飲み比べをするときは共通項を探してみるのも楽しいという話
新酒ラッシュですね……
自粛ムードで外食が減ったのもあり、酒販店への応援の気持ちもあって、例年になく冷蔵庫がお酒でパンパンです。
生酒も、今月でお終いの蔵も結構出てくるかもしれませんしね。
頑張って、買っては飲んで、飲んでは買っての循環器と化します。
お酒のご紹介です。
陸奥八仙(むつはっせん)
青森県八戸市にあります八戸酒造株式会社。
創業は1775年。
この時代のこの地では酒造りが盛んにおこなわれるようになり、岩手県中部から青森県東部を治めていた南部氏の名を取って、この地出身の杜氏を南部杜氏と呼ぶようになりました。
245年を超える老舗蔵です。
飲んでみましょう。
上立ち香は華やかな吟醸香。
口に含むとスッと中心をとおるみずみずしい酸が感じられます。
いくぶんとろみのある中間。リンゴのような香りが鼻を抜けていきます。舌奥には渋み。チリチリした辛みが舌先に。
後口は甘渋で締め。余韻は比較的長めです。
華やかながら甘みは抑えられており、辛口に振られているバランスです。
みずみずしさと落ち着きの共存が素晴らしいですね。
ラベル情報を記載しておきます。
White Knight
旬限定 生原酒 特別純米酒
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
精米歩合:麹米55% 掛米60%
アルコール分:16度
製造年月:2021.02
購入は大阪府茨木市のかどや酒店。
White Knight は青森県の3蔵の合同企画で造られたお酒でして、陸奥八仙のほか、鳩正宗、田酒の2銘柄が出ています。
この3商品に共通するのは、酒米に「華吹雪」を使用していること、精米歩合を55%で統一することだそうです。
(陸奥八仙は掛米60%って書いてありますね……その辺はゆるい感じなんでしょうか)
同じ酒米、同じ精米歩合でも、蔵によって全然変わるんだよ。
同じ青森の騎士であってもそれぞれ個性があるんだよ。
そんなメッセージが込められているんでしょうか。
・・・
さて、陸奥八仙以外の2酒も当然飲んでいます。
飲み比べてもいます。
同じ日に3本届いて、全部同じ White Knight って書いてあるんだから当然試しますよね。
その結果、もちろん3本とも全然違う味わい。
鳩正宗は甘みありつつスパッと切れる刀みたいな味だし、田酒は軽やかながら奥行きのある深みのある味。
三者三様なのです。
でも、それって実は当たり前なのです。
だって、3本に共通しているのは酒米と精米歩合(とラベル?)だけなんだから。
それ以外は全部違う。
麹も、酵母も、水も、醸造責任者も、なにより蔵が違う。
蔵が違うってことは、酒造りの思想が違うんですね。
これはもう決定的。
どちらかといえば、こういう時は「何が同じなのか?」のほうが、題材としては建設的だと感じます。
つまり「華吹雪という酒米を使って造るとどんなお酒になるのか(どんなお酒を造りたくなるのか)」を、3つの蔵のお酒から考える。
そのほうが見えてくるものがきっと多いんじゃないかなと。
酒米に限らないのですが、酵母であっても醸造技法であっても、飲み比べをするときは共通項を見つけるほうが、私は楽しいですね。
何が違うのかを探すより、けっこう難しいです。
・・・
陸奥八仙、鳩正宗、田酒の White Knight を飲んで、何が共通してるんだろうと酔った頭で考えました。
一つ目は「華やかさ」。
立ち香からしっかり香るお酒が多いですね。でも果実香ではなく、米の香りもどことなく漂わせる香り。
二つ目は「軽さ」。
非常にすっきり仕上がっていて、喉を通った後に口には何も残らない潔さのようなものを感じます。
三つめは「芯」。
渋み、とも言い換えられるかもしれません。
モザイクのように少し残る雑味がアクセントになっている感じ。
きっと酒米「華吹雪」という名称からも、そのあたりの影響があるんだろうなと思います。
あくまで私の所感ですし、定量的でも官能的でもないので悪しからず。
でも、美味しいお酒を口に含みながら、ああでもないこうでもないと一人考える時間が、私は大好きですね。
ちなみに Knight と謳って3種類。
あたかも小説の三銃士みたいですよね……
(どの酒が、誰に相当するんですかね。そういうのを考えるのも楽しいと思います)