稲とブドウを飲み比べてみた
この記事を書いている2か月ほど前の2023年1月、勤務先の同僚が保冷バッグを手渡してきて言いました。
「ごーださん(職場ではごーだとは呼ばれていませんが便宜上)。今までお世話になったお礼です」
お世話だなんてそんな、と言いながら保冷バッグを開けるとそこには1本の瓶が入っていました。手に取って驚きました。
ごーだ「こ、これは……稲とブドウじゃないですか」
同僚「はい。昨年酒の秋山さんにご一緒したときに薦めていただいた稲とアガベがとても美味しかったので調べていたら、ちょうど稲とブドウの抽選販売の記事を見つけて、応募してみたんです。そしたら当たっちゃいました。2本買ったので1本おすそ分けということで」
ここで「いや、悪いよ」とか「いや、受け取れないよ」とか言うのは酒飲みの風上にも置けぬやつです。
私は遠慮することなく、
「これ気になってたんですよ。嬉しいです、ありがとう」
と伝えて、しっかりいただいてしまいました。
稲とブドウ(TAMESHI OKE Series)
昨年稲とアガベのどぶろくを飲んで「これは美味しい」と感じ、その後も機会があれば飲むようにしていました。
その中で抽選販売というハードルのある稲とブドウはどうせ巡り合えないだろうなと諦めていたので、期せずして譲っていただけたときはとても嬉しかったです。
ただ、そのぶんもったいない気持ちも強くあったので、何かきっかけが無いと抜栓できないなとも思っていました。
そして2か月が過ぎた頃、新しい情報が。
それは稲とブドウの正式リリースの情報でした。
手元にはまだ抜栓すらしていない稲とブドウの実験酒があります。
これは正式リリース版と飲み比べて楽しむチャンス!
すぐに発注したことは言うまでもありません。
稲とブドウ(CRAFT Series)
飲み比べてみる
役者はそろいました。
さっそく飲んでみることにします。
まずは実験酒のほうから。
立ち香は艶のある干しぶどうのような香り。
割としっかり感じられますが明らかに日本酒の香りではありません。
口に含むとスッと舌先を滑りわずかに遅れて酸味が感じられてきます。
チリチリした刺激とともに甘みが乗っかります。酸味が少し強く出てきます。
含み香は熟したぶどうで、しっかり感じられます。
後口は酸で〆。前半と後半で見せる顔がまったく違います。余韻は比較的短め。
次に正式リリース酒。
立ち香はほんのりぶどうの香り。
強くはありません。
口に含むとパッと広がる甘酸。
チリチリした刺激もありますがとろみを感じさせるテクスチャです。
含み香はぶどうの香りですが、いくぶん控えめです。
後口は酸で〆。口に入ってから喉に落ちるまで、一貫したテイストです。余韻は短め。
実験酒と比べると、正式リリース酒は全体のまとまり感がものすごいです。
正式リリース酒は、粗い部分をカンナで削って丸くしたようなバランスの良さが非常に際立ちました。正式リリースの名に恥じぬ素晴らしい出来だと思います。
それに対し、実験酒は香りや酸味が少しバラバラな印象を持ってしまいます。
ただ、一概にどっちが上、というのは決められません。
正直どちらも美味しいので。
特に実験酒にある熟したぶどうの含み香はとても魅力的で、これが欲しいから何杯も飲んでしまうというところがあると思います。
同じ米、同じぶどう、同じ環境。
それでこうも味が変わるのかと驚きました。
微生物という生き物を相手にしている醸造という技術で、ここまで細部にこだわれるものなのか、と思いましたね。
ラベル情報を記載しておきます。
ちょっと驚いたのですが、実験酒も正式リリースも製造年月は同じ2022年12月なんですね。
ほぼ同じ時期に違うタンクで仕込んでたってことかな。
どういういきさつで味に違いが生まれたのか気になりますね。
TAMESHI OKE は前述のとおり同僚からのいただき物です。
CRAFT シリーズのほうは浅草橋サケストリートで購入。
500ml で2,950円でした。
クラフトサケについてすこし
クラフトサケというここ1~2年で広がってきた新しい潮流。
清酒醸造免許の新規取得ができない問題や、清酒に比べてその他醸造酒の酒税率がとても高い問題とかありますが、いわばそれらをバネにして新しい味・新しい文化を切り開こうとする姿勢はとても尊敬するし賛同します。
稲とブドウはいわば清酒とワインの合いの子のような存在です。
こういったおもしろいお酒が生まれてくるタイミングに立ち会えているのはとても興奮しますよね。
未開の地がとても広がっている領域だと感じます。
これからも期待しています。
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