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(保存版)総まとめ:コミュニケーションの誤解が減る!言葉のやりとりが上手になる7つのポイント「CLR」

こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。

私たちが人と関わり暮らしていくうえで、言葉でコミュニケーションすることは避けて通れません。

そんな毎日のやりとりの中で、「自分が言ったことが誤解されている」と感じたことはありませんか。あるいは「仕事で誰かに作業を依頼したら、意図とぜんぜん違う内容に仕上がってガッカリする」というような、やりとりのすれ違いを経験をされていませんか。

そんな時に便利なのが、言葉のやりとりを上手にするための、7つのチェックポイント「CLR」です。私自身、このチェックポイントを知ってから、仕事や日常でのコミュニケーションがとてもスムーズになりました。

この「CLR」の便利さを日本一わかりやすく伝えたいと思い、これまで連載してきました。ですが、詳しく書きすぎたあまり「そんなにたくさん読めないよ!」という方もいらっしゃると思いますので、今回は最終回として、この記事だけでもポイントが理解できるように総まとめしていきます。


言葉でやりとりするためのチェックポイント「CLR」とは

CLRとは「言っていることが妥当で、筋が通っているかどうか」を検証するための7種類のチェックポイントのことです。CLRは、「自分が言おうとしていることが、相手に伝わる表現になっているか」をセルフチェックしたり、「相手が言っていることを、きちんと理解できているか」を確認するために便利です。

私は以前、就労支援の仕事をしていましたが「仕事で怒られやすい人」の多くが、CLRのチェックポイントに引っかかるような言葉のやりとりを頻繁にしていました。せっかく仕事を頑張ろうとしているのに、言葉の使い方のコツを知らないために、怒られてしまったら悲しいですよね。でも、逆に考えれば、言葉の使い方のコツ(つまり、CLR)を知っていれば、怒られる頻度を減らすことができます。

仕事を進める上で、言葉のやりとりは避けて通れないので、CLRは日々の仕事をスムーズにするうえで必須の基本スキルといっても過言ではないと思います。

※CLRは「Categories of Legitimate Reservations」という英語の略称で、「論理の正当性の検証」などと訳されています。もともとは、TOC思考プロセスという、論理的な問題解決プロセスの知識体系の一部です。詳しくは連載第1回をご覧ください。

▼「CLRとは何か」について詳しくはこちら

▼今回の内容はYouTubeでもお話しています。文章を読むより動画で見たいという方は、こちらをご覧ください。

ひとつだけでも役に立つ、7つのCLR

それではさっそく、7つのCLRについて具体的に見ていきましょう。今回はまとめ編ということで、それぞれのCLRのポイントだけをお伝えしていきます。気になるCLRについては、ひとつひとつ詳しい記事を書いていますので、リンク先をチェックしてみてください。

①明瞭性のCLR(どういう意味かをちゃんと理解する)

ひとつめのCLRは、書かれていることや、言われていることについて「ちゃんと理解できているかを確認する」というものです。

たとえば、仕事の場面では「もっとイケてるスライドにして欲しいんだよね」とか、「ちゃんと、顧客満足のことも考えてね」といった会話は頻繁にあります。このような時に「イケてる」とか、「顧客満足」という言葉で意図していることが、それぞれの人の中で違っている、といったことは毎日のように起きています。

あるいは、「今日中」という言葉が示す時間が、具体的に何時までなのかで認識違いが起きることもよくあります。賛成とか反対とかを決める前に、まずは、お互いに相手の意図をきちんと理解しよう、というのがひとつめのCLRです。

▼「明瞭性のCLR」について詳しくはこちら

②存在のCLR(解決を急ぐ前に、本当にそうかを確認する)

ふたつめのCLRは、言われていることが「事実かどうかを確認する」というものです。たとえば、パソコンが苦手な人から「パソコンが壊れちゃった」と相談されたとします。でも、落ち着いて状況確認をすると、単にコンセントが抜けていただけだった…というようなことはよくあります。

また、誰かの相談を聴く場面でも、「ウチの若手はヤル気がなくてね…」と言われてすぐに「じゃあモチベーションアップの研修をしましょう」と、反応するのではなく、相手のお話を具体的によく聴いていくと、解決すべき問題は全然別のところにあった…なんてこともよくあります。

