秋田の24歳が提案する第3の働き方、バイトでもボランティアでもない「クエスト」:LocalQuest高橋新汰
東京を中心とした首都圏ばかりが注目されるスタートアップ界ですが、ローカル地域に目を向ければ、その地域に根付いた課題解決に向けて着実に歩みを進める事業がたくさんあります。
GOBも、高知、秋田、鳥取、青森など、各地の地方自治体、企業と連携したアクセラレーションプログラムの運営などを通じてそうした動きをサポートしてきました。
今回インタビューしたLocalQuest代表の高橋新汰(たかはし・あらた)は、GOBが過去に秋田県やハバタク株式会社と連携して開催したアクセラプログラム「おこめつ部」の参加者。12月より、GOBの「客員起業家」として事業を推進していきます。
「クエスト」として、アルバイトともインターンとも違う第3の働き方を提案し、地方の人材不足解消に貢献しようとする彼の事業とは——。
人手不足に悩むローカル地域の事業者、ネットでは見つからぬ求人
髙橋新汰(以下、略):「LocalQuest」は、地方の学生と企業のマッチングに特化した求人プラットフォームです。
学生がアルバイトを探す時、例えば東京であればネットの求人募集サイトを見て探すのが一般的かもしれません。しかし、秋田のような地方の場合、事情は異なります。ネットで検索しても、大手コンビニやスーパーなどのアルバイト以外の求人数はかなり限られています。実際、周囲の学生にアンケートをとったところ、約8割の学生が知り合いの紹介で働いていました。
その一方で、人手不足に悩む事業者は数多く存在します。こうした両者の課題を解決するために立ち上げたのがLocalQuestです。
人手が欲しい事業者は、フォームから求人の掲載を依頼。すると、LocalQuestのサイト内で「クエスト」として求人を掲載できます。学生は、これらの中から興味を持ったクエストを受注。その依頼を達成することで、報酬を受け取ることができるという仕組みです。
リソース不足の地方企業と、体験に魅力を感じる学生のマッチング
地方に特化している以外にも、LocalQuestならではの特徴が3つあります。
まず1つが、仕事の内容が「ド短期」であること。インターンやバイトと異なり、多くが1日〜2日で完了する求人です。そのため、普段は大学やアルバイトでまとまった時間が取りにくい学生であても、土日や空いた時間で応募することができます。
2つめが、報酬は金銭ではなく、「モノ」や「体験」であること。人出不足が深刻な地方企業の多くは、また金銭的なリソースも限られています。短期とはいえ、求人に避けるお金は限られています。一方で、学生の側も、実は報酬よりも働くことで得られる経験に魅力を感じている場合がほとんどなんです。
過去に掲載したクエストの中には「羊毛のクリーニング」「どんぐり拾い」「茅刈り」など、日常では体験しないユニークな仕事もたくさんあります。こうした他では得難い経験お金以上に学生にとって魅力となるのです。
3点目は、LocalQuestのメディア機能。クエストを依頼する際、私たちが取材などを行い、依頼主を紹介する記事を制作します。依頼主の働き方や人柄の理解の助けとなるような記事を掲載することで、学生側の共感を促し、クエスト後も長期的でゆるやかな関係性づくりを助けます。
アイデア→プロトタイプ、複数の方向転換を経て
彼がこうした事業を考えるきっかけとなったのが、大学生で参加した、秋田県が主催するアクセラプログラム「おこめつ部」への参加でした。現在の事業構想にいたるまでの経緯を聞きました。
高橋:大学3年生でおこめつ部に参加した私が最初に考えたのは「旅行×対話」のアイデアでした。首都圏の大学生を秋田へ連れていき、秋田の大学生とのグループ旅行をするというものでした。旅行の中では、秋田で仕事に誇りを持ちイキイキと働く大人たちとの対話を設定したり、彼らの生き様から振り返理、自己分析をするワークショップを開催したりといった企画も提供しました。
価値検証のためのプロトタイプとして、こうした旅行を計6、7回ほど開催。ユーザーヒアリングやアンケート調査ではかなり満足度の高い評価を受けていましたが、このアイデアを実際のプロダクトにする上で、学生が支払える価格設定にすることが困難でした。そこで、新たに方向転換。これまでのプロトタイピングでの経験を踏まえて、ゼロからアイデアを練り直すことにしました。
目をつけたのは、グループ旅行で好評だった、大人との対話です。
大学生は普段、バイトやインターン以外で親や先生以外の大人と関わる経験がほとんどありません。ましてや、仕事や生きることをを前向きに楽しんでいる大人となればなおさらです。
もう1つ、旅行を企画する中での気づきは、「共同作業」が自然と仲の良さを育む、ということです。立場の違う人間同士でも、旅行の中で共同作業することで、普段は心のうちに隠している思いを、自然と打ち明けられる空間や空気感が作られていました。
そして、こうした着想から、さらにいくつかの方向転換を重ねた末に行き着いたのが現在のLocalQuestの形です。
LocalQuestのモットーは「気軽に、自然に、体験ベースに」。
これまでのアイデアで、対話を通じての自己分析を価値として提供してきましたが、「自己分析で軸は分かったけど、具体的に何をしたいか想像できない」といった声もありました。そこで、LocalQuestでは、考えるよりもまず体験を起点に、そこから興味や情熱の火種をつくることにフォーカスしました。
また、仕事を一緒に手伝うという共同作業は無理なく関係性を構築できますし、これなら空いた時間に、気軽に参加してもらうことができます。
トライアルで25名のマッチング、リリースと今後の展望
LocalQuestは、現在トライアル期間中ですが、2019年7月の立ち上げからおよそ4ヶ月で6つのクエストを掲載。25名とのマッチングを実現してきました。
最後に、今後の展開を聞きました。
髙橋:現在は、求人のプラットフォームとして広告、マッチングのみの展開ですが、次のステップとして、コワーキングスペースのオープンを考えています名前はクエストにちなんで「ギルド」。特にローカルな地域では、ネットよりもリアルな場での影響力が大切になります。多くの学生が知り合いづてにアルバイトを探すことからもわかるように、まだまだそうした風土が強く根付いています。ですから、LocalQuestとしてもリアルな拠点を持つことで、より多くの事業者、学生に存在感を発揮していけたらと思っています。
こうした構想をクリアしていければ、秋田だけでなく他の地域でもLocalQuestと同じモデルのサービスを横展開するつもりです。
LocalQuestは地方で働く方が抱える、「求人広告を掲載したいけど高すぎる」「掲載しても人が集まらない」といった悩みを解決します。そしてLocal Questが地方で働く人々の助けとなるような存在になれたらと思います。
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