockside Extortionist》を禁止にする判断に踏み切った。
・《太陽の指輪/Sol Ring》もその条件にあてはまるが、爆発的スタートを可能にするカードすべてを禁止にする必要はないと考えている。フォーマットを代表するカードであり今後も禁止にするつもりは無い。
・《有翼の叡智、ナドゥ/Nadu, Winged Wisdom》は、《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》が一般的に使用される統率者戦において、適当な青緑系デッキに入れてもゲームを独占してしまうため禁止にする。
こんなところでしょうか。
ナドゥについては今回の本筋と関係ないので先に軽く触れておきます。
『モダンホライゾン3』で登場した彼ですが、開発段階では以下の能力だったそうです。
クリーチャー — 鳥・ウィザード
(1)緑青
3/4
飛行
あなたはパーマネント・呪文を、それが瞬速を持っているかのように唱えてもよい。
あなたがコントロールしているパーマネント1つが、対戦相手がコントロールしている呪文や能力の対象になるたび、あなたのライブラリーの一番上にあるカード1枚を公開する。それが土地・カードなら、それを戦場に出す。そうでないなら、それをあなたの手札に加える。
しかしリリース前のチェックにて瞬速を付与する能力が「統率者戦でのプレイに問題がある」という意見が出て、その後現在のテキストに変更されてリリースされました。結果としてモダンでも統率者戦でも禁止となったので、本末転倒感がありますが…。
とにかく、ナドゥの禁止理由はそもそもが「デザインミス」ということになります。なんだかなぁ。
何が問題だったのか?
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元々は書籍プロモだったって知ってる?
改めてナドゥ以外の3枚の禁止理由を振り返ってみると、簡単に言えば「ゲームスピードを速くしすぎていた」ということのようです。
もっと細かく言うと「一人が突出したスピードで展開し、他三人と対立しても追いつけない程の展開でゲームを終わらせるのは、ゲーム体験として健全ではないため」となるでしょうか。
記事でも書かれているように、1ターン目に「0マナで《魔力の墓所》→2マナ出して《アゾリウスの印鑑》→土地置いて2マナで《発展のタリスマン》」なんてされたらもう投了したくなります。そうした爆発的スタートをさせたくないというのが禁止指定の意図のようですね。
確かに、自分が何もできない内に相手に一方的にボコボコにされて終わるというのは、単純に言って面白いゲームとは言えません。自分がロケットスタートをしてゲームを制したとしても、それは他三人が面白くないと感じてしまうので同じこと。そういった意味では今回の禁止指定は悪くないようにも思えます。そうした意味では、私としては理不尽さを無くすという意味で今回の改訂に対しては肯定的ではあります。
しかし今回の禁止指定に対しては否定的な意見も多く見られます。
それは何故なのか?
「カードの資産価値」と「健全なゲーム体験」を天秤にかけるのか?
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統率者戦以外でどう使えと…。
今回の禁止指定に対して、否定的な意見の多くは「せっかく購入した高額カードが使えなくなった」というものです。確かに大枚はたいて購入したカードがろくに使わないうちに禁止指定となり使えなくなるのは大きなストレスでしょう。またシングル販売を行うショップからは「シングルカードの価値が大幅に下がった」という話もあがっています。需要が減れば販売価格を下げざるを得ないため、経営者側から見れば大打撃でしょう。
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改定の直後はイーグルダイブを見せている。
なんか直近では持ち直してるけど…。
このように、禁止指定というものはカードの資産価値に大なり小なり影響を与えます。
しかしこれはあくまで今回の禁止指定を「資産価値」から見た話。TCGにおける禁止指定というものは「ゲームの健全化」のために行われます。これは単一的であったり一方的なゲーム環境を是正するために行われるものであり、他のフォーマット、もっと言えば他のTCGでもこれは同様でしょう。そう考えると、今回の禁止指定について否定的な意見を攻撃的に発信している人を見ると、過剰に反応し過ぎている気もします。
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ただここで「ゲームの健全化のためだからユーザーは黙って言う事聞け!」と言うつもりは毛頭ありません。今回否定的な意見をあげたプレイヤーやショップの中には「突然こんな禁止指定が出るなら統率者戦辞めるわ」「禁止指定でシングル価格がこんなに下がるならMTGの取り扱い止めるわ」といった人達も出てくるでしょう。資産価値が落ちることでWotCはユーザーからの信頼を失い、結果として深刻なユーザー離れが起きることもあり得ます。
こうしたユーザー離れが起きないようWotCには気を配って欲しいのですが、どうして今回のような問題が発生したのでしょうか。
「売り方」と「禁止」の歪み
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レガシーなら問題ないかな…。
今回の禁止指定について否定的な意見の中に「(《魔力の墓所》などを)新商品の目玉にしておいて、発売後すぐに禁止にするのはおかしい」というものがありました。(※《魔力の墓所》は『イクサラン:失われし洞窟』にて、特殊レアリティで再録されたばかり)
これはもっともな意見で、毎回こんな売り方をしていたら販売元のウィザーズ・オブ・ザ・コースト(以下:WotC)はプレイヤーからもショップからも信頼を失うでしょう。
