推しメンがグループを移籍しても前のグループを応援し続けられるのか問題
これを書いているのはとある快晴の午前中。
家の掃除機掛けを終えて一息ついたところです。
掃除って、考え事をするのにちょうどいい運動なんです。
お酒のご紹介です。
雄東(ゆうとう)
栃木県小山市にあります杉田酒造。
創業は1876年。もともとは「優等正宗」という銘柄名でしたが、昭和初期に品評会で8回連続優等賞を受賞し、当時の税務署長が「関東」の「英雄」であると褒め称えた事から「雄東」に改められたそう。
普通酒から大吟醸まで全量「佐瀬式槽搾り」で丁寧に搾っています。
今回のお酒は2020年1月出荷の純米無濾過生原酒。
抜栓は2020年2月2日です。
上立ち香は高級アルコール。
口に含むとリンゴの蜜のようなくっきりした甘みと両サイドから酸が飛び込んできます。
中間もとても瑞々しくジューシィ。含み香にも若干のリンゴを感じます。喉奥にうっすらと渋を感じますが、そのおかげか全体の輪郭はぼんやりとしません。
後口は地続きの酸をそのまま残します。余韻はふんわりと長めに続きますが、ベタっとしない心地よい甘さです。
裏ラベルの内容を記載しておきます。
雄東 純米無濾過生原酒
原料米:あきた酒こまち100%
精米歩合:66%
アルコール度数:13度
製造年月:2020年1月
裏ラベルにもあるように、今回のお酒はアルコール度数13度の生原酒。
アルコール感はほぼ感じません。非常に飲みやすくジューシィな品質。
価格は1.8Lで2,596円(税抜)。
購入は東京都豊島区の地酒屋こだまです。
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現在「雄東」を造っている杜氏は菊池譲氏です。
私はかれこれ10年近く菊池杜氏のファンで、そのお酒も毎年楽しみにしています。
6年くらい前、共通の友人のお引き合わせで菊池杜氏とも既知を得まして、その人柄も含めすっかりファンになった私。
日本酒に限らない話ではありますが。
最初はお酒それ単体でファンだったとしても、バックボーンを知るとバックボーンを含めたファンになります。そして、バックボーンの重要なウェイトを占める「造る人」を追いかけるようになるのです。
神奈川の蔵、茨城の蔵と渡り歩いた菊池杜氏が、昨年から杉田酒造に移り、新たな環境で酒造りされると聞いて、まずは率直に残念だと感じました。
我々飲み手もそのお酒・銘柄を一緒に育てたい、という思いがあるはずと思っています。お酒そのものも造っている人も風土も水も信念も好きならば、それを一緒くたにした大好きアピールをしたいのだと。
「このお酒美味しいよ、これを造っているのはこんな人で、この蔵はこういうところに力を入れていて……」と、バックボーンを含めて語りたいわけです。
それが、蔵を移られてしまうと、バックボーンが消えてしまう。そのお酒にまつわる歴史が黒く塗りつぶされるような気がしてしまう。とくに、人間関係、円満とは言えないかもしれないゴタゴタが世の中には溢れています。言いたいことも言えないこんな世の中じゃポイズンなのです。
もちろん私は知っています。どこどこで造った何年間があるから、今のお酒につながっていると。いろいろな経験を経ながら、お酒も人も成長し輪が広がっていくと。
一つのところにとどまるのも勇気なら、渡り歩くのも勇気。本人の意図しないことも多いでしょうが。
酒販店さんはひときわ大変だと感じます。
人に惚れ込んで取引しているのならなおさらです。
取引する相手は酒でも人でもなく、メーカなのですから。
ただ、そこで悩める酒販店さんが、私は大好きです。
結局、飲み手は飲んで応援するしかないのです。
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新生「雄東」。
飲んでみれば、手探りながら菊池杜氏らしいキュートな酸がしっかりと感じられ、これからの出荷も楽しみになります。