『喫茶バン』-南区東又兵ヱ町-
手描きで味のある大きな看板が一際目を引く『喫茶バン』。
小さな店構えだが、見どころ満載の外観。
常連さん以外はなかなか来なそうな地域密着の小さなお店は、入店する時にご迷惑かなという不安と少しの勇気が入り混じる。
来店したこの日は雪もちらつく1月のとても寒い日だったのだが、扉を開けると、店内はポカポカと温められておりかけていた眼鏡が一気に曇った。
一番手前の席に座ると、すぐ近くにストーブが置かれている。
外の寒さが吹き飛ぶ。
店は奥に細長く、ボックス席が4席と小さな造り。
外観のレトロさに比べるとホワイトを基調にしたシンプルですっきりと清潔感のある店内だ。
奥では常連さんのおばあさま2人がおしゃべりを弾ませ、隣の席では男性が新聞を読みながらゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
コーヒーとモーニングを注文。
「パン焼いていい?」
と聞いてくださったのでお願いした。
コーヒーを待っている間に女性がおひとり入店し、奥のおばあさま達と合流。さらにもうおひとり男性がやって来て、その方は隣の席の男性と相席で座った。
時刻は平日朝の9:30。満席だ。
次々とやってくるお客さんの対応を、店主の女性がすべて一人で切り盛りしているようだ。お忙しい時間帯に来てしまい少し申し訳なくなり、ソワソワと店内を観察。
ソワソワしながらもこの時間も実は好きな時間でもある。
おばあさまたちの会話も、隣で相席している男性たちも、今日この時にたまたま私が同じ空間にいさせてもらっているから遭遇できる特別なひとときなのだから。
こちらのモーニングはゆで卵とイチゴジャムとマーガリンが半分ずつ塗られた食パンで、予想外の内容に心の中で歓喜した!見た目もかわいい2色パンは、朝から贅沢な気持ちになり嬉しい朝食だ。
しばらくするとお客の流れが落ち着いたようで、店主も奥のおばあさまたちの席に混ざり談笑している。
店内にはどこまでも穏やかで心地の良い時間が流れていた。
この時間をお邪魔しないよう、少し早めにお会計。
「今日もみなさまの日常の中に私を混ぜていただきありがとうございます。」そんな気持ちで店を出ると、外は肌を突き刺すような寒さだった。