こうした事態が起きた理由として一つ挙げられるのが、今回禁止指定告知を出したのが「統率者戦ルール委員会/Commander Rules Committe」という外部団体であるという点。
統率者戦は元々「エルダー・ドラゴン・ハイランダー/Elder Dragon Highlander (EDH)」と呼ばれる米国ハウス・ルールとして生まれた遊び方で、初期のルール整備や禁止カードの指定は有志の集まりである「EDHルール委員会」によって決められていました。この遊び方は徐々に広まっていき、後にWotCによって「統率者戦」として正式に認定されルール整備が行われましたが、禁止指定に関してはEDHルール委員会を前身とした「統率者戦ルール委員会」によって協議され、決定されています。
細かい沿革がまとめられたサイトがありますので、気になる方は以下のリンクへどうぞ。
今回のように一見すると商品展開と噛み合っていないような禁止指定が出た背景には、WotC外部の団体によって禁止指定が決められているというのが一因となっているでしょう。
この団体が全ての悪、という事を言いたいワケではなく、私が問題だと考えているのは「WotCは自社で一番力を入れて販売しているフォーマットの環境整備を外部組織に依存しているのでは」という点です。
今回の告知文も冒頭に「この記事は「統率者戦ルール委員会/Commander Rules Committee」による告知の転載です。」と記載されていて、WotCとしてどれほど今回の禁止指定に関与しているかが分からず、ルール委員会に責任を丸投げしている感があります。そうした姿勢がユーザーやショップに不信感を与えている感はあるので、改善して欲しいとは思いますね。
ユーザーの反応
今回の禁止指定について、先に述べた通り私個人としては「概ね肯定的」なのですが、他の人々はどう捉えているのでしょうか。SNS上でも賛否両論飛び交っているかと思いますが、この禁止指定に対する是非についてアンケートを取った方がいます。
The Commander RC just banned:
— Josh Lee Kwai (@JoshLeeKwai) September 23, 2024
-Mana Crypt
-Jeweled Lotus
-Dockside Extortionist
-Nadu
Overall, do you think this was:
この方、米国のEDHコミュニティ所属でYoutube上で動画も上げている人らしいんですが、今回の禁止指定に対して肯定的か否定的かのアンケートをX(旧Twitter)上で採ったところ意見はほぼ真っ二つ。投票数も2万近いので投票結果の信頼度もそれなりに高いと考えていいでしょう。
お国柄というのがあるので日本でも同様の結果になるかはわかりませんが「今回の禁止指定は不当だ!取り下げろ!」という意見の人ばかりではないということは覚えておいて頂きたいです。
個人的に思う統率者戦への付き合い方
自分はデッキパワーレベル5~6のデッキを統率者戦デッキを組む場合が多いですが、自分ルールとして「シングル価格が3,000円以上のものはなるべく使わない」としています。理由はいくつかありますが、その一つに「デッキのスクラップ&ビルドを繰り返すので、(そのデッキにとって必須だとしても)他デッキに使い回せない高額カードをビルドの度に買っていられない」というのがあります。
これはあくまで私の事情なので他の人に自分ルールを強制はしませんが、あくまで遊びである以上、無尽蔵に資金を投げうつことはできないでしょう。そのための線引きが自分の中にあった方が精神衛生上良いのではないか、と考えています。
「自分はこのデッキと心中するから、可能な限り強くするんだ!」という人を否定はしませんが、どうあれTCGにおいては禁止指定にまつわる様々なリスクというのは避けて通れない問題なので、今回の問題をきっかけにリスクと向き合う必要があるのかなと感じました。
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統率者戦について、以前からSNS等を見ていると「《魔力の墓所》って高額だけど必須パーツっぽいし持ってた方がいいよね…?」という意見が散見されました。私はこの意見については懐疑的で「自由に組めばいいでしょ」と常々思っていました。何度も言いますが、人によって統率者戦に対する向き合い方もお金のかけ方も様々。自分なりの考えがあったとしても、それを他人に強要したり、自分と相容れない意見の相手を攻撃するようなことはあってはなりません。自分なりの距離感を定めて、楽しく付き合うのが一番だと思います。
余談ですが、今回の問題についてWotCの開発部主席デザイナーである、マーク・ローズウォーター(愛称:マロー)に質問を送ったユーザーがいました。その質問とそれに対する回答がブログにて公開されていましたので、興味のある方はご覧になってください。
結び
今回はここまでとなりますが、いかがだったでしょうか。
あくまで私個人の意見ですが、遊びなんだからゲーム自体を楽しんだ者勝ちだと考えているので、禁止指定カードが出たからといってあまり目くじらを立てず自分なりに受け入れていくことが肝要だと思います。個人的には「他にも禁止にすべきカードあるやろ…《タッサの信託者》とか…」なんて思わなくもないですが、まぁ統率者戦で遊ばせてもらっている以上はルールを整備している人たちに過剰に噛みつくのも良くないと思います。「文句があるならルールを作る側に回れ!」とは昔から言われている話ですしね。
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さて次回は予告通り『ダスクモーン:戦慄の館 統率者デッキ』のレビュー記事を上げようと思います。早めに上げられるよう善処しますので、興味がある方はまた見に来てくださいね。
では今回はこれまで。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。