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【数字で見るテニス】ダブル1st理論

お疲れ様です。GOATです。

今回は,ダブル1stについて論じていきたいと思います。

きっかけ


この記事を思い立ったきっかけは,この試合の解説を考えていたから。

2006年ジャパンオープン

当時世界ランキング1078位の鈴木は,WCにて本戦に出場。

あれよあれよという間に勝ち進み,準々決勝にてフェデラーとの対戦を果たす。

世界最強vs1078位。

当時はフェデラー最強時代。
強すぎてテニスが面白くない,と言われた時代です。
2006年,フェデラーは92勝5敗を記録。天衣無縫の活躍を見せていました。

このあまりにも歪な組み合わせに,多くのテニスファンはフェデラーの圧勝を予想したのではないでしょうか。

しかし鈴木は全く諦めていません。
驚くほどスムーズな動きと,チャンスを絶対に逃さない動き。

常にボレーを狙い続け,フェデラーに圧力をかけていく展開。
結果として1stセットは,早々にブレイクしてそのままセット獲得してしまったのです。

当時のフェデラーは,セットすらなかなか落とさないほど圧倒的なパフォーマンスを見せていました。
そのフェデラーから日本人がセットを奪う。
これはいけるのではないかと,会場のボルテージも最高潮に達します。

1stセットを奪取する鈴木貴男

2ndセット、3rdセットと奮闘する鈴木貴男ですが、あと一歩のところで敗れてしまいます。
スコアは6−4・5−7・6−7という大接戦。
日本のみならず、世界を驚かす結果とも言えるでしょう。

実際この大会、フェデラーは鈴木以外の選手からセットを奪われていません。

鈴木貴男が見せた、ダブル1st戦術

この試合、鈴木貴男は2ndサーブでも強気の攻めを見せます。
と言うかもはや、2ndサーブなのか疑わしいレベル。

2ndサーブは回転量を上げてin率を上げるというのが定石というイメージ。
そのイメージからすると、ダブル1stサーブというのはあまりにも無謀な気がします。

ダブル1stサーブには、どれくらいの成功率が必要なのか

しかし疑うだけでは、何の洞察も得られない。
実際に、ズべレフやメドベージェフは王者ジョコビッチを相手に、ダブル1stサーブを採用していた気がします。

鈴木貴男を含め、彼らはどのような計算でダブル1stという戦術を採用したのか。一緒に考えていきましょう。

最初に、サービスゲーム獲得のために必要な得点率を考える。

これは簡単に出ますね。例えば40−30からゲームを奪うパターンを考えると
自分4点・相手2点。つまり必要な得点率は66,666・・・・%

もちろんデュースを考慮すれば、必要な得点率は下がります。
1回のデュースでゲームを奪うパターンは、
自分5点・相手3点。つまり必要な得点率は63,333・・・・%

デュースが長引くほど必要な得点率は下がってくるのですが、毎回のサービスゲームでデュースを狙うわけにはいかないので、今回は最低限必要な得点率を率を66,666・・・=67%で計算していこうと思います。

次に、ダブル1stサーブが入る確率を考えていく。

例えば1stサーブが60%の確率で入る選手の場合、ダブル1stをした場合のサーブのin率はどれくらいになるのか。
それは次の計算式から算出できます。

$$
(0.6+0.6(1-0.6))=0.6*1.4=0.84
$$

この場合、1stサーブの得点率はどれくらい必要なのか。
1stサーブの得点率をyと置くと

$$
y*0.84>0.67
y>=0.8
$$

つまり、1stサーブin率60%のプレーヤーならば、1stサーブ得点率が80%を超えると,ダブル1stが有効になることがわかります。

一般化するとこんな感じ。

$$
y(x+x(1-x))>=0.67
$$

$$
y(2x-x^2)>=0.67
$$

x:1stサーブin率
y:1stサーブ得点率

理論上は、この方程式に当てはまるプレーヤーは全員ダブル1stを行った方が良いことになります。

実際にいろんなプレーヤーのスタッツを見てみる

2021 TourFinal
ズべレフ:1stサーブin率 :71.9% 
     1stサーブ得点率:78.3%
tennisabstract.comより

このスタッツを先ほどの計算式に当てはめると

$$
0.783(0.719+0.719(1-0.719))
=0.72>=0.67
$$

つまりズべレフはこの試合,理論上はダブル1stで問題なかったということです。
2ndサーブが唐突に入らなくなるなら常にダブル1stにすれば良いのに

もちろんスタッツから計算したものなので,結果論と言われるとそれまでです。

しかし,2ndサーブに悩むくらいなら1stサーブから得点するパターンを磨いた方がゲームを獲得できるよということは,声を大にして伝えたいですね。

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