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「思考プロセス」と子供の教育について⑤TOCfEの三つのツール(ブランチ・クラウド・ATT)

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。ゴール・システム・コンサルティング代表取締役村上悟による、TOCの基本スキル「思考プロセス」と子供の教育に関するコラムの5回目をお届けします。TOC(制約理論)や、教育のためのTOCに興味がある方、ぜひご覧ください!

前回は、子供が考えることとは「実行機能」を高めること、そして実行機能を高めるためには「予測能力」を鍛えることが重要だというお話をしました。今回は、引き続き実行機能の発達段階と、TOCfEの三つのツールの構成と順番を考えて行きたいと思います。

まず確認ですが、子供はどのように発達するのか、発達科学では概ね以下のように説明しています。

1)自己を認識する事と、物事の原因と結果の理解は、概ね3歳くらいまでで出来るようになる。
2)他者を認識し時間を認識するのは、概ね4歳程度。相対的な時間概念がほぼ理解できるのは、8歳~9歳(故に学校の時間計算は3年生で教えられる)。
3)数ヶ月後の未来や思想信条など、抽象的で曖昧な物事の理解は、9歳を過ぎないと理解できない。

このように、徐々に時間と空間についての理解を広げながら子供は成長してゆくのですが、その成長過程において「4歳と9歳に大きな壁がある」と言われます。

この「壁」という表現は、萩原浅五郎さんという聾学校の校長先生が聾学校の子どもたちを観察した結果について、「小学校低学年(9歳頃)までは健聴児と同じように発達するが、高学年になってくると学習が具体的なものから抽象的な内容になるため、学習面や言語面の発達において乗り越えられない壁に突き当たることが多い。」と指摘されたのが最初と言われています。

しかし現在では、特に障害のない子供たちも脳の発達に伴って、同じような壁にぶつかることがわかってきています。これは4歳と9歳頃に「大きな節目」といわれる発達(変化)があるからです。大脳生理学の研究によって、人間の脳の構造や神経細胞の発達は3~4歳までに8割が完成し、10歳になると9割が完了してしまう事が分かってきています。つまり、脳の発育・発達は10歳までにほぼ完了するので、それまでにできるだけ良質の刺激を与える事が重要なのです。

3歳までは大脳の前頭連合野の発達が充分ではなく、他人という存在を自分と置き換えて考えたり、相手の心情を完全には理解できません。また、これまで説明したように、時間の感覚も過去・現在・未来をはっきり認識できていないと言います。要するにこの年齢の子ども(4歳の壁の前)は、「今」を中心として生活しているのです。

発達の始まりは、2歳半を超える頃から徐々に論理性(つながり)と確率(確からしさ)にしたがって、ものごとの因果性を学習してゆきます。よく似たパターンで発生する事象を何度も経験することで、多少の不確実さがあっても、その事象を知識として受け入れて学習し、経験を積み重ねながら物事の因果関係を理解してゆくのです。簡単に言えば「ご飯を食べない」→「大きくなれない」とか、「コップを地面に落とす」→「割れる」という単純な因果関係は理解できるということです。

これをfEツールに置き換えて考えてみると、まさにブランチがこれに相当します。ブランチの基本構造は「もし○○ならば、そのときは△△である」という単純な因果です。そして、その単純因果に加えて「なぜならば」という「理由」が加わったものがブランチです。では、4歳の壁前の子供は、このブランチの構造をどこまでが理解できるのでしょうか?

実はこの頃の子供は、一日に何十回も因果関係を説明・質問するといいます。例えばこのような会話です。

✔ 「そんなにひねるからクマちゃんの手が取れちゃった。」
  (物理的因果関係)
✔ 「あの子は背を伸ばしたいからたくさん食べるんだ。」
  (生物学的因果関係)
✔ 「あのおじちゃんが怖くてあっちに行けなかった。」
  (心理的因果関係)

ですから、3歳過ぎの子供にもブランチは理解可能だということになると思います。

TOCfEのサイトにも、「5歳と3歳半の子供に『はなさかじいさん』の童話を読み聞かせ、それをもとにブランチを作ってみました。」という非常に分かりやすい事例がアップされていますので参考にしてください。登場する3歳半のお子さんは、まさに4歳の壁を乗り越えようとする直前の姿ではないでしょうか。

次回は4歳の壁を乗り越えた後、9歳までの子供たちの発達について考えてみたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。本コラムも、残すところ3回となりました。2022年も引き続きよろしくお願いいたします。

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