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ビジネスの観点から見た落合監督の思考・行動の特徴を考えてみた

落合博満氏は指導者の経験がないにもかかわらず、一年目からリーグ優勝を果たすなど、常勝チームを作り上げた。ビジネスの観点から見ると、落合監督の行動・思考はどのような点に秀でているのだろうか。

以下では、
 目的志向
 課題発見力
 プロフェッショナリズム
に分けて考えてみた。

1. 目的志向であること
ビジネスでの行動には、その行動を起こすための目的が必要だ。例えば次のようなものがある。

 - 仮説を検証するために顧客、社員などに意見を聞く
 - 関係者に納得してもらうためにミーティングを開催する
 - 仮説を生み出すために、少人数でブレイン・ストーミングを行う

落合監督の場合、目的志向があらわれた采配の最たるものは、2007年日本シリーズ第5戦でのパーフェクト継投ではないだろうか。8回まで相手打線をパーフェクトに抑えていた山井投手を降板させて、ストッパーの岩瀬投手をマウンドに送り込んだ。日本中の評論家、野球ファンの意見を二分した采配だ。

落合監督からすれば、自分が監督でいる目的は「チームを日本一に導くこと」。これしかない。山井投手がもし完全試合を、それも日本シリーズで達成すれば、それはプロ野球史上に燦然と輝くものになることは百も承知だったはず。しかし、チームという船を目的地に導く者として、山井投手の個人記録ではなく、他の選手・フロント・スタッフなどチーム全員の幸せを考えて、高い確率で優勝することを優先させたのだろう。

2. 優れた課題発見力
ビジネスでは常に課題を発見し続けなければならない。課題を解決する力よりも発見することの方がはるかに難しいし、価値がある。

課題発見の難儀な点は、見る人の視点の高さ、視野の広さによって課題の捉え方が異なるということだ。つまり、課題というものは、見える人には見えるし、見えない人には何も見えない。それが課題発見の難しさだ。

ところで、課題とは、「理想と現状との差」である。なので、適切な課題を捉えるためには、次の二つが必要となる。

 適切な理想を掲げる
 現状を正確に把握する

落合監督が持つ課題発見力の真骨頂は、荒木選手と井端選手のコンバートだろう。アライバのコンバートでも評論家・ファンの意見は分かれ、どちらかというと「今うまくいっているのに、なぜ二人の守備位置を入れ替える必要があるのか」という否定的な意見の方が多かったように思う。

しかし、落合監督が持つ「現状把握力」はすばらしかった。井端選手の足の動きが少しずつではあるが鈍りつつあり、以前は凡打になっていた打球がヒットになっていることを、落合監督は日々の定点観測により掴んでいた。ここに「井端選手の守備力の衰え」という課題を発見し、その課題への対応策として二人のコンバートを実施したのだろう。

3. 徹底したプロフェッショナリズム
サラリーマンとプロフェッショナルとの違いはどこにあるのだろうか。端的に言えば次の違いだろう。

 会社に忠誠を尽くすのがサラリーマン
 仕事に忠誠を尽くすのがプロフェッショナル

落合監督が仕事に全精力を傾けることを表しているのが、本書で記載されている次の言葉だろう。

「監督が誰であろうと何も変わらない。それぞれの仕事をするだけだ。」

チームの一員であること以前に、一人のプロフェッショナルとして力を発揮することを求める。これはメンバーシップ雇用とジョブ型雇用との違いにもあてはめることができないだろうか。この環境で輝いた選手の一人が本書でとりあげられている小林投手だった。

4. まとめ
落合氏は、臨時コーチを除くと、さしたる指導者経験なしでドラゴンズの監督に就いた。キャンプ初日での紅白戦の実施、キャンプでの6勤1休、川崎投手の開幕投手起用など、やはり話題集めでチームを運営するのかと思っていたところ、なんと就任1年目からリーグ優勝。その後もドラゴンズは毎年のように優勝争いを演じるようになった。「落合監督にはどのような方法論があるのだろうか」と何冊か落合氏に関する本を読んでみた。本書もそのうちの1冊だ。

何冊かの落合本を読んで感じたことは、やはり落合氏はチーム運営、リーダーシップの発揮の仕方などに独自の考え・方法論を持っている、それらは自身の選手時代から考えてきた、ドラゴンズ黄金期には自分の方法論を実践してみたのだろう、ということ。

落合氏の考え方にはビジネスでも通じるものがある。それがここでまとめた3つの事柄である目的志向、課題発見力そしてプロフェッショナリズムだ。

#読書の秋2021 #プロ野球 #中日ドラゴンズ #嫌われた監督落合博満は中日をどう変えたのか

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