「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 @21_21 DESIGN SIGHT
一ヶ月半ほど前、ほどよく晴れて二月だというのに息を弾ませて歩けばコートが荷物になるような気持ちの良い陽気の日に、21_21 DESIGN SIGHTに行ってきた。
その日は赤坂で用事があったので、そのまま歩いてTBSの裏手の路地を抜けてミッドタウンへ向かった。まだ新型コロナの話題はさほど世間を騒がせてはいなかった頃で、赤坂も六本木の街もいつも通りたくさんの人で溢れていた。
目的はこちらの展覧会。
『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』だ。
(2020年2月22日現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休館中)
26人のデザイナーたちの仕事の裏側。スケッチやモックアップというそれぞれのデザイナー達の仕事が市場にリリースされる前の思考プロセスそのものが、展示されている。こんなものを見られるチャンスはなかなか無い。
完成品を見てその裏側を想像することは日常的にしているものの、やはり目の前に静かに力強く佇んでいるそれらの現物は、想像を超えた解像度でメッセージを伝えてくる。
会場に入った瞬間、かつて学生時代にお世話になった、伊藤隆道先生が映像でお出迎え。
伊藤先生は金属で出来た柱状のオブジェクトを動かすキネティックアートの第一人者だ。
かつて僕がゼミ生だった頃に、レストランで銀色に輝くフォークやナイフを手に持ちクルクル回してその様子を眺めている伊藤先生を見て「うーむ。」と唸ったことがある。ちょっとでも時間があれば彼はそうしているのだった。終いにはケーキの包み紙のアルミホイルも棒状に丸めて曲線を作り、それをクルクル回してしげしげと眺めていた。僕は再び「うーむ。」と深く唸った。好きこそものの上手なれとは良く言うけれど、目の前の人がそれを体現していることに感動しつつ自身を反省したのだった。
グラフィックデザイナーの思考過程はやはりとても参考になる。
人の手が生み出すモノが持つ強さや躍動感に心が躍る。
彼らがとにかく手を動かしていること、その事実に改めて自分の制作過程やもの作りの姿勢を振り返る。
プロダクトや建築系のデザイナーのモックアップやスケッチも大変興味深かった。その中でも、とりわけ山中俊治さんのスケッチには大変に感動してしまった。
この展示はもの作りに関わる人間としては必見の展示なのではないか。デザインミュージアムを作る構想も進んでいるようだけど、どこかの美術館の常設展示になって欲しいと思う展示だった。
『手考足思』とは陶芸作家・河井寛次郎の言葉だけど、改めてその意味を噛みしめる良い機会でした。
『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』
2019年11月22日(金)- 2020年5月10日(日)
http://www.2121designsight.jp/program/inspiration/