夢のはなし第三夜『ただそこにいるだけの話』
気がつくと私は、畳の何もない部屋に大の字で横たわって、天井を見ていた。
造りは古そうだが、木は朽ちていないしむしろ新そうで隙間なく組まれた綺麗な焦茶色の天井だ。
ふと目を斜めに右側に向けると、きみどり色の、綺麗で新品のような畳が広がっていた。
畳の広さは20畳以上はありそうなところまで確認できる。
左側には畳の外側に木の枠があるから、そこから向こうは別の部屋なんだろう。
そうしているうちに、自分に動く気が全くないことに気がつく。
何も考えていないし、考えようという気もない。
ただただ天井を見つめ、自分が綺麗なきみどり色の畳の上に大の字で寝そべっている。ということだけを認識している。
脳だけがなくなって、目だけが景色を映してくれているような、でも生きている。というような感覚だ。
そうしていると、頭の右上の方から左側へ人が歩く音と気配が聞こえる。
ただ私は一瞬気をやるだけで、その足音の主が誰なのかなど考えもせず、まだまだ目は天井を見ながらその「場」を感じ取っていた。
足音は私の頭の方で一瞬立ち止まり、私が寝ているか起きているかを確認するようにちらっと見て、去っていった。
生活音も聞こえない、鳥の声も自転車の音も、車やトラックのうめきも。
綺麗なきみどり色の中で、私は再びしずかに目を閉じた。
おわり
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