読書感想文:パリのすてきなおじさん
やられたな、と思った。
タイトルとおしゃれな感じの表紙から、雑誌やアド街的なおじさんコレクション本だと思って読み始めたら意外に重い本だった。
最初の2-3人は確かにただの素敵なおじさんで、ファッションのこだわりとか仕事に対するプライドとかがかわいいイラストと手書き文字で綴られる。
しかし。
ページをめくるにつれて、おじさんを通じて語られる内容が徐々に重たくなるのだ。移民、難民、人種差別、性的マイノリティ、ホロコースト、テロ等々。イラストも手書き文字も相変わらずかわいいままなんだけど、平易な言葉で分かりやすい文体なんだけど、描かれている内容が重い。途中からおじさんは体験者や語り部であり、その言葉は生々しくて心に響く。すてきかどうかなんてどこかへ行ってしまい、ただただ胸が苦しく、泣きそうになったりしながら、どうにか最後まで読み切った。
読み終わって切実に思う。
いやいや。
この感じ、タイトルに少しは匂わせてくださいよー。
知らなければならないこと、ではあると思う。でも読む前に相応の覚悟をしたかった。私はこういう内容をぶっつけで読めるようなメンタルを持っていない。
おじさんハントをするうちに自然な流れでこうなったのか、それとも、そもそもこういう企画だったのか。
どっちにしてもやられてしまったという気持ち。
それでも途中で離脱せずに最後まで読み切れたし、良い本ではあるのだけれど、ちょっとわだかまってしまった。