このように、相手が話していることについて「あれ?本当にそうなのかな?」と思ったら、解決策を考える前に、相手が本当に直面している事実はどういうことなのかをしっかり掘り下げて理解する、というのがふたつめのCLRです。

▼「存在のCLR」について詳しくはこちら

③因果関係のCLR(原因と結果がつながっているかを確認する)

3つめのCLRは、因果関係(もし~ならば、結果として~)がつながっているかを確認する、というものです。私たちは日常のなかで「原因と結果の因果関係で何かを説明する」ということを頻繁にやっています。

たとえば「LINEが3日も既読スルーされているから、もう私のことを好きじゃないのかと思った」とか、「Y工場との打合せに必要なので、明日までに見積資料を作っておいて」などが、因果関係で語られている会話の例です。

このように因果関係で語られることについて、原因と結果のつながりに納得できていない時には、わからない部分を相手に聴いて、意図を確認したり、自分の意見を伝えたりする必要があります。なお、ここで気になった因果関係を、具体的にどう改善するかについては、このあと出てくる④~⑦のCLRが役に立ちます。

「因果関係のCLR」で表現を整えた例 
※右図は中間のロジックを補ったことで、左図よりも理解しやすくなっている。
(H・ウィリアム・デトマー著『ゴールドラット博士の論理思考プロセス』
80ページ図4.5を参照し、筆者作成)

▼「因果関係のCLR」について詳しくはこちら

④原因不十分のCLR(望む結果を起こすための準備が足りているかを確認する)

4つめのCLRは、原因と結果の因果関係について「原因が足りなくないかを確認する」というものです。

たとえば、「可燃物があって、酸素があって、熱源がある、ならばその時は、火が付く」という表現は、複数の原因がそろって初めて火が付く、ということを示しています。ここで、可燃物・酸素・熱源のひとつでも足りなかったら、火は付きません。このように、原因が足りないという状態になっていないかを確認するのが「原因不十分のCLR」です。

このCLRは、次の2つのパターンで役に立ちます。
まず、「複数の原因がそろって初めて、結果が起きる」という状況で、結果を引き起こしたいのであれば、その原因全てを揃えることが必要です。
一方、結果を防ぎたいのであれば、原因をひとつでも無効にできれば良い、ということになります。

複数ある原因のひとつでも防げば、結果を防げる例(H・ウィリアム・デトマー著
『ゴールドラット博士の論理思考プロセス』 83ページ図4.7を参照し、筆者作成)
※右図の楕円形のマークは、2つの原因がそろって初めて、上側の結果が起きることを示す

▼「原因不十分のCLR」について詳しくはこちら

⑤追加的な原因のCLR(代替案がないかを確認する)

5つめのCLRは、原因と結果の因果関係について「その結果をもたらす原因が、他にないかを確認する」というものです。

たとえば、ある学生が「1学期に20回欠席した」という理由で単位を落としたとします。この学生が、翌年の単位を確実に取りたいならば、「欠席以外にも、単位を落とすことになる他の原因がないか」を確認しておく必要があります。

このCLRも、次の2つのパターンで役に立ちます。
「結果をもたらす原因がいくつかある」という状況で、結果を引き起こしたいのであれば、いくつかある原因の、どれかひとつを満たせばOKです。つまり、代替案があるということです。一方で、結果を防ぎたいのであれば、原因をすべてブロックしなければいけない、ということになります。

ポジティブな結果を引き起こすために、複数の選択肢(代案)がある状況の例(筆者作成)

なお、「追加的な原因のCLR」は「原因不十分のCLR」とセットで押さえておくのがポイントです。下図の例のように、両者のどちらの論理関係かを区別できることが、ビジネス上とても大切だからです。下図の左側が「原因不十分のCLR」でチェックする内容、右側が「追加的な原因のCLR」でチェックする内容です。

左図の状況では「部長の承認」と「クライアントの合意」の両方が無ければ、新企画をスタートできません。一方、右図の状況なら、部長承認と、クライアントの合意のどちらか一方でスタートが可能なので、動き方が変わってきます。

