夢のはなし第三夜『捜索依頼』①
日常のルーティーンとして、寝る・出勤する・食事をするそれだけの毎日を繰り返す。
そんな私の、たまの予定のある休日が訪れそうだ。そう、“友達と出かける”のだ。
今日は金曜日。
明日は遊ぶ日だと少し浮かれた気分になったので、いつもなら無視をするのだが、何気なくSNSのDMに来ていた捜索依頼を受けてみることにした。
捜索依頼のチラシには1歳ほどの赤ちゃんの写真と特徴と捜索エリアが詳細に記載してある。依頼主は、大事にしたくないので大々的な捜索はしないようにとのことだ。
私は軽い気持ちで明日友達と出かけるついでに捜索依頼をこなすことにした。
当日の朝、スマホの充電器を外してさあ出かけようと画面を見ると、充電が50パーセントを切っていた。しまったと思ったが、待ち合わせ時間が迫っている。
モバイルバッテリーを持っていくことも考えたが、最近使っていなかったのでどこにしまっていたか思い出せない。
充電器壊れちゃったのかなあと思いながらも、遅刻はしたくないので諦めて少ない充電のまま持っていくことにした。
友人との待ち合わせは、すこし都会に出たところにあるここの辺りで一番大きなホールである。そこに期間限定の体験型展示があって、それを見に行くつもりだ。
捜索依頼のDMもSNSで今日見に来る予定を投稿した反応として来たものだ。その予定に合わせてということなのか捜索場所もそのホールの中ということだった。
友人と合流すると、さっそく中に入ることになった。
ホールは、ガラスの重たい扉でできた入り口から入ると、天井がとても高くていつも思わず見上げてしまう。1階のロビースペースも広々としていて、その真ん中から2階へ続く長いエスカレーターがのびているのが印象的だ。
そうしていつものように景色を見回していると、怪しげな男が一人で少しまわりを気にしながら歩いているのが見えた。
細身の長身で、見た目は子供向けアニメなどに出てきそうないかにもワルモノという感じだ。
なんとなく赤ちゃんを探していることは悟られてはいけないような気がした。
本当にワルモノだったら、赤ちゃんが迷子になっていると知ったら何をしでかすか分かったものではない。そう思ったのだ。
そんな失礼なことを考えながら、私は友人との予定を満喫しつつ捜索を進めていくことにした。
幸いその怪しい男は見たこともないような、グレーで光沢が強い、ほぼ銀色と言える色のスーツを着て真っ赤なネクタイを締め、白い中折れハットを被っていたので遠くからでもすぐに見つけることができそうだ。
つづく
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