(29日目) 遠い日の花火
たまにある情景を見かけることがある。
街角、駅の雑踏、深夜放送のアニメ、バライティ番組…
そこでは若い男女が見つめ合い、寄り添い、すれ違い、はたまたけんかして、仲直りをし、ソファに寄り添い目を閉じる。
ただ好きな相手のことのみを思い続ける毎日。相手のことで頭がいっぱいで、一生懸命空回りして、想像して、勘違いして、たまに報われる。
こういう情景を目の当たりにして、ああ、いいなぁと人並みに感じるくらいまだ鈍っちゃいないんだが、恋がしたいという欲求はたぶん、もうほとんどない。
正確には「あのころ」の恋愛をしたいという欲求がない、ということだが。
明日は声をかけよう。今日は2回目が合った。それだけで一喜一憂していたあのころ。
両思いになれたとしたら、どんなに幸せな時間を過ごせただろうか。なんてそんな光景を見るたびに甘酸っぱい(そうか、これがあの伝説の「甘酸っぱい」という気持ちなのか!)心持ちに苛まれる自分が少しかわいい。大概そういう時はアーロンチェアの上で体育座りになったりするかわいいおっさんです。きもい。
もし僕に子供がいたとしたら、きっと彼ら彼女らには僕が味わえなかった青春を味わって欲しいと心から願うと思う。
今の自分があのときと同じ行為をしたってもうそれは「ごっこ」でしかなく、やはりあの時の「恋」はあの時にしかできないのだ。悲しいかな。
けれど、いいのだ。きっと。
あれは遠い日の花火で。花火は遠くから眺めるものなのだ。
遠くから眺めているからきっと美しくみえるものなのだ。
今日のつぶやき
カメントツさんのこぐまのケーキ屋さんシリーズいいですよね。
版画っぽい書き方も好き。