左)複数の原因が揃って初めて結果が実現する状況の例     
右)どちらか片方の原因だけで結果が実現する状況の例 (筆者作成)
※左図の楕円形のマークは、2つの原因がそろって初めて、上側の結果が起きることを示す

▼「追加的な原因のCLR」について詳しくはこちら

⑥因果逆転のCLR(原因と結果が逆ではないか確認する)

6つめのCLRは、原因と結果の因果関係について「原因と結果が逆ではないかを確認する」というものです。

下図の例の左側を音読すると「もし煙が家から出ているならば、結果として、家が火事である」となります。なんとなく正しいようにも聞こえます。
しかし、落ち着いて因果関係を考えると、右側の「もし家が火事であるならば、結果として、煙が家からでている」の方が、因果関係として正しいです。

原因と結果の逆転を修正した例 (当社ジョナコーステキストより引用)

原因と結果を取り違えて、結果の方に手を打っても、効果がありませんので、「原因と結果の逆転」に気が付くことは大切です。

原因と結果を取り違えて、対策を打った例 (筆者作成)

▼「因果逆転のCLR」について詳しくはこちら

⑦予測される結果のCLR(目に見えない因果関係の仮説を確認する)

7つめのCLRは、原因と結果の因果関係について「目に見えない因果関係を検証する」というものです。下図の例を使って説明します。

日本では地震が頻繁に起こるので、私たちは、地面が揺れていると「地震かな?」と思います。けれども、地震そのものを、目で見て確かめることはできません。このような時に、私たちは「コップの水が揺れている」とか「地震速報が出る」といった、「本当に地震だったら起きるはずの、別の結果を確認する」ことで、「やっぱり地震だったんだな」と確認することができます。

私たちが日常でやっている「予測される結果のCLR」の例(筆者作成)

「予測される結果のCLR」はビジネスでも日常でも、とても役に立ちます。なぜかというと下図の例のように、「因果関係っぽい主張」を鵜呑みにせず、落ち着いて判断することができるようになるからです。

予測される結果のCLRの実務適用の例(筆者作成)

※上の例では、「もしも景気が悪いせいで自社の売上が落ちているならば、(同じように)競合他社の売り上げも落ちているはずだ」という仮説を検証したことで、自社の売上低下を景気のせいにする主張をくつがえしています。

▼「予測される結果のCLR」について詳しくはこちら

CLRの3つのレベル

これまで7つのCLRのポイントを見てきましたが、この7つのCLRには下図の通り「レベル」があります。ざっくり言うと、レベル1と、レベル2は、言葉で表された内容がしっくり来るかをチェックするためのCLRで、レベル3は、そこで示された内容を検証し、より適切にするためのCLRです。

CLRはこの「レベル」の順番に使っていくとスムーズです。「7つも使いこなせないよ」という方は、まずはレベル1の「明瞭性のCLR」だけでも押さえておくと、とても役に立ちます。

CLRの3つのレベル(『THE TOCICO DICTIONARY Second Edition』を参照し筆者作成)

ロジックツリー検証のためのCLRの質問集

この項では「TOC思考プロセス」や、「TOCfE(教育のためのTOC)」で作るロジックツリーを検証する時の、CLRの使い方についてご紹介しておきます。

CLRの考えの元になっている「TOC思考プロセス」や、そこから派生した「TOCfE」では、作成したロジックツリーの論理チェックをするためにCLRを活用しています。これらの手法では、作成したロジックツリーを音読し、違和感を覚えた箇所をCLRの観点でチェックすることで、よりしっくり来る表現のロジックツリーを完成させていきます。

以下、ロジックツリーのチェックにCLRを使うための質問例をご紹介します。※CLRはもともと英語で作られているので、日本語での質問にはバリエーションがあります。あくまで、以下は参考例としてご紹介します。

