『聖書』における終末預言の「世界統一政府」は無い説
私は、『聖書』の終末預言における「世界統一政府」というのは無い立場に立っている。
「世界統一政府」が艱難期(7年の大艱難時代)の前に樹立されると主張する人々が挙げる聖書箇所の根拠は、ダニエル書7章23節である。
「世界統一政府」が終末に興ると主張する人たちは、この聖書箇所を「世界統一政府実現の根拠・預言」とするが、
全土を食い尽くすと世界統一政府はイコールではない。
参考として、画像は中国の「一帯一路」に協力署名した国。
あるいはこの一帯一路がさらにグレードアップする形での枠組み【例えば今のBRICSのような】ができ、それが「世界統一政府的なシステム」になるという可能性も考えられるが、
聖書預言の箇所に忠実に解釈するならば、「全土を食い尽くす」ということは"世界統一政府"ではない別の形――例えば中国の一帯一路のような経済征服――でも「全土を食い尽くす」と字義通りの成就が可能であるという点には留意せねばならない。
言い換えると、「世界統一政府」になりますよ、という聖書預言の箇所はないのである。
聖書預言はあくまでも「第四の獣が全土を食い尽くす」ということしか書かれていないので、 ある国が全世界を経済的に搾取し、食い尽くすという事象をもって「聖書預言の字義通りの成就」が可能となるのである。
また、この説には日本語訳のみで解釈することによる弊害も考慮し、アラム語原典を逐語訳しているサイトから引用をして検証させていただく。
こちらを見ていただければわかるように、原語においては「(第四の獣は)ことごとくを、貪ります」というように、「武力的、版図的な併合」というよりかは、「ことごとくを貪る」という解釈のほうが正しいように考えられる。
この箇所は、「全世界を併合する」と訳すか、「諸々の国、ことごとくを貪る」(食い尽くす)と訳すかのどちらかで、預言の解釈と結果が大きく変わる。
おそらく、「世界統一政府」の説に立つ人々は「全世界を併合する」と訳し、またその解釈に立っているがゆえに、「世界統一政府説」に至るのだと考える。
しかし私は、後者の「貪る、貪り尽くす」と訳し、中国の一帯一路のように「経済的に全世界を貪り尽くす」と解釈することも可能ではないか。
また、例えばBRICSは10の大国からなり、BRICSが全世界を支配する時代が、携挙後には間違いなくくるので、それが全世界を食い尽くす主体ともなりえよう。
「世界統一政府」があるとする人はメシアニックジュー神学者のフルクテンバウム博士の説を根拠としているが、
例えばフルクテンバウム博士は第二テサロニケ2章3節の「まず背教が起こり」のアポスタシアの解釈を後に「まず携挙が起こり」に修正していたりもする。 だから、フルクテンバウム博士が「世界統一政府」を現時点で学説として採用しているからといって、それに拘泥されすぎないほうがよいのではないか。今後、フルクテンバウム博士が「アポスタシアにおける背教と携挙」のように、自説を修される可能性もある。
また、筆者の問題提起として、「世界統一政府説」は、「"世界統一政府"が実現してないから携挙はまだ先でしょ」と「眠る要因」になるからである。
私はフルクテンバウム博士の「携挙には緊急性の教理がある」という立場に立っており、携挙は今日にでも起こりうると信仰する立場に立っている。
実はすでに第四の獣が現在進行形で全土を食い尽くしており、彼らの言う「世界統一政府」の聖書箇所が実はもう成就している、あるいはしかけているのだとしたら、「眠っている暇はない」のである。
であるから、この「世界統一政府」が艱難期前に興りますよ、という学説は、携挙の緊急性の教理を毀損する危険性もはらんでいる。
この問題提起は、イエス・キリストを信仰し、その来臨を待ち望む兄弟姉妹に、「目を覚ましているよう」に促す趣旨も含んでいることに留意されたい。
マルコ福音書13章31節-35節