夢のはなし 第一夜『始まりの季節、妖しい体験』②
外に出ると、外はもう暗くなっていた。
会費は前払いではあったものの、思い切って抜け出した爽快感と少し悪いことをしたような気持ちはちょっとした高揚感を感じさせた。
すっかり仲良くなった3人はそのまま少し離れたコンビニへ行き、各々がサイダーを買い公園で乾杯した後、ヤマグチの買った奇妙な色のグミやナチョスを食べながらなんでもない話をたくさんして22時には家路についた。
次の日、昼からの授業があった僕は少し早めに大学へ向かっていた。昼食にいい穴場の店を探すため学校の裏側の道を探検がてら歩いていたのだ。
すると、木が鬱蒼と茂っている区画を発見した。と同時に、そこを覗き込んでいたヤマグチと瞬間目が合った。
一瞬驚いたような顔をしたが、僕に気づくとなんだあという表情に変わり小走りで近づいてきた。
「お前こんなところで何してんだ?びっくりしたじゃんよ。」
「ヤマグチくんこそ。何してたのさ。」
「散歩してただけだよ。あ、おまえ授業まだだろ。時間あるよなあ?」
昼食を一緒に食べるとか、そういう話だと思い、「うん。あるある。」と即答する。
「なあ、カッパ見に行かね?」
僕は冗談はやめてくれと笑った。
「カッパ、いるんだよ。行こうぜ。」
知り合って日も浅いがそんな冗談をからかって言う奴じゃないし、その顔はタヌキでも見つけて今から追いかけようとする少年のように楽しげだったので、僕は戸惑いつつも流されるままにヤマグチの後を着いて行ってしまった。
つづく
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