1.明瞭性のCLR
「どういう意味ですか?」
2.存在のCLR
「本当にそうですか?」「いつも必ずそうですか?」
「具体的にはどういうことですか?」
3.因果関係のCLR
「つながっていますか?」「(因果関係が)遠くありませんか?」
4.原因不十分のCLR
「(原因が)何か足りなくないですか?」
「この原因だけで、その結果は起きますか?」
5.追加的な原因のCLR
「その結果を引き起こす、他の原因もありますか?」
「この原因がなくなっても結果は起きますか?」
6.因果逆転のCLR
「原因と結果が逆ではありませんか?」
7.予測される結果のCLR
「どのような結果があれば、その仮説は正しい(or 誤っている)と考えられますか?」

CLRによるロジックツリーの検証はとても有用ですが、使い方によっては、人間関係を悪化させたり、議論を誘導するプレッシャーとなるリスクもあります。
そこで、CLRの質問を使う時の注意点を4点補足します。

  1. CLRの質問をする時には、失礼にならないように注意
    CLRの質問は役に立ちますが、熱心になり過ぎると、ツリーを作成した人にとっては失礼にも聞こえてしまいます。相手への敬意を忘れないようにしましょう。

  2. CLRの指摘を受けた時に、その指摘を受け入れるかどうかは、ツリーを作成した人の自由
    私たちは、ロジックツリーをより納得度の高いものにするためにCLRの質問を活用します。しかし、その指摘を受け入れるのか受け入れないかは、ツリーを作成した人の自由です。

  3. 実務上、CLRの納得度合は「関係者が理解できる」程度で良い
    因果関係のつなげ方を細かくしていくと、どこまでも細かくすることができてしまいます。そのため、実務でツリーを作る場合には「関係者が理解できる程度」で納めることが妥当です。(例えば「業界知識がゼロの人でもわかる因果関係」を目指したりすると、ツリーが限りなく細かくなって逆にわかりにくくなってしまうため)

  4. CLRは「音読」だけですべてを検証できるわけではない
    ロジックツリーを検証する際には、音読して違和感をチェックすることが不可欠ですが、音読だけで全てをチェックできるわけではありません。特にレベル3のCLRについては、事実を確認することが大切です。

いつも心のポケットに、CLRを

さて、今回はCLRの総まとめということで、だいぶ長くなりました。
私がCLRの面白さに最初に出会ったは、2011年、2012年の「教育のためのTOC国際認定プログラム」に参加した時でした。

その後、就労支援の仕事に関わる機会を得て、これから仕事を見付けて頑張って行こうとしている方々と接するなかで「もしもCLRの観点を持っていたら、今よりずっと、仕事をスムーズにできるようになる人がたくさんいるはずだ」と心から思うようになりました。

CLRは7つありますが、まずはひとつめの「明瞭性のCLR」を押さえておくだけでも、日々の言葉の認識違いはずっと減ってくるはずです。さらに、レベル3のCLR…「原因不十分」と「追加的な原因」の使い分けや、「予測される結果」などのCLRの観点まで身に着けると、ロジックと事実の両面から、よりスムーズに仕事が進められるようになっていきます。

私自身、未だ、すべてのCLRを使いこなせているわけではありません。けれども、CLRを知ったことで、私は確実に働きやすくなったと実感しています。少々オーバーかもしれませんが、生きやすくなったとさえ思っています。

毎日、人と関わって、仕事をしたり暮らしたりするなかで、私たちは他の人と数えきれないほど言葉を交わし、意思疎通をしながら生きています。そしてそのなかで、毎日、山ほど「認識違い」や「解釈のズレ」に気付かないまま誤解をして、相手に対してネガティブな感情を持ったり、仕事のやり直しをしたりしています。

CLRについてたくさんの説明を重ねてきましたが、ひとことで言えば、CLRの根本は「相手の意図をきちんと理解しようとする」ことに尽きると私は思っています。CLRを学ぶことで、ともすれば「わかったフリ」をして相手の話を聞き流したりすることが減り、相手のことを理解したうえで、理解してもらう、良いコミュニケーションを育むことが可能になります。

この連載が、お読みくださった方にとって、少しでも役に立つものであれば何より嬉しく思います。これまでご覧いただき、大変ありがとうございました。

ここまで10回に渡るCLR連載をご覧いただきありがとうございました。このあとは、ゴール・システム・コンサルティング代表取締役の村上悟のコラムを予定しております。引き続きGSCのnoteをよろしくお願いいたします。

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