『喫茶バロン』-熱田区六番町-
地下鉄名城線「六番町」駅より徒歩約7分。
青い屋根の居酒屋の隣に並ぶ赤い屋根の『喫茶バロン』は、入店前から見どころ満載で胸が高鳴る。
予想外に軽い扉をヒョイッと開くとお客さんは私と先客の方がもう一名。
店主の女性おひとりで切り盛りしているようだ。
モーニングの内容をしっかりと確認せずに、さっそくコーヒーを注文。
「パンと卵がつくけどいい?」と声をかけてくださったのでそちらでお願いした。
他のメニューもじっくりと選べばよかったなとも思ったが、実のところ私は店内があまりにも濃い空間で興奮していたので仕方がなかった、ということにしよう。
コーヒーを待つ間、店内の写真を撮らせていただいた。
「撮るような場所なんてあるかねえ。まあお好きにどうぞ。」
と店主は謙遜していたが、店内は見どころ満載!
昭和好きにとっては宝箱のような空間だ。
うっとりと店内を撮影しているとモーニングが到着。
コーヒーはしっかりと苦みがあって深い味わいで美味しい。
私が食べ始めると同時に、先客の方がお帰りになったので貸し切り状態となり、店主とゆっくりとお話ができた。
店主のお話では、最近では昭和喫茶巡りをする若者も増えて、遠い方だと東京からホテルで宿泊して来る方もいるそうだ。
素敵なお店ですものね、とこちらが返すと、
「どんなところがよいと思うの?」と逆に質問されたので、壁も椅子も空間も…と私の思う魅力を並べるとニコニコと頷いてくださった。
店主は2代目だそうで、長年ずっと見てきたこの店の客観的な魅力に純粋に興味があるようだった。
また、店内のレザーの椅子は名前は忘れてしまったそうだが有名な職人さんの作品とも仰っていた。ソファにはこだわりがあり、別珍の時もあったそうだがお手入れのしやすさなどからもレザーに落ち着いたのだそう。
店先の赤いテントも2年前に張り替えたり、手間と愛情をかけて店主がこの光景を守り続けていることを知った。
壁にはたくさんの絵画が飾られており、こちらはすべて店主の作品なのだとか。これらはすべて油絵で、どれも丁寧に描かれていて素敵だった。
コロナなどで落ち着かない時期に描く頻度も減ってしまったようだが、また店主が落ち着いて絵を描くことのできる日常が訪れたらいいなと思う。
謙虚で柔らかな店主とは初対面とは思えないほどすっかり長話をしてしまった。それほどに居心地の良い空間だった。
店主の絵画コーナーはたくさんの作品を季節などに合わせて入れ替えて展示しているそうなので、また新たな作品を見ながらコーヒーをいただきに行きたいと思う。