YAMAP CXOになって2019年の振り返り
アウトドアサービスのYAMAPのサービス運営に参画して約1年が経ちました。年末というタイミングもあり、この1年間のYAMAPにおける活動を自分の視点で振り返ってみようと思います。
1. 外部顧問としてUIデザインの監修
YAMAPとの関わりは2018年の暮れに、FacebookでYAMAP春山社長から直接お声掛けいただいたのがスタートになります。
私が趣味で登山をしていた事に加えYAMAPのユーザーだった事もあり、直接お話を伺いました。春山さんのビジョンに共感し、また自分の経験が役立てる余地が大いにあると感じたので、その場でお手伝いさせていただく意向を伝えました。ここから4ヶ月間ほどデザインの顧問として水面下での活動がはじまります。
2. デザイン改善のロードマップに着手
YAMAP本社が福岡なので、はじめての出張ミーティングでYAMAPのUX改善点とロードマップの提案を行いました。
この時、考えの整理の為に飛行機で殴り書きしたYAMAPの成長サイクルモデルがこの図👇です。後述しますがこの図が基本になっているモデルを基に、施策の組み立てを行っています。
3. アプリを中心にUIの改善に着手
YAMAPは既に5年の歴史があり、サービスの機能として必要な部品は概ね揃っていた事、登山をするユーザーの方々にとってツールとしての役割が大きい事から、フリクションを軽減するための細かなユーザービリティの改善を重要課題として取り組んでいく事にしました。
新デザインのコンセプトは最初の3ヶ月程で決まりました。YAMAPは登山の安全に関わる性質のアプリである為、大規模なリニューアルは避けます。
安全性を担保するためにYAMAPのアプリエンジニアチームと細かな調整をしながら、実装は少しずつ進んでいきます。これと並行して将来に向けた大きな改修プロジェクトも同時に進んでいきます。
4. ビジュアルのガイドライン化
デザインシステム化の一環で、イラスト等のアートワークをYAMAP内のデザイナーが素早く作れるように、YAMAPデザインチームと一緒にビジュアルのガイドラインと作成手法をマニュアル化しました。
また山を登ると獲得できるデジタルのバッジがありますが、こちらも数が増えていってもデザインのトーンが煩雑にならないようにガイドライン化を行ってます。
5. 冬山に登りまくる
これらの活動と並行して、自分自身3年ほど登山を嗜んではいたのですが、登山好きの事をもっと深く理解するために週末になると足繁く山に通いました。
なるべく独りで登って他のソロハイカーに話し掛けては色々と話を聞かせてもらっていました。丁度冬山シーズンだった為に毎週雪山に行っており、周りに心配されました。
6. YAMAP CXO就任
半年ほどの外部顧問としての伴走期間を経て、YAMAPのCXOというポジションに就きました。ここから対外的にCXOとしてYAMAPの事を発信していく活動が始まります。
Twitterなどのソーシャルネットワークや、noteなどのメディアを使ってのYAMAPの日々の取り組みを発信したり、イベントにもYAMAPのCXOとしての立場で登壇させていただく機会が増えました。
7. 成長サイクルモデルのアップデート
初期に描いた成長サイクルモデルを元に、ユーザーにとってのYAMAPのコアバリューである「ユーザーが山を楽しむこと」を最重要指標に施策の図式を春山さんと一緒に組み立てました。
現在ではこの図よりも多くのビジネスの要素が加わっていますが、基本的にはこの図によって、YAMAPのネットワーク効果が最大化するための意思決定とサービスの健康状態の確認を行っています。
8. YAMAP noteの開設
YAMAPユーザーだけでなく、Tech業界やアウトドア業界、デザイナー、エンジニア、ビジネスなど幅広い領域に情報発信する事を目的として、YAMAP noteを立ち上げました。
YAMAP広報チームと連携して、どういうタイミングでどういう情報を届けるべきか常に相談し合っています。
9. テクノロジーで登山をアップデートする
YAMAPのサービスの改善と並行して、YAMAPに蓄積されている登山ユーザーの膨大なデータを活用して、登山の体験自体をアップデートするR&D的な取り組みも走ります。
プロトタイプを開発しつつ、時折ソーシャル上でシェアしてフィードバックを集めたりという事を繰り返しました。R&DはTHE GUILDのメンバーの奥田さんにも参加してもらって進めました。
またYAMAP内にデータサイエンティストも加わり、データ分析チームが立ち上がりました。YAMAPに眠る膨大なデータをどうすれば価値に転換できるか、日頃からお互いにアイディアを出し合い最終的にどういうデザインでユーザーの体験に繋がるかを一貫して考えています。
10. みまもり機能をリリース
テクノロジーで登山をアップデートする試みの一環で「みまもり機能」をローンチします。YAMAPユーザー同士が位置情報を交換し合う事で、電波の届かない山中であっても位置情報を家族に共有する確率を上げる仕組みで、大きな反響をいただきました。
この機能はYAMAPのエンジニアの長年の構想からスタートした機能で、ローンチ以降YAMAPユーザーの多くの方にご利用いただいてます。
11. 順調にグロースしたが台風、そして台風
これらの取り組みの結果、順調にサービスはグロースし8月で前年比200%成長を達成しました。また量だけでなく、継続率やアプリを使ったユーザーが実際に山で活動をする確率など質の面でも大きな上昇があり、サービスの改善の手応えを感じました。
しかしその後の9月と10月は度重なる台風に阻まれ、天候による影響の大きさを痛感しました。11月は天候に比較的恵まれ数値も回復しましたが、紅葉の季節を終え冬シーズンに入るため、これから大きく成長するための来年の春シーズンに向けて仕込みの時期に入ります。
12. 北アルプスへの取材の旅
日本の登山シーンにおいて重要な役割を担う「山小屋」。現在の日本の国立公園の在り方と山小屋が抱える問題についての話を伺う為に、北アルプス・雲ノ平に春山さんと取材を兼ねた長期縦走をしました。
自分がこれまであまり意識してこなかった山小屋の状況について触れ、これからの登山シーンにおいてYAMAPに何が出来るのか、改めて多くの課題を認識した旅でした。
おわりに: 2020年に向けて
先週、九州の大分・湯布院で2日間の経営合宿を行いました。2020年に向けてYAMAPの成長サイクルモデルを元に、2日間みっちりと優先課題の設定とマイルストーンの組み立てを行いました。
UIデザインのリニューアルは1年間を掛けて7〜8割がた終わりつつあります。データを活用した登山をアップデートする取り組みも、長い仕込みの時期を終え来年また新たに幾つも公開していきます。
YAMAPの組織としてもスキルの高い人材が各部門に続々と加わり、とても心強く組織としての大きな成長を感じた1年でした。
はじめてCXOという役割で事業に参画しましたが、ユーザー体験を司る立場上、サービスを取り巻くコミュニティとのコミュニケーションが非常に重要と考え、情報発信や対話を意識的に行っていました。まだまだYAMAPとして弱い部分でもあるので、来年はより積極的にソーシャルとの接点を広げたいと思っています。
2019年はサービスとしての細かな改善と将来に向けた仕込みをした1年でした。2020年はギアを変えて大きく飛躍する年にしたいと思っていますので、来年もどうぞよろしくお願い致